映画レビューでやす

年間500本以上観る会社員のありのままのレビュー

「美人が婚活してみたら」 ★★☆ 2.8

◆アレしたくてコイしたくてふるえる「勝手にふるえて甘えてろ」、「結婚=幸せ」「結婚=忍耐」の固定概念に魂喝してみたら、何に共感して何を選択していくか?

 f:id:yasutai2:20191016095607j:plain

自他ともに認める美人でWEBデザイナーの仕事も充実しているタカコ(黒川芽以)は、不倫を重ねているうちにアラサーとなってしまい「結婚したい」と死ぬ気で婚活することを決意、親友ケイコ(臼田あさ美)のススメで婚活サイトに登録してみるのだが・・

あの松岡茉優が最高過ぎる「勝手にふるえてろ」の大九明子監督の新作で期待値は上がってしまうが、前作が出来すぎたのと吉本興業製作で内容を見る限り不安な面も大きかったので、映画館はスルーしていたがようやく鑑賞してみた。

まあ悪くはないけど全体的に物足りなくハマらなかった、普通に適度にオシャレでライトなロマンティックコメディとしては楽しめるとは思うけど、もっとコメディ色が強いかと思いきや予想に反して暗めでリアルな仕上がり。現実はもっと複雑でディープだろうが、婚活をすればするほど結婚することが目的になっていくところや過去の自分を乗り越える辛さは共感できるはず。

 

肝心のヒロインのタカコに共感できるかがポイントになるが、個人的にはあまり共感できず好きにも嫌いにもなれず、ずっと客観的に眺めている感じだった。独身アラサー女性あるあるが多いのかもしれないが、常に「死にたい」と言葉に出すところや全然実感がこもってないところ、悲劇のヒロインの私ってかわいそうと自己陶酔に浸っている感じがそもそも受け付けない。美人で健康で仕事も親友もありの恵まれた環境で甘えすぎとしか思えなく。

婚活サイトで寄って来るのは、やはりどこか訳アリの人たちばかりで、キモイ奴か遊び人のイケメンかいい人止まりか、美人だから警戒されぎこちなくなるなど、そう簡単に出会えるはずもない。。そんな中で残った両極端の二人、一見紳士的だが中身はチャラいイケメン歯科医・矢田部(田中圭)は、完全に遊びだと分かってはいてもハマってしまう弱さには仕方ないとは思いながら「結婚したいんだろ!」と突っ込みたくなるし。

私服ダサめで冴えない真面目すぎるいい人・園木(中村倫也)に決めきれないでフラフラするのは、私服はいくらでも変えられるしスーツ増しで気兼ねなくいられるなら「結婚は真面目な人がいいだろ!」と30歳超えているなら分かると思うのだが・・(田中圭中村倫也に出会える婚活サイトってどんだけ~)。

 

【演出】

脚本はお笑い芸人のシソンヌじろうとなっているが、正直いまいち弱かった、原作は未読なので分からないが、女性目線としてどうなんだろうとも思いつつ。ところどころに「勝手にふるえてろ」のセルフオマージュ的なシーンが散りばめられていたが、前作の完成度と比較してしまうので逆効果だったのでは。

しかし、タカコは男の立場で言えば「男をなめるな、ふざけるな!」の一言、女の立場なら田中圭がふざけるな!だろうが。キモイ奴はいいが(待ち合わせ場所が新宿のLOVEの前って嫌すぎる)、園木とのホテルの場面は許せない。呼び出しておいてシャワー浴びてベット寸前で完全に園木をソノ気にさせておいて(パンツを脱いだり履いたりするシーンは爆笑)、アノ仕打ちは決定的なトラウマを植え付けるだろう・・拒否された後の何とも言い難い表情が辛すぎる。

そして、一度Hしただけの男に「お別れにきました」と、わざわざ職場まで押しかけるとか単なるメンヘラのイタい女としか思えない、アラサーなのにやってることが幼すぎて正直呆れるしかない。ブレブレで振り回される男の身にもなってくれ、「そんなんだから結婚できないんだよ」と最後まで全く共感できずじまい。

アラサーの女性なら本当に共感できるのだろうか?なぜ結婚したいのか?恋がしたいのか?セックスがしたいのか?20代や若い子とは違った共感があるのだろうか?、見終わった後のガールズトークに参加してみたくなった(笑)。

 

個人的には、タカコとケイコの女同士の本音でぶつかり合うケンカのシーンが良くてリアルに近いのかな、自由で自分勝手なタカコとは対照的に結婚の実苦労と正論をぶつけてくるケイコの相容れなさ(その後あっさり?仲直りしていたが、その過程も見てみたい)。いや、美人がうらやましいと嘆くけど、ケイコの方が抜群に美人で好みなのだが・・

ストーリー的にはそれほど見応えは無かったけど描かれているテーマは普遍的でもあり、美人とか女性とか関係なく誰もがどこかで自分自身を見つめ直す時が来るはず、みんな悩みながら今日を生きているのだ。

 

 

※ここからネタバレ注意 

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

 

【(ネタバレ)ラスト・考察】

不倫の元カレの影響から離れて箸で寿司を食べて、帰り道スキップしながら、とりあえず吹っ切れたような顔を見せて終わる。。結局、「美人が婚活してみたら」どうなるのかと思いきや・・婚活を通していろんな人々と出会い改めて自分と向き合い、結婚ありきでは幸せにはならないから自分らしくしっかり生きていこう!みたいなありきたりな結論だったのか(明確には示されてないが)。

恋愛を飛ばして結婚はやはり出来ないのか・・本当はSEXがしたかった→本当は恋愛がしたかった→結論、私らしく生きる・・単に1年カレがいなかったからの欲求期と適齢期が重なっただけなのか、タカコは本当に変わったのか?、自立して男に頼らず生きていく人生もあること、本音でケンカ出来る友達のありがたさを実感できただけでも良し、少しだけ前に進んだ程度なのがまたリアルなのか。。

 

「結婚=幸せ」という固定概念で婚活にのめり込むが、恋愛や結婚だけが幸せではなく、友人、仕事、趣味にも幸せはあり、どこに幸せを感じるかは人それぞれ。多様性が叫ばれる中で、人々はそれに気付き始め、結婚率が減少へと向かっているのも事実・・

「結婚=忍耐」という固定概念化も避けたいところだけど、結局、無い物ねだりの中、正解なんてどこにもない、どこかで自分の気持ちに折り合いをつけて自ら選択した道を正しいと信じて生きていくしかないのだろう。

冒頭のアドバイスも参考に「死にたくなったらウォーキング・デッドを観るといいよ、“生きたい”って思えるから」、死にたくなったり、人生に迷ったりした時こそ、映画を観よう、答えはそこにあるはずだから。