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「ジョン・ウィック:パラベラム」 ★★★☆ 3.9

ア、ア、アクション大魔王がフー・ファイターズ全開でにんじゃりバンバン殺していくゲーム世界、人の命より犬の命が最優先「平和を欲するなら戦争の用意をせよ!」

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ジョン・ウィック待望のシリーズ3作目、復讐に燃えた1作目、怒りに震えた2作目と続き、今作もストーリーは二の次で130分間ひたすらアクションを繰り広げてくれる金をかけた最高のB級映画(「ジョーカー」とは対極的)。ちょうどテレ東の午後ローで1と2を初放送していて復習のタイミングもバッチリ。

前回コンチネンタル内で起こした殺しの責任を問われ追放処分(抹殺命令)となったジョンが、次々と殺し屋たちに追われていく話で、今回もとにかく戦いまくり・死にまくり(数えてられない)。1作目の愛犬を殺されたことが発端となり、まさかここまで発展していくとは・・それでも基本的にジョンにブレはなく、一貫して「妻の生きた証を残す」「妻と過ごした普通の日々を取り戻す」ことにこだわり続けてきた。が、今回は逃げるしか術はなく、どこに行っても追い詰められ殺されそうになってズタズタボロボロになりながらも「生きる」ために殺し続けることになる。

 

とにかくアクションシーンが最高、よくまあ、ここまで色々な「○○フー」を考えるなあと感心してしまう、今回は特に馬フー(後ろ脚蹴りの使い方)、犬フーが印象的でパートナーとなるハル・ベリーとのドッグアクションは革命的と言っていい(どこまでCGなのか?)。対戦相手も含め様々なファイティングスタイルやロケーションで、殺陣は前作までの柔術多用のガンフーに加えてソードアクションも多く、シリーズで最もユーモアとバラエティに富んだアクションが味わえる。ニューヨークの街をスーツ姿で馬で駆け抜けたり、モロッコの砂漠をスーツ姿で1人さまったり、ハイウェイでのバイクアクションは完全に韓国映画「悪女」だったり、謎の寿司屋台やカタコト日本語(「にんじゃりばんばん♪」が流れる「キルビル」)、カッコいいのだが笑ってしまうシーンもあり飽きさせない。

何よりもジョンの絶対に死なない安心感、無双ではなく致命傷をもらわない程度の戦い方でありながら、車に何度轢かれても屋上から落とされても立ち上がる強靭さ。そして圧倒的な戦闘能力、本で殺す、人の口に目にナイフを刺す、人の頭に斧を投げる、一人に対して何発も撃って確実に仕止めるなどの容赦なさ。グロいけど血はそれほど出ないし、あまりに簡単に次々とサクサク殺していくのに慣れてしまうので、苦手な人でも割り切れば楽しめるはず。

ただ、今作のジョンの動きが若干遅く見えるのは意図的なのか?、よくよく時間経過を振り返ると、1作目から5日後ぐらいが2作目、それから1時間後が今作なので、2014年公開から5年で1週間程度しか経っていないのか?・・その間ひたすら戦いっぱなしで身体はボロボロなので当然動きも遅くなっているということなのか。ゆっくり休めないのは仕方ないけど、少しはちゃんと寝させてあげたい(帰る家ないけど)。

 

殺し屋業界における独特の世界観も健在で、コンチネンタル含め組織やルールの厳守さや世界中にターゲットを発信するところも良いのだが、今回は裁定人(ドラゴンタトゥーのルーニーマーラみたいだった)や主席連合なども出てきてややこしくなってきた。。意外とみんなルールや約束を破るわりに、契りや情に厚かったり、結局組織側はジョンをどうしたいのかも謎という不思議さ。とにかくジョンが大物すぎて、いったん冷静に憧れや敬意を払うのが面白く、後半はジョン・ウィックのファン感謝祭のようになっていたのがレジェンド・・

 

【演出】

監督は1,2に引き続きスタントマン出身のチャド・スタエルスキ監督、キアヌとは「マトリックス」以来の盟友、アクションをどう新しく見せるかという方法論のこだわりはハンパないが、演出や描写が真面目なのかギャグなのか分かりにくくなってきたかも。

カメラワークは下手に画面を揺らしたり前後させず1つ1つのアクションをきちんと見せていて、アングルも真下からだったりガラス越しだったり工夫してるのが良い。色のコントラストを用いた美しい映像も特徴的で、オープニングから青をメインにしつつ、場面により赤を際立たせることで人物の状況や心情を上手く表現していた。

キアヌ・リーブスのショットガン捌きが相変わらず素晴らしく、こまめに真面目に素早いリロードに毎度見とれてしまう。銃マニアも満足の丁寧な銃の説明もあり、終盤の特殊部隊に対する9mmパラベラム弾が出てきて初めて副題が意味を成していた。タクティカルトレーニングをしてるキアヌの動画を見ると、アクションの説得力が増して応援したくなるはず。ただ、「ザ・レイド」シリーズから出演したヤヤン・ルヒヤンとセセプ・アリフ・ラーマンとの格闘戦はさすがに厳しく、2人がキアヌの動きに合わせてる感は否めなかったが。。

今作はアジア色も強かったが、カタコト日本語ではなく、完全に日本を舞台にした展開も見てみたかった(真田広之坂口拓武田梨奈あたりと戦って欲しい)。

あと、マトリックス好きとしては、ローレンス・フィッシュバーンとの共演やあのセリフが聞けたのはテンション上がった。

 

 

※ここからネタバレ注意 

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【(ネタバレ)演出・考察】

クライマックスのガラスの部屋は、超スタイリッシュなブルース・リー死亡遊戯のようで、戦いも含め興奮させられた。

ラスト、ウィンストンは保身のためなのかジョンを銃撃し屋上から転落させる、コンチネンタルを守ったジョンへの裏切りなのか逃がすためにわざとやったのかは次作を見ないと分からない。その後もちろん死なないジョンが同じく一命を取り留めたバウリー・キングに拾われてから最後の怒りの表情で終わる。

正直3部作で終わると思っていたが、完全に今作は4作目に繋ぐためのパートだった、いずれにせよ次作は、主席連合かウィンストンあるいは両方への報復を描いていくのか新たな敵が現れて更に複雑になるのか、楽しみにせざるを得ない。ただ、ストーリーよりもアクション的にこれだけのレパートリーを出し切って次は何フーを生み出せるのかが心配でもあり。ミッション・インポッシブルのトム・クルーズよろしく、同じように定番シリーズ化していけるか、55歳・キアヌ・リーブスを応援していきたい。