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「オーヴァーロード」 ★★★☆ 3.5

◆戦争・サスペンス・ホラー・アクション入り乱れ、JJエイブラムス印の最上級のB級エンターテイメント映画

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戦争・ナチス・人体実験・ゾンビとB級要素満載だが、展開もスピーディで何も考えずに楽しく見られる予想以上に良質な作品、最上級のB級映画。監督は「ガンズ&ゴールド」に続き本作が2作目となるジュリアス・エイヴァリーだが、キャラクターやその言動、観客を驚かすやり方は完全に製作のJJ・エイブライムス要素が強い(R15なのでグロ描写は多いので注意)。

タイトルのオーヴァーロードは、第二次世界大戦においてドイツ軍占領中の西ヨーロッパに侵攻した連合軍の上陸作戦「オーヴァーロード作戦」のコードネームのこと。

冒頭の輸送ヘリ降下シーンの本格的な戦争ものからホラー、アクションと話がどんどん狂った展開にシフトしていく巧みな構成。

王道の既視感ありのシーンも多いが、終始気合の入った迫力の映像が凄く、ジャンルミックス具合、テンポ、カメラワーク、構成の良さで全く飽きさせずハラハラドキドキが続く。俳優陣もあまり有名でないため、逆に誰が死ぬか分からない緊迫感につながり良い効果になっている。

 

とにかくいきなり序盤の戦争パートに度肝を抜かれる、荒々しいカメラワークと機体を攻撃される時の腹に響く音響、さっきまで普通に話していた仲間が次々と死んでいく様子、パニックになりながら脱出する主人公、夜空に飛び交う銃撃戦の美しい火花の中パラシュート回転で落ちていくまで、全く途切れない圧巻の描写。

陸地での少数部隊によるミッション遂行・敵に見つらないよう潜入する緊張感から、情け容赦のないナチスの人体実験ホラー、エグいゾンビ(というよりモンスター生物兵器)との戦闘アクションまで総合的にクオリティが高い。

合わせて、最初のバラバラ状態からチームとして団結していく絆(黒人を主人公に人種や性別を超えてが今の流れ)、男同士の友情、淡い恋心と、人間ドラマ面の描きこみも丁寧で、最後まで楽しめるエンターテイメント作品だった。

 

クソ真面目な正義感で最初はゴキブリさえ殺せない主人公ボイスの成長ぶり(目を見開いた感じがゲットアウトやボビー・オロゴンに見えてしまった)、男勝りな村の娘クロエのカッコよさ(美女の火炎放射機をぶっぱなす姿は最高)もいいが、やはりワルぶっているが現実主義のクールな伍長の男気に泣ける。後で確認したら、カート・ラッセルの息子ワイアット・ラッセルということで、なるほど父親の主演作「ニューヨーク1997」(ジョン・カーペンター監督)でのスネークを彷彿とさせられた。

 

※ここからネタばれ注意 

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【演出、ラスト】

演出はいろいろとサービス満載で終始お気楽に楽しめる、特に終盤、教会からの脱出シーンのワンカットは見事。

エイブラムスが尊敬するスピルバーグの「プライベート・ライアン」や「遊星からの物体X」などへのオマージュ・遊び心も満載で、「イングロリアス・バスターズ」や前半/後半で別物映画になる「フロム・ダスク・ティル・ドーン」を思い出させる。

あと、ナチス+ゾンビものだと、「処刑山 デッド・スノウ」、「ナチス・オブ・ザ・デッド」、「ヒトラー最終兵器」、「武器人間」など意外と多く、組み合わせやすい題材なのか。

 

ラストは、いちおう全滅させて逃げ出すことに成功はするが、また次の任務へと移りヒトラーとの闘いはまだ続いてく・・みたいな感じで終わった(さすがに続編はないかな)。でもゾンビはどこかに隠れていて復活する可能性もありそう(そういやクロエの家のゾンビ化したおばあさんは殺されてしまったのか?忘れた)。

少し残念だったのは、ゾンビ兵士がもっと出てきて暴れて欲しかった、前半に使い過ぎて予算が無かったのか?ゾンビ映画なのにほとんど出てこないし。そして敵ボスのワフナーと伍長との対決はせっかく二人ともゾンビなのだから、直接グチャグチャのバトルを見たかった、ラストのライターの火で一発全滅はあっけなさ過ぎで物足りない。。

 

実際にもナチスは人体実験は行っていたようだし、闇に葬られているだけで現代に蘇るかもしれない・・結局はいつの時代も一番怖いのは人間そのものというのは変わらない。

アベンジャーズ エンドゲーム」の大作王道ものもいいけど、こういった作品もたまには負荷なく見てみるのも面白い!