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「がっこうぐらし!」 ★★☆ 2.5

◆ゆるふわ学園青春アイドル映画としては上出来、ツッコミどころ満載も血の出ないゾンビ世界をシャベルガールがぶったたく!

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人気漫画原作のゾンビ学園モノで、映画好きの一部の人が褒めていたのと、公開前から実写化への文句やジャケットに映ったキャベツ関連で炎上していて(実際はドラマ版)話題になっていたので鑑賞してみた。

マンガも読んだことなく、主演のラストアイドル秋元康の企画もの)もよく知らなくて、正直ありがちのアイドル+ゾンビホラーのお手軽絶叫系かと舐めていた分、そこまで悪くはなかった。本格的なゾンビ映画を期待するとがっかりするので、最初から日常の学園ものにゾンビが絡む青春映画と思って見ることをおススメします(グロさは無いので苦手な人も大丈夫)。

 

ありきたりの日常がある日ゾンビの発生で突然崩壊、それぞれの苦しみの中で助け合いながら乗り越えていく女子高生4人の成長物語。あまりに残酷な現実に心を病んでしまった子も含め、この状況を「学園生活部」という部活動の一環として設定して学校の中で生き延びていく・・

ゾンビとの戦いではなく生き残った4人の生徒の学園生活をアイドル映画として魅せることにこだわっているので、意図的にキレイなまま血の表現は控えめ(ほとんど流血・血ふぶき無し)となっている。確かに主演の女の子たちもひたすら可愛く撮られていて〜特にくるみを演じた阿部菜々実の圧倒的な存在感、9頭身の脚長スタイルでのスコップ・シャベル攻撃と躍動感は素晴らしかった。

 

監督は「もうひとりいる」「リアル鬼ごっこ」と主にホラー映画を中心に撮っている柴田一成監督。

この原作マンガの最大の面白さ・魅力は「ありがちな萌えキャラ女子高生のほのぼの学園物語」と思わせておいて、突然ゾンビとの血みどろ描写に切り替わり本当の物語が現れるところになる。が、それを隠しての映画公開は不可能と諦めたのか、予告編やポスターで完全にネタバレしているのは仕方ないけど残念。

でも、最初の学芸会みたいな日常の学園ドラマがずっと続かないと分かっているので耐えられたというのもあり(知らなければ10分で脱落する人も多いだろうし)。アニメの方が萌え系の絵柄もあり、この展開はギャップがあって描き分けしやすく面白いはず。

まあ、全員アイドルの演技初心者なので、とにかく演技は厳しく最初は見ていられないが、順撮りしてる効果かストーリーの進行と共に段々良くなって成長しているのが分かるのはこの映画らしさで、実際の若者たちの青春として輝いている瞬間をうまく切り取っている。

アイドルの制約として現場では、「カメラを止めるな」のように「血ふぶきやゲロはNG」とか「ここの涙は目薬で」とか「よろしくで〜す」とポンとされていたのかもしれない・・が限られた条件の中では頑張っていた方では。

美少女がスコップやバット、バールでかつてのクラスメイトをぶっ叩く姿は、なぜか銃やナイフよりも説得力や悲壮感が感じられて、主人公くるみの打撃フォームの安定感から仕留めようとする気迫やキレもちゃんと伝わってきた。

ちなみに、この映画のどこかに「ひょっこりはん」がひょっこり現れます(似ているなあと思ったら、そうだった・・)、そして最初の方に足立梨花も現れます。。

 

とは言え、とにかくツッコミどころは満載でキリがない(ある意味面白い)、気にしたらアイドルゾンビ映画は楽しめない。

流血や血ふぶきが全く無いのは意図的で仕方ないが、やはり女子高生の力でスコップなどの一撃で倒されるゾンビの弱さは違和感あるし、そもそもなぜ屈強な男子生徒が全員死んで生き残ったのがか弱い美少女だけなのか・・

ボロボロになっても、次の日にはキレイになってる少女たち、どこでシャワーや着替え、洗濯をしてるのか?、キレイなお顔(化粧もバッチリ?)とキレイな半袖セーラー服のまま短い丈とスカートでの闘い、そしてどんなにジャンプしたり激しい戦いでも絶対に見えない(見せない)パンツ(ローアングル中心で意識した撮り方はしてたが、パンツ見えNG多かったのでは)。。

教室や境での簡単なバリケード、あれだけのゾンビが一気に燃えるのか、燃え尽きた後も服を着ているのは・・などなど。

 

※ここからネタばれ注意 

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【(ネタばれ)ラスト・考察】

オチとしては、よくある仕掛けだけど騙された人も多いのでは・・「めぐねえ」も実はすでに死んでゾンビになっていて、ゆきの妄想の存在だった。まあ、号泣ポイントではあるが、それまでの描写がフェアでなくミスリードとして上手く機能はしてなかった。

撮り方にものすごく違和感があったし、会話させるのは「ゆき+特定条件下のみ」で他シーンでは会話もない、最初から「いただきます」してるけど前に食事が用意されてないなど、意識すれば気付くレベルになっていた。ただ、事前に分かった上で自分の身体を縛り付けていたところはグッときた。。

「めぐねえ」を演じたおのののかの癒し存在感は見事だったが、個人的にはオチとしてあとひと捻り欲しかった。

 

ラストの卒業式、定番だが少女時代を終えて新たな社会へ出ていく暗喩としても良かった。極限状態でも懸命に青春を謳歌しようとする彼女たち(文化祭とか体育祭)、永遠に続けばいいと願った学校生活にもいつか終わりがやって来る。安定した場所などなく生きるためのモラトリアムからの脱出、成長しなくては生きていけない現実を受け止めるジュブナイルものとしてベタだけど良いラスト。

そして、まさかの無免許運転コンプラいいのか?)で次の場所に向かっていくが、今度は「がっこうぐらし」から「〇〇ぐらし」になるのだろうか?

どこへ行こうと現実を受け入れた4人なら大丈夫、新たな変化を受け入れて、一緒に成長していくのだろう。