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「ハッピー・デス・デイ」 ★★★☆ 3.6

◆掘り出し物ループの面白さデス、ホラー版「オール・ユー・ニード・イズ・イキル」「恋はデンジャーブ」「時をかけるビッチ」、今日は残りの人生の最初の日・・

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 ゲット・アウト」「パージ」「スプリット」「ハロウィン」など、新感覚ホラーを立て続けに大ヒットさせている絶好調の製作会社ブラムハウスが手がけた、タイムループ×ホラー×青春×コメディ。B級ホラー系かと思いきや、これが良く出来た掘り出し物で、アメリカでも予想以上に大ヒットして続編まで出来たのも納得の面白さだった。

話自体に目新しさはないがループものとして分かりやすく、笑いあり・涙あり・恋愛ありで、全体的にテンポ良く進みながら伏線回収も気持ちよくホラーとコメディのメリハリのバランスが見事。同じ日々を何度も繰り返す主人公が、強気で立ち向かい失敗を重ねながらも学び成長していく姿に考えさせられ、怖さより爽快感が勝る展開で96分間バシッとまとまっているので、ホラーが苦手な人も楽しく見られるはず。グロ描写はほとんど無く主人公は何度も死ぬけどほとんど痛くもないし血も出ない、形式上ホラー演出はあるけど、どちらかと言うと急にデカい音でビックリさせる感じ。

 

主人公のツリーは、18歳のバースデイの前日に初めて出会ったカーターの部屋で一夜を過ごし、その日の夜に惨殺されてしまう・・が殺された瞬間にまた部屋で目覚めたところに戻ってしまい、また同じ殺される日が繰り返されていく・・タイムループものだが、今作は何と言ってもツリーのキャラクターが秀逸、いわゆるビッチなギャルで、いつも不機嫌そうに誰とも打ち解けず他人を見下す傲慢な自己中女、B級ホラー映画で間違いなく一番最初に殺されるタイプで仕方ないなと思わされるキャラとなっている。

なので、犯人に心当たりが多すぎて誰なのか分からないのが面白い。その性格上、逃げ回るのではなく意地でも犯人を捜す強気さも良い、必死で記憶を活用してカーターと共に犯人から逃れる手段を試行錯誤するが、上手くいかない。どうせみんな覚えてないからと下品な振る舞いをしたり、素直に行動しても結果が伴わないと逆ギレ、何度も繰り返すにつれ、ツリーが死ぬ場面もぞんざいな扱いになってきて死に慣れてきてしまう。

そんな中、何度も同じ「今日」を繰り返すことによって、自分の言動一つ一つを鑑みながら反省・修正していく、ヤケクソ気味な「毎日」を送っていた彼女が今を精一杯生きる事の価値を知り、ひとりの人間として成長していく。彼女の性格がひねくれてしまった原因も克服すべき問題としてしっかり描かれていて、ループのたびに死んだような目から力がみなぎる目に変わって、実際どんどん強くなっていく。

明日が来るのは当たり前のようで奇跡、「今日は残りの人生の最初の日」なのだ、少女の青春・成長ものとしても良く出来ていた。。

 

【演出】

監督はクリストファー・ランドン、あのゾンビコメディの快作「ゾンビーワールドへようこそ」を手掛けていて、さすがのコメディセンス。

冒頭の「ユニバーサル」のクレジットからループしているところなど遊び心満点!そして、殺され方のバリエーションも豊富で、殺されるたびにヤケクソ気味になってくるのも楽しい。

ツリー役のジェシカ・ロース、ブリトニー・スピアーズブレイク・ライブリーに似ていて可愛い、「ラ・ラ・ランド」では最初にエマ・ストーンと踊る「緑のドレス役」を担当していたけど、今回ビッチになって分からず、しかし31歳には見えない。今作での演技も見事で、序盤のビッチ然とした佇まいから、ループするたびに優しく恋する女性への心境の変化を、化粧や表情を含めてナチュラルになっていくところは分かりやすかった。

殺人鬼を殺してあと少しでループから抜け出せるけど、カーターが死んで永遠に戻らなくなる……と気付いてすぐ助けるために、自ら高いところから首吊りストーンの覚悟に感動、そのあと目覚めてカーターに抱きつくのもカワイイ。そして「この一日を脱出したらこの人の子供を産みたい」とまで思える一途さは最初のビッチぶりからは想像も出来ず・・(カーターも一途でイイ奴過ぎだしお似合いなのだが)。

殺人鬼が被るベビーマスクのデザイナーは「スクリーム」のゴーストフェイスと同じ人らしい、きもかわいい感じがグッド。

カーターの部屋に「ゼイリブ」のポスターが貼ってあったが、ところどころにジョン・カーペンターダリオ・アルジェントへのオマージュあり。

原題:Happy Death Day、直訳:命日おめでとう、キャッチコピー:ー 誕生日に殺されるなんて——え?しかも何回も?!プレゼントは永遠に繰り返す<殺される誕生日>、時を駆けるビッチに明日は来るのぉぉぉ? なかなか独特で面白いが、ポスターはホラー感が強すぎる。。

ループするたび、大学の中庭で26時間耐久レースの掛け声で言われている数字が一つずつ減っていってるらしいが、気づかなかった(続編への伏線なのか?)。

イムループものとしては、死ぬたびに成長していく「オール・ユー・ニード・イズ・キル」や、だんだん人に親切になっていく「恋はデジャ・ブ」、犯人を見つけ出す「ミッション:8ミニッツ」などをうまく融合した感じ。似ているなあと思っていたら、実際に自ら劇中でも言及してきたのにはニンマリ。。

 

※ここからネタばれ注意 

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【(ネタばれ)・考察】

ツリーの涙ぐましい努力の結果、手配されている殺人犯を見つけて対峙(停電の伏線)して解決と思いきや・・ループは終わらず。一応どんでん返しのようだが、おそらく最初に誰もが怪しいと思ったルームメイトのロリが真犯人だった。。(そのまんまかーい)、あそこで手作りケーキは怪し過ぎるし、映画のポスターのケーキと同じだったからポスターで察してしまうのでは。。ただ、男を取られたみたいな低レベルの動機はいかがなものかとは思うが・・そして、最後の対決が生身の女性同士のキャットファイトで絞められたのにも笑ってしまった。

まあ、ある程度のカタルシスは得られたし、ずっとわだかまりの原因だったパパとの和解もなかなか感動的で良かったので、めでたし。結局、なぜループするのかについては1ミリも語られないまま終わってしまったが、これはこれであり。

 

続編の「ハッピー・デス・デイ・2U」(上手い)は7月12日公開と、2か月連続での公開となっているが、気になって見てしまう人も多いだろう(もともとアメリカから2年も公開が遅れたのは何故?)。続編に向けた伏線としては、ループ内にいたのに拾われなかったアジア人?、冒頭のループで出てきたオルゴール?、身体の機能が衰えているところ?、生き残った凶悪犯がどうなったのか?、先生の机になぜお面があったのか?、ループの解明など、うまく回収できるかどうか・・不安と期待が入り混じる・・

 

「今日という一日はあなたの残りの人生の最初の日」と書かれたステッカーが繰り返し出てくるように、何となく過ごしがちな毎日の大切さ、明日が来ることの有難さ、たった一日でも自分次第で周りを含めて変えられること、を意識して過ごしていこう!それが「ハッピー・デイ・です」。。