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「劇場版 コードブルー」 ★ 1.2

◆【酷評注意】「激情伴 顔面ブルー」どれくらいの値打ちがあるのだろう、僕が今見ているこの映画に♪ テレビドラマ特番が2018年興行収入邦画NO.1という現実に泣けます。。

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TVコードブルーは初回を少し見た程度で、ちゃんと見ていません、よって10年間の思い入れもない中で、2018興行収入邦画NO.1はさすがに見ておかねばということで今更ながら鑑賞(自分に合うはずがないのでレンタル待ちでした)。分かってはいたが、これは映画ではない、ファンのための2時間テレビドラマ特番。

 

完全に一見さんお断り、作品世界や登場人物の知識がある事が大前提になってる作り。ドラマから始まり映画化まで10年、主人公5人たちと一緒に歩んできたファンを楽しませる事を第一に作られていて、映画として成立することは後回し。(本当は映画である以上、ドラマの鑑賞有無を問わず万人に楽しめるようにすべきとは思うが)

冒頭に「これまでのあらすじ的なもの」が流れるのだが、これがチンプンカンプン。とりあえず「思い出の名シーン」をくっつけました的なやっつけ仕事なせいで、あらすじの機能を全く果たしていない。初めて「コードブルー」に触れる人間には全く理解できない。

 

ドラマの5話分のエピソードを無理やり2時間に纏めた感じで、詰め込みすぎな超急展開なストーリーに唖然! 色々なエピソードが同時進行というよりバラバラに散りばめられてキチンとした起承転結の流れになっていない。それぞれがレギュラーキャラのドラマを盛り立てるためだけに無理やり作ったもので、登場する怪我人も、大事故ですらも、キチンとしたケリをつけないままに放置されるという、最終的にはどうでもいい扱い状態。

とにかくキャラへの思い入れが総て、主人公5人の活躍を平等に描きたかったのだろうが、どのシーンも掘り下げがとても浅く、全く感情移入できず。あまりにインスタント的な安い感動を詰め込みすぎだが、インスタ時代としてはこれぐらいのパッと見での分かりやすさ・移り変わりの速さがウケるのだろうか・・

 

本映画の主題テーマは何だったのか?フライトドクターの重要性、現場の過酷さ、医療の構造的な問題、従事する医師や看護師達の理想と現実、などは全く描かれていない。肝心のヘリは2度3度ほどしか飛んでないし、主役の山Pは意味のない途中退場するし、アラサー3人の主役女子を中心にやたらと婚活や結婚を全面に押し出していて、医療ドラマとは思えず。結局、無理やり話の主軸に押し込んでた結婚話が一気に花開いて、ラストは結婚式で過去を振り返りながらみんな幸せで終わるという・・「ゼクシイ」はスポンサーなのか?(確かにゼクシイは重量的にも気分的にも重い)

 

あまりにもテレビと変わらぬ映像・音響、演出。監督もスタッフもテレビ畑なので映画とテレビドラマの違いを全く分かってないのがモロ出し。

特にライティング、映画は「光と影」と言うように陰影のメリハリがついた画作りなのに、本作はどう見てもライト照らし過ぎてどのシーンも全体が明るくて気持ちが悪い。

あとはBGMも酷い、笑いの時は「楽し気なBGM」、悲しい時は「悲し気なBGM」といかにも大袈裟で安易な感じで「これ流せば盛り上がるだろう」というバカにされたような意図が見え見えで、音響効果としては弱い。

セリフかと思いきや、まさかの心理描写を説明するセルフナレーションが入ったり、これもドラマでやること。

 

予告では未曾有の大災害が重なるという謳い文句で、「成田空港」と「海ほたる」での事故という設定だが、事故のスケール含め映像・時間的にも迫力が無く内容も薄かった。船の中の患者については一切触れず・・飛行機の事故はただ山Pをカッコよく登場させるためだけに入れたようにも思える(登場時の足元からのズームと神々しい光の当たり方に笑ってしまった)。

その山Pがまさかの後半に意味不明の感電というしょぼい見せ方での途中退場。そして意識不明から復活するのに何の医療的ロジックもなし、良いタイミングでの奇跡の復活!(医療として科学的な方法で治すドラマでは?)

 

他にも突っ込みどころはたくさんあり過ぎて・・本物の真面目な医療現場の人はどう思うのだろうか?

・何人もで手術台に乗せているのに、酔っ払ったかたせ梨乃に自ら包丁を抜かれてしまう(絶対にあってはならない失態)

・アル中で入院してるはずのかたせ梨乃が酒を飲んで院内をうろつく

・医者と看護師が患者の寝室で平気でプライベートの話をしてる

・勤務中に病院内でみんな集まって結婚式をあげる

・末期ガンの女性なのに顔がパンパン、戸田恵梨香の方がやせ過ぎてる

海上保安庁や消防士の仕事を舐め過ぎ、あんな棒立ちで指示待たないで自分で判断して動いてる

・車で鉄パイプが腹に刺さった父の救助中、どう見ても下にガソリンが漏れているのに、火花を散らしながら鉄パイプを切る(結局、親子関係含めどうなったのか?終わる)

・災害現場や患者が運ばれてきて処置している最中、無駄な会話しすぎ

・みんないつも服や顔が綺麗なまま、いちいちカットでカッコつけすぎ(これは役者的に仕方ないのか)

そしてエンドロール、このドラマと一心同体のミスチルの「HANABI」、フルコーラスで感動を盛り上げたいのに・・なぜか音量が小さくなり、左画面に結婚式のお祝いビデオ・コメントが流れて、そちらの方が音量が大きくなる始末、単なるBGM扱いに。せめてもの楽しみだったのに、ここは本当に激情伴う顔面ブルーに。

 

まあ、そもそも制作側も「ドラマの延長線上でファンを泣かせることだけ」を考えて作っていて、テレビドラマに対して思い入れもなく、本格的な医療モノや人間ドラマを望んでいる人はターゲットにしていないので、これでいいのだ。

現実には、興行収入邦画NO.1なので、確実にドラマファン以外の普通のリピーターも含めて、感動した、泣きまくった、という人の方が圧倒的に多いのだろう。

自分みたいな映画かぶれだと、どうもひねくれて素直に見られないのが悩ましくもあり。とにかく収入・人気的には今の日本映画を反映しているのは受け止めて、普段あまり映画を見ないようなお客さんが映画館に来ることは素晴らしいことだと思いたい。

 

とっちらかったストーリー展開に小さなうちわネタを盛り込み、短いカットを次々と繋いだり、上着を羽織る後ろ姿をスローモーションで見せたり・・「踊る大捜査線シリーズ」(歴代興行収入実写No.13)から何一つ変わってないフジテレビ映画おそるべし・・20年経っても製作側も観客側も進歩していないという事実、日本映画の未来やいかに・・