映画レビューでやす

年間500本以上観る会社員のありのままのレビュー

「純平、考え直せ」 ★★☆ 2.8

◆Vシネ劇場版に近くSNSの使い方はいまいちだが「鑑賞、考え直せ」とまでは言わない、柳ゆり菜のまさに「体」当たり演技は必見!

f:id:yasutai2:20190326000830j:plain

新宿・歌舞伎町を舞台に、ヤクザの鉄砲玉になることを命じられたチンピラと、偶然出会った女性との3日間をSNSの影響を交えながら描く。「女の子ものがたり」「上京ものがたり」の森岡利行監督が直木賞作家・奥田英朗の小説を映画化、R-15指定。

ヤクザとSNSという一見関連性のなさそうな2つをテーマに、何となく伝えたいことは分かるが、全てが中途半端な印象でVシネ劇場版に近い感じ。義理人情に縛られたタテ社会のヤクザ世界と、個人感情のまま自由で無責任なネット世界を対比させながらの群像劇であるならば、もっと面白く出来たはずなのに残念。(ちなみに原作では、ヒロイン加奈は脇役の一人に過ぎないらしく、純平は基本的に一人で行動して、その中でSNSや他の人々との関わりを群像劇として描いた人情青春モノらしい) 

 

そもそも純平の意思が固いため葛藤が少なく、あと3日しかない切迫感とか一瞬の刹那的なものがあまり感じられず。

そして、出てくるSNSがひと昔前の2ちゃんねる(「電車男」っぽい)のような描き方がダサくて、盛り上がりに欠ける。SNSに書き込む孤独でリアルに居場所がない人たち(主にイジメにあってる女子高生と司法試験浪人の下っ端ホスト)のサイドストーリーも弱くて、純平からの影響が感じられなかった。

歌舞伎町の雑多感あふれる描写やエンドロールで流れるピロウズの主題歌は良かったが、全体的にカメラワークや音楽は古めかしくて、こういうところがVシネに近いと思わせたのかも。

 

純平役の野村周平は、純粋で真っ直ぐでケンカが弱そうなところは合っていたが、少し一本調子で上手いとは思えなかった(お尻はキレイだったが)。純平の母親役の片岡礼子は、一瞬だれか分からなかったが場末スナック感と愛情の微妙さが良かった。

そして何よりも本作は、加奈役の柳ゆり菜の映画と言っても良いほど素晴らしかった。正直知らなくて、最初は夏菜かと思ったが、売れているグラビアアイドルらしい。かわいい顔に豊満な身体付きはエロい!しかもキレイな乳首まで惜しみなく見せて、純平との濡れ場も結構攻めた感じで見応えあり。襲われてハサミを持っての髪を切るシーンの緊迫感や、ラストカット10秒の表情は必見で、この映画にかける体当たりの想いが本当に伝わってきた。

  

※ここからネタばれ注意

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

 

【(ネタばれ)ラスト・考察】

ラストは結局、冒頭シーンにつながって純平が鉄砲をはじく瞬間で止まるため、最終的にどうなったのかは分からない、殺して刑務所行きなのか、失敗して殺されてしまうのか・・「順平、考え直せ」と今までのSNS上での傍観者的な立場から、ラストの余韻の儚さや加奈の表情をどう読み解くか? 

純平は結局、SNSは一回も見ないで終わる、そこはネットの中の声でしかなく、直接の声として響いてはこない。ネットの声もしょせんは加奈からの情報だけで判断していて、本当の二人のことは何も知らないのに、勝手に自分なりの正義を押し付けているだけとも取れる。。

最終的にSNSを見たとしても決意は変わらなかったと思うが、ほんの少し世界は広げられたような気はする。加奈から地元の先輩、小さいころに家出したきりだった母親との出会いへと徐々に世界は広がっていったのに、最後までヤクザの「義兄弟」「義理」という現実の狭い世界に囚われ過ぎてしまった。。

ただ、女子高生はこの先の明るい未来を想像できるかもしれない。彼女が最後にSNSに投稿した言葉「みんな、誰かと繋がりたい」、それがネットでもリアルでも、ここではないどこか新しい世界へ一歩前に踏み出すためには必要なことだから。

純平、考え直せ」これは自分に向けた言葉でもあり、今のままでいいのか、他に道はないのか、そう言ってくれる周りの環境も大事にしていかねば!