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「麻雀放浪記2020」 ★☆ 1.5

◆オリジナルとは完全に別物のイカサマパロディ、笑ってはいけないジャスティス斎藤の巧みなB級コメディ放ろう映画、頭が爆発するほどフザケ過ぎのV死ね

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戦後1945年から2020年にタイムスリップしてきた天才博打打ちの青年が、元の世界に戻るため麻雀の強さを武器に激動の時代を生き抜いていく姿を描いた物語。いちおう1984年の阿佐田哲也の小説を和田誠監督が映画化した「麻雀放浪記」をベースに斎藤工主演&白石和彌監督で再映画化。

物語はまさに奇想天外・荒唐無稽・破天荒・・終戦直後の東京で命を賭けて麻雀を打っていた坊や哲が、新たな世界大戦の勃発により荒廃し東京オリンピックが中止となった2020年の東京へとタイムスリップしてきて、ふんどし麻雀アイドルとしてブレイクしていく、という設定は面白そうなのだが・・・

本作は「サニー/32」と同じ流れでヒット作の後のお遊び実験的作品として白石監督がやりたい放題に撮っただろうからくだらないのは覚悟していたが・・アタマ爆発しそうなくらい本当につまらない期待を裏切らない珍作だった。ピエール瀧の逮捕で公開する/しないかを真面目に議論してたのも作品の一部なのではと思うくらいだが、改めてこの内容で全国公開できたのは凄すぎる(劇場で1800円払って観てたら怒ってたかも?レンタルで良かった)。

 

世界観からキャラ設定までアホらしさ満載で、遊びすぎフザケけすぎて映画としては酷いレベル、笑えるところは笑えたけれど中途半端な小ネタが多く全体的にスベり気味、個人的にはもっと振り切ってぶっ飛んで欲しかった(エログロも控えめで物足りない)。冒頭の憲法改正反対・自衛隊軍隊化反対のデモ隊を警官隊が警棒でボコ殴りにするシーンや、戦争に負けて2020年東京五輪が中止になった設定など、全体的にいろいろ社会風刺を盛り込んではいるが、いまいち響いてこず。

とにかく、麻雀放浪記とあるけど完全に別物として見た方が良い、基本的にはパロディ・コメディに徹しているので、オリジナル版の完成度や緊張感を期待すると肩すかしを食らうことになるので注意。とは言え元ネタ映画と比較する面白さはあり、キャラの位置づけや麻雀対決のセリフや九蓮宝燈の意味合いなどがより楽しめる。麻雀が分からなくても十分に観られるが、チンチロリン含め基本ルールくらいは押さえておいた方がいいかも。

2020年のAIなどで完全個人管理された日本の状況、異常なテンションで発散する斎藤工、最強雀鬼と化すAIロボットのベッキー、オリジナルへのオマージュあふれる最終決戦など、見どころもそれなりにあるので、深く考えずに本気のおバカ映画として見るのがちょうどいい。

何となくVシネ豪華版や昔の三池崇史監督作品(「DEAD OR ALIVE」「牛頭GOZU」など)に近いものも感じた(三池崇史化や園子温化にはまだ早いが)。

 

邦画では初の全編iPhone撮影という挑戦(常時20台のiPhoneを駆使)もあり、特にその意義・必要性は感じなかったけど、画面的には違和感なく、演者とカメラの距離の近さやその機動力を活かした躍動感、小型ならではのアングルなど効果的なところもあった。もちろん海外の方がレベルが高いのは仕方なし(ショーン・ベイカー監督「タンジェリン」、ソダーバーグ監督「アンセイン」など)。

 

昭和の硬派男と現代のビッチの組み合わせは良かった。坊や哲を斎藤工が学ランのフンドシ姿で20歳の童貞を心から楽しそうに演じてるが、一番望んでいたシネフィル度合いからの演技の熱量は凄い。ドテ子は音楽家チャランポランタンのももを抜擢したセンスに驚き、地下アイドル感の絶妙のかわいさとかすれ声と喘ぎ声…ビッチの割に本当はVRメガネをかけてシマウマでしか欲情できないとか、キス拒否症で吐いてしまう(エクソシストの緑ゲロ)とか最高。哲とドテ子の関係や心情の変化も上手く表現していて、二人の青春成長物語でもあった。

ピエール瀧は予想以上に出番が少なくて物足りなかった、カットしなかったのは英断だが、五輪組織委員会・会長の役としてそこまで必要でもなかった(現実の〇会長の方が本物の悪役としては最適かも?)。東京都知事役で出てきた舛添要一は置いといて、岡崎体育の見た目そのまんまの怪演ぶりは良かった。

 

肝心の麻雀的面白さがあまり感じられなかったのが残念、なぜか役満ばかりだし、最終対決も命をかけたヒリヒリした切迫感が弱い、ドキドキワクワクする緊迫感なら女性雀士「咲-Saki-」の方がはるかに上だった。それでも、ところどころに本物のプロ雀士やそっくりさんが出演していたり、有名雀士の名前をもじっていたり、奥深い麻雀の歴史を垣間見れたりして、麻雀好きならニヤリとするところもあるらしい(そこまで詳しくないので確認できてはいないが)。

個人的には吉澤健が演じる “チンチロリンの怪人”との勝負に1番博打を感じた、金ではなくその人の全てを奪い尽くす博打魂、坊や哲の未来の姿そのものかと思った。「勝負しねえで生きる奴に出来ることはな、長生きだけだ。」のセリフはしびれる。ピエール瀧の件があっても無くても、この映画が全国公開されたというが1番の博打・大勝負したということなのかもしれない。。

 

まあ、今作の次の作品「凪待ち」できっちり落とし前を付けたということで、本当に笑って済ませられたのかな。

いっそのこと、次回もう一回か毎年でもVシネかNetflixの低予算で「麻雀放浪記20**」として作っていくのもありでは。テレ東の午後ローでやってる「インデペンデンス・デイ2018」や「ディープ・インパクト2019」みたいなシリーズで(笑)。

あとは、これを機会にぜひオリジナルの「麻雀放浪記」を見て、名優揃いの緊迫感あふれる本物の博打にしびれて欲しい。。