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「アベンジャーズ エンドゲーム」 ★★★★☆ 4.6

11年間の想い出を総括した壮大なる卒業式!まさかアベンジャーズで泣く日が来るとは・・愛あるマン、アメリカのケツ、そう「3000万回愛してる!」

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アイアンマンを初めて観た時に、誰がこのエンドゲームまでの壮大なストーリーを予想できただろうか?、11年22作続いてきたMCUの総決算・集大成であり、まさに平成と同じく一つの時代の終わりを感じさせる奇跡的超大作。

自分は一応全シリーズ見ているけど、筋金入りのMCUファンではないが、とにかくファンムービーとしては満点!(映画単体での評価は別)。全てのファンが隈なく喜ぶ演出の積み上げで、3時間を感じさせない絶え間ない興奮から最高のラストで絶頂、「こんなんずるいやん」としか言いようがない。。

改めてMCUの凄さを実感、それぞれの愛する“推し”キャラ含め、過去作の様々なシーンがメタ視点で蘇りながら、総決算していく展開は見事で、アクション・ヒューマンドラマ・コメディ・SF・恋愛・戦争とあらゆる要素が詰まったエンターテインメント作品。初見の人でも楽しめるが、今までのMCU作品を見た分だけ比例して楽しめるので、出来るだけ予習した方がいいのは間違いない(前作インフィニティ・ウォーは必須)。

3時間を3章の均等な構成で、各キャラクターの見せ場と時系列の変化に合わせた あらゆる伏線を回収する手際の良さ、そして激熱クライマックスにつながる壮大なカタルシスが見事。以下、説明省略しながらネタバレ全開で。。

 

※ここからネタばれ注意 

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【(ネタばれ)・考察】

【1章 喪失感からの葛藤/2章 過去からの回収】

前作インフィニティウォーで人類の半数を失って、それぞれ葛藤を抱きながら何とか生きているところから、開始早々サノスの首をソーがぶった切って死亡、ストーンも粉々で復活不能というまさかの衝撃的展開に唖然。。

そして5年がたち喪失感・絶望が続く中、量子世界から偶然にもアントマンが帰還、タイムトラベルの可能性に気づき最初は断ったトニーが完成、シールドをキャップに渡しシビルウォー以来の仲直り。

サノスが6つのストーンを集めて指パッチンする前に時空を超えて回収すべく、各々分かれてタイムリープ。正直タイムリープは、論理的に考えてどうなの?とか突っ込むところは多いけど、そこはご愛嬌、そもそも指パッチンだし(笑)、(マルチバース論だと、今生きている世界に影響を与えることなく未来や過去に行くことが可能、BTTFやターミネーター、ビッグリボウスキの話も出てきて面白かった)。

ただ、過去に戻ると、過去の自分や未練と対峙することになり想定外の展開になっていく。それぞれのキャラが向かった先での行動や、そこでの大切な人とのやり取りを得て新たに見つけるものや成長ぶりに涙。何よりもファンが愛する各作品の名シーンの舞台裏が主戦場なので、想い出が走馬灯のようになって感動が押し寄せてくる。。

 

【3章 最終決戦からの希望】

ネビュラの情報もあり過去から再度取り戻すべくやってきたサノスの大軍団、アイアンマンとソーが倒されて、キャプテン1人 vs サノス軍団の絶望的な状況の中、「On your left」からの消滅から帰還し散り散りになっていた全員集合で号泣。ヴィジョン、ガモーラ、ナターシャ以外、全員復活のオールスター総決算、そりゃ最後は集まって来るとは思ってはいたけど、いざ画で見ると圧巻過ぎて・・

そしてキャップの燃えるキメの一言「Avengers, Assemble!」で絶頂のピークへ。

ストーンをみんなでバトンパスしていくシーン(受け継がれる順番や意志)、ピーターの危機には美女軍団が盾となるシーン、女性アベンジャーズでの戦い(アーマースーツを着たペッパー・ポッツの登場は驚き)、そして、キャプテンがソーしか扱えないハンマー・ムジョルニアを持てるようになって「やっぱりな!」と言うやり取りには震えが止まらなかった(何年越しの伏線回収だよ)。。

これだけ大構図の戦いでも誰が誰と戦っているのか分かりやすく、構図内におけるアクションの動線の的確さ(左から右への流れ)が素晴らしい。

ラスト、サノスにグローブが渡り絶体絶命の時に、ストレンジが死にそうなスタークに指を立て「1400万605分の1はお前にかかっている」、そして最後の力を振り絞って奪い返し、「俺がアイアンマンだ」と指パッチンしサノスを消滅させて死んでいく。。

傲慢で自己中心的だった男が最後は全人類のために自己犠牲を払って死ぬというエンドゲーム。最後はトニーの葬式にみんな集まって、それぞれの今後を見せていきながら映画は終わる。。

 

【主要キャラクター:コメント】

■GotG:メンバーは前作で登場が多かったから今回は出番少なめだったかも。ガモーラは指パッチンより前に殺されたので復活しなかったが、過去から来たガモーラはやはり元の線上に戻ったのかな、最後の船には乗ってなかったし。ネビュラがガモーラに言った「こいつか木の二択だった」には笑った。。

アントマン:復活がまさかネズミのおかげとは予想外だったが、タイムトラベルの概念をもたらした映画一番の功労者と言ってもいいだろう。最後はスコットの娘キャシーと共に幸せそうな姿で、キャシーもいずれアリ・ハチ・××?になりそう。。

■キャプテンマーベル:ショートカットになっていてキュートだったが、やはり強すぎる。ガントレット付けたサノスとのタイマンバトルでも負けてないし、指パッチンを寸前で防いだのもさすが、まあサノスの大戦艦を一撃で破壊してガッカリさせたのには笑ったが・・今後はサノスよりもっと強い敵が出てこないと全部が一撃で終わりそうで物語が成立しないのでは(困)。。

ホークアイ:最初の家族を失ったショックから世界中の悪人を抹殺するローニンとなっていたのはビックリ。真田広之の存在感はさすがだけど、日本語が出てきたのは違和感ありあり(興行がいまいちな日本への配慮なのか?)。。

ブラックウィドウ:ソウルストーンで誰かが犠牲になると思ってたが、ナターシャだったとは・・何としても人々を復活させるという信念が強く自分の意味を見出してきたからこその選択・自己犠牲は納得も・・ホークアイとのお互いを思い合う、恋愛や友情よりも深い絆がもう見れないのは寂しい(ナターシャの葬儀もやってよ)。ブラックウィドウ単独作の制作が決定しているらしいが過去編をやるのか?

スパイダーマン:最後までトニーとピーターの友情が熱く"Tony Stark has a heart"、次への継承を託された「スパイダーマン ファーフロムホーム」はフェイズ3の締めくくりとしてどうなるか楽しみ。。

ドクター・ストレンジ:前作で予見した1400万605分の1の瞬間、トニーと目で語り合う二人には本当に震えた。前作でストーンを差し出してまでトニーを助けた理由がこのシーンだったとは。タイムストーンは無くなったが、最強キャラでリーダーになれる存在には違いない。。

■ハルク:ブルースとハルクは一体となり「プロフェッサーハルク」として、最後ガントレットを付けてみんなを復活させた功労者だが、全体的にお笑い担当の要素が強かった。「インクレディブル・ハルク」時とキャラが変わり過ぎでは。。

■ソー:前作サノスに敗北したことでヒーローとしての在り方や自分の存在意義を見失い(戦争後のPTSD状態)、酒とゲームの世界に逃げ込んだのは現代のアメリカを反映しているのか(サノスの首をはねた後の後悔の念も含め)。

過去に戻って母親と会うシーンは「のび太とおばあちゃん」の話に近い、息子(孫)が未来からやってきたのにも驚かず信じて暖かく包み込む母性にグッとくる。母から「ありのまま」の自分で生きるように言われたこともあり、最終決戦にも太ったまま戦ったのは納得だし、最後は国王の座を女性に譲って(現代的)、王ではない「ありのまま」の自分としてGotGのメンバーと旅に出ることを決めたのも今後が楽しみで仕方ない。。

キャプテン・アメリカ:最後はストーンを戻すため再び過去に行き、その時代に留まって帰還しなかった。もともと冷凍睡眠で未来に来てしまってキャップとしての人生を生きてきたが、ようやくスティーブという1人の人間として自分の人生を生きることができた。ペギーと約束したダンスシーンに涙。そして、そのまま現代となり、すっかりおじいちゃんになったので、事実上引退かな。

予想外だったのは、シールド盾をウインターソルジャーではなくファルコンに渡したこと(現代的)、ファルコンが新キャプテン・アメリカ?になるのかは分からないけど。。

■アイアンマン:MCUの歴史自体がトニーの成長物語であり、今作は「トニー・スタークの最終章」と言っても過言ではないだろう。何よりこの言葉に始まり、この言葉で終わるのには痺れた「アイアム アイアンマン!」。アイアンマン1では自信家で自己中心的な顕示欲から発した言葉・・、それが11年の間に様々な戦いを経て、仲間と出会い、愛する人や家族(子供が可愛すぎて確かに3000万回愛してる!と言いたくなるわ)もできた。

「自分こそ全て、俺が絶対的な存在だ!」というサノスに対して、「みんなを守るために生きる、それがアイアンマンだ!」という人間的成長に号泣。。そして、ラスト、みんなに見守られながら満足そうに死んでいく姿は悲しくもあるが、不思議とあたたかい気持ちで「素直にお疲れさま、今までありがとう」と言いたくなった。。

 

【正義についての答え】

前作インフィニティウォーでは、サノスなりの絶対正義として「全人類の半分を喪失させる」という方法で世界を救った(ある意味ヒーローなのだ)。そこには「正義の名の下に生じる犠牲の可否」というテーマがあり、今作で求められるのはサノスとは違う解決策で「宇宙の均衡を保つ」ことが「正義」に対する答えになるはずだった。

だが、最終的に今作では、サノスを超える具体的な解決策を示せたわけではなく、厳しい見方をすれば「大敵を寄ってたかって排除して元に戻しただけ」で、今後の人類(宇宙)の問題は残ったままである。今回は全てがヒーロー視点で、半減した普通の人々の悲しみやヒーローたちとのつながりが無かったのも残念だったし。

とは言え、自分なりに考えてみると、前半で描かれていたように人類が半分に減って、全ての活動が衰え、社会や家庭の崩壊、人間性の破壊などが各地で起こっていたが、果たしてそれが正義の結果と呼べるのか? 何よりも未来を救う可能性も半減したことになるのではないか?

力のある一部の者による独断により運命が決まり、多様な価値観や可能性が激減する、サノスは自分が創造主となり世界を書き換えるなど「自分以外の他者」(愛する家族も含め)を犠牲にしている。一方で、アベンジャーズは、世界を救うために、残された困っている他人のために迷わず「自分」を犠牲にしている。

最終的に人類が半減しようとも、どちらのヒーローの方についていくかは明確であろう、自己犠牲をいとわない精神性とみんなで力を合わせていくことが、これからの未来を切り開く一番の可能性であり、それを信じ抜くことが答えではないだろうか?

 

現代の自国・自分優先の排他主義が蔓延している中で、ふと一度サノス並みのヴィランが現れた方がいいのかとも思ってしまった、全人類共通の大敵に対し、各国が集まってAssembleする精神や体制を生み出す必要があるのでは・・、まあ絶対的リーダーがいないとまとまらないだろうが・・(今の政治家たちに自己犠牲なんぞ出来るのか?)

 

このようにMCUは、各キャラの作品が単独映画としても完成度が高い上に、全体でも網の目のように張り巡らされた関連性が広がって、作品を積み重ねるほど比例して面白さが増していくという構造を見事に作り上げている。まさに「マーベル・シネマティック・ユニバース」の名のとおり、壮大な一つの宇宙が創り出されてるのだ。それを11年間続けてきて、今作で1つの完成形とさせた制作陣や役者たちの圧倒的な熱量には、本当に頭が下がるし、賛辞を贈るしかない。

 

エンドロール、6人のシルエットと手書きのサインが出てきて、後ろで今までのアベンジャーズの映像が流れていくのを見ながら、本当にこれでエンドなんだなあと感無量になりつつ・・エンドクレジットの後に「鉄を打つ音」が劇場に響き渡る(最初のアイアンマンスーツを作った時の音のように)。。

「おわりのはじまり」なのか、トニーからピーターに託された「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」にも期待しつつ、さあ、アベロス?を紛らわせるためにチーズバーガーでも食べようか。。

この11年間をリアルタイムで体験できて本当に良かった、ありがとうアベンジャーズ!アイアンマン! 「3000万回愛してる」!