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「移動都市/モータル・エンジン」 ★★★ 3.2

◆冒頭10分がクライマックス!ハウルと天空の動く城モノ実写版、スチームパンクのビジュアル好きは必見!

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 移動する都市同士が喰いあって繁栄していく荒廃した未来で、巨大移動都市ロンドンに一人の少女が母親の敵討ちに挑む物語。予告編で感じたようにスチームパンク好きにはたまらない、マッドマックスなハウルの動く城でのスターウォーズ的な展開で世界観はすごく好み。

あのロード・オブ・ザ・リングピーター・ジャクソンが手掛ける(監督は別人)壮大なファンタジーと話題になっていたはずなのに、海外で大コケしたので日本での上映館も少なく話題性も薄い。確かにすごくもったいない映画、大きな世界観で映像、衣装、撮影、セット全てが一級品で細部に至るまで丁寧に作られているのだが、詰め込みすぎ&説明下手なストーリーのせいで壮大にズッコケている!

全体的に既視感ありありで、過去の名作のオマージュとまではいかないレベルが残念。デザインはジブリっぽくて、移動都市はもろ「ハウルの動く城」だし、空中都市は「天空の城ラピュタ」、飛行機は「紅の豚」、谷の風景は「風の谷のナウシカ」。女盗賊団長や地下に隠れてて助けてくれるじいさん、ヒューゴ・ウィービングすらムスカっぽいと思ってしまった。。

とにかく冒頭10分の巨大都市ロンドンが小さい都市を飲み込んでいくシーンがクライマックス、やりたい・見たい画がほぼ詰め込まれている。ロンドン内部の作り込んだ街の風景、トラファルガー広場のライオン、セント・ポール大聖堂を中央にして、ビッグ・ベン大英博物館までをくっ付けてひとかたまりになって進むのは圧巻。シューシューと吹き出す蒸気と煙、ガシャンガシャンと音を立てて動く建物、そこからのタイトルカットは震えるほどのカッコよさ。

ただ、この緊迫感のある一番の見せ場である都市の捕食シーンはその一度きりで、結局最後まで出てこなかったのが残念。あとは巨大移動都市ロンドンの中で巻き起こる復讐劇、反移動都市同盟とロンドンとの戦いがメインで、正直最初に頑張り過ぎて息切れた感じ。

まあピーター・ジャクソンらしく絶対2時間できれいにまとめる気がなさそうな脚本。原作は4部作ぐらいなので、本人が監督して少なくとも前後編2部作にして人間ドラマとして各キャラクターをしっかり描けばより良い作品になったと思われる。何とか2時間で収めるために駆け足で話を畳んでいった感がすごい。。(大コケしたので続編は無理だろうな・・)

キャストも知名度が低い上に魅力が薄いので、感情移入しにくい。主人公ヘスターを追うロボット(人造人間?)シュライクは渋くていいキャラなので、もう少し丁寧に描くと面白くなったのでは。へスターとの関係やりとりはなかなか熱いものがあったので、最後の場面はもっと盛り上げることはできたと思う。

役者は、ヘスター役のヘラ・ヒルマー(初めて見た)は、凛々しい顔立ちに力強い瞳、だけどどこか幼さや危うさを感じる表情は魅力的だった。最初ひたすら「怒りと憎しみ」だけの瞳が、頼りないが優しい男と関わって「愛と生」を見つめる瞳に変化・成長していくのが良かった。あとインパクトがあったのは反移動都市同盟の中心人物・アナ・ファン役の韓国人女優・シンガーのジヘ、サングラスに赤いコートに細身パンツ、ロカビリーヘアー(みやぞんにも見えて笑)でキザな感じがキマっていた。

それでも、こういう映画はストーリーやキャラより映像ビジュアルとファンタジー感の方が大事なので、予告編見て画が好みだと思うなら十分に楽しめる。B級作品として構えておくのがベストかも。