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「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」 ★★★☆ 3.7

ゴジラだョ!全員集合」ゴジラ咆哮、ギドラ雷光、モスラ飛翔、ラドン急襲、人間ドラマは一切無視して、ゴジラオタクによる愛に溢れた怪獣プロレスを満喫すべし!

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前作から5年後の世界を舞台にゴジラを中心とした神話時代の怪獣たちが世界中で暴れまわる怪獣デスマッチ映画。子供の頃にスクリーンで暴れていた怪獣たちを、ゴジラオタクがすごい熱量で圧倒的なCGとハリウッドスケールで復活させてくれた・・

ゴジラキングギドラモスララドン、それぞれに特徴あり必殺技ありの大迫力の戦い、BGMを含め日本リスペクトがあちこちに感じられて最高だった(このバトル感は日本のシン・ゴジラ側には絶対に出せない)。大画面・大音量の映画館ならではの、歩く足音の振動や轟音、羽ばたくときの猛風、ヒリつくような咆哮、それらがスゴい臨場感で襲ってくる演出に圧倒され恐怖感すら感じた。

 

怪獣たちのバトルシーン100点、人間たちのドラマパート0点、期待はしていなかったが、予想以上に人間ドラマは全く響いてこなかった。時間軸を進めるために仕方なく無理やりストーリーを付けているだけなので雑でツッコミどころ満載だが、すべてはゴジラ愛・怪獣バトルのためだと割り切れば許せる。

2014年のギャレス・エドワーズ監督作のゴジラに比べたら全然マシ(ゴジラ自体もドラマも暗くて冗長で見づらかった)。昔から観ていた世代・過去作を見ている人ほど気づくオマージュも多く、音楽も昔ながらの定番テーマをはじめ上手くリメイクされていて、懐かしさと共に新しい発見も感じられる。

 

しかし、ここまでお金を掛けて派手な演出にするのなら、やはり人間ドラマはもっとシンプルにして欲しかった。妙に複雑で分かりにくくイライラさせられる行動ばかりで、せっかく怪獣バトルに集中したいのに邪魔なくらい。

主人公の家族の問題がそのまま世界の危機に繋がっていく展開で、特に母親の動機や行動がストーリーに都合よく引っ張られているように感じてしまい、優秀な研究員というよりただの狂ったおばさんにしか見えない。過去の深い悲しみから怪獣たちを利用して地球を再生したい(その前に人類絶滅するけど)という信念も途中からブレブレだし、何をしたいのか本人含め誰も分かっていない迷走ぶり。。怪獣の方が賢くて人間たちの愚かさというかバカさは伝わってきたけど、核兵器の扱い方が雑すぎるのは許せない。。

 

【演出】

冒頭からゴジラの咆哮で始まり、人間ドラマのつまらないところの要所要所で怪獣バトルが盛り込まれているので退屈せずに見ることはできる。

各怪獣を観測する基地のナンバリングがその怪獣の初登場作品の公開年であったり、初代ゴジラに関する要素があらゆるところに仕込まれていたり、とにかくドハティ監督の怪獣映画オタク愛が炸裂していて、オタクであるほどネタを探すのが楽しいはず(そこまで詳しくないので羨ましい)。

映像のビジュアル面はどこを切り取っても絵になるほど、美しくて、かっこよくて、壮大。引き画でスケール感を見せてのヨリでディテールを見せてくる。予告編からしドビュッシーの月の光に合わせてゴジラが天に向かって口から光を出す、モスラが羽を広げるシーンなど最高すぎるし、各怪獣の魅力を見事に引き出している。

 

キングギドラ:氷漬けになってる画だけでも威圧感があったが、三つ首の竜が登場した時の興奮ときたら・・キングギドラの復活と十字架・キリスト像との神話のようなカットが最高すぎる(日本版の鳥居とのオマージュになっている)。各首に知性が感じられ、失われた頭部がにょろにょろ生えてくるのもキモくて良かった。雷撃シーンはまさに雷に撃たれたような衝撃!

モスラ:幼虫の時の愛らしさから女王となる飛翔シーンの神々しく美しいたたずまいは鳥肌もの。ゴジラの導き手であり女神であり、最後はゴジラをかばって死ぬとか・・鱗粉のように散って消える儚さがまた美しい、次作でも復活して欲しい。

ラドン:炎の悪魔となり猛烈な風圧が地上に降り注ぐ、回転しながら来るところ、戦闘機をバタバタ落としていくところも最高。ただ、ギドラからゴジラへ簡単に強いものにまかれる・腰巾着っぷりは、「ごますりクソバード」と名付けられても仕方ない。

 

ケン・ワタナベ演じる芹沢博士も大活躍で最期も見応えがあった。一作目を踏襲した日本に対するリスペクトを感じられ、監督よく分かっている。

"ゴジラ"の日本語発音のこだわり(シンゴジラ石原さとみとは違う笑)、彼の最後が日本語のセリフだったこと(渡辺謙が考えたらしい)、このセリフには過去との和解や自然への敬愛を感じられ、ゴジラを一番愛している芹沢博士が最期に直接ゴジラに触れ合うところは泣けてしまう。。

ただ、放射能とか色々すごい海の神殿で、ヘルメットと軽い服装の生身で降り立ち、核兵器を持って歩き、最終的に手袋とヘルメットを外して核兵器を発動させてゴジラに触れるとか、完全に人間を超えた存在になっていたのは忘れて、いつまでも美しいチャン・ツィイーを想い出そう。。

 

※ここからネタバレ注意 

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【(ネタバレ)ラスト・考察】

破壊の限りを尽くす怪獣に対して、モスラの力でパワーアップしたゴジラキングギドラに勝利し咆哮の神々しさ、最後の怪獣一同がひれ伏すシーンは壮観、まさにキング・オブ・キングの称号にふさわしい。最後に家族が揃って娘のドヤ顔には笑ってしまったが、世界はかなり壊滅状態でこれからどう復興していくのか、どれだけの人が生き残ったのか・・

ゴジラは人類を助けてくれたようにも見えたが、地球もゴジラも思い通りに出来ると思うのは驕りであり、ゴジラは決して救世主ではなく、破滅も救済ももたらす善悪では捉えることのできない絶対的存在であるはず。破壊のあとには創造が生まれる、この世界の王であり神でもあるのだから。

エンドロールの最後の最後まで日本へのリスペクトが見られたのも嬉しく、次作への布石としてコングの描写もちらほら見受けられたのも期待感を煽ってくれる。

正直、ここまで出し惜しみなく作ってしまって、次作が少し不安になるくらいだが、キングコングだけでなくメカフラグも立ったということは、最終的に怪獣アベンジャーズになっていくのか。。これからのモンスターバースを追い続けていきたい。