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「キングダム」 ★★★ 3.4

◆んふっ♩全ては金の盤上の駒、日本の実写映画にしてはキングレベル、王道のジャンプ的展開と顔面偏差値の高さと長澤まさみの美脚んふっ♩だけでも見る価値あり!

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累計発行部数3600万部の人気漫画キングダム(ヤングジャンプ)、世界中に多くの熱狂的ファンを持つだけに実写化には批判的な声もあったが・・最初からハードルを下げて観たのもあるが、各キャラクターの再現度、アクション、セット・美術ともにクオリティも高く、普通に楽しく観られた。2時間14分と長めだがテンポも良く飽きることなく、原作ファンも裏切られることなく安心して観られるし、漫画を読んでる人も読んでない人も満足できるはず。

とにかく、相当お金かかっているなあというのが第一印象で、実際に日本にしては破格の10億円の製作費とのこと。中国でのロケーションにこだわり、王宮を再現した広大なオープンセットもすごい臨場感で、人やモノや騎馬もスケールがデカく、アクションも含め全体的に安っぽく感じさせなかったのが良かった。

監督は「GANTZ」「アイアムアヒーロー」、最近は「いぬやしき」「BLEACH」など原作漫画の実写化には定評のある佐藤信介監督なので慣れている安心感もあり。お金の力だけでなく監督の手腕も両方マッチしていて日本の実写映画としては完成度が高く、ちゃんとヒットもして評価もされているので、続編も間違いなくあるはず。

 

原作コミックは現時点で55巻まで続いているので、映画としてどこを切り出すかが重要なポイントだったが、今作では序盤のクーデター編の1巻から5巻までを見事にまとめ上げていた。個人的には最初の方10巻ぐらいまでは読んでいたので今作のストーリーは分かっていたが、特に端折り過ぎたり説明不足なところは無かったと思う(脚本に原作者が入っていることもあり)。

2人の友情の熱さから仲間と一緒に戦いながら天下統一の夢!に向かっていく、まさに王道のジャンプ漫画の演出・展開としては期待通りだったのでは。ワンオクのエンディング曲も映画の締めと続編の期待感の高まりに合っていてこれも王道ながらグッときた。

 

ただ、全体的にキレイにまとまり過ぎていて、サクサク進んで見やすく分かりやすいのはいいが、もう少し泥臭く重くても良かったかなと思った。人間の醜さや狡さ、愚かさや弱さ、絶望の淵などの描き方が弱く、戦いでの泥や血や痛みも少なく、現代語の多さにも若干違和感があり。

アクションはスピード感にあふれスタイリッシュな動きで勢いはあるが、個人が斬り合う細かい動作のカットの連続で、俯瞰での全体感が乏しい。今どこでどれくらいの敵を相手にしているのか、どれくらいのピンチなのかを把握できる引きの画がないため、裏で動いている緊迫感が弱く、せっかくの大人数・大舞台のスケールを活かしきれていないのが残念。ワイヤーアクションが露骨に分かるシーンも多く、ラストの実質的なラスボスとの闘いでは、坂口拓の最強オーラと洗練された動きが、どう見ても山崎賢人より上回っていて負けるようには思えなかった。

 

また、緊迫した生きるか死ぬかの戦いの中で、人物が決めセリフを長々と喋っていて、周りがそれを棒立ち状態で待っているシーンが多く、不自然に感じられた。山の民は数百年にも及ぶ負の歴史を持つ抑圧された民族なのに、彼らの苦しみや怒りや憎しみをセリフだけで語られても共感が薄くなり、和平交渉も最後の命を懸けた協力への展開も説得力がなかった。

観ていて三国志の戦いと言えば、懐かしのジョン・ウー監督「レッドクリフ」を想い出したが、10年以上の前だけど改めてそのスケールの違いも感じてしまった(そりゃ100億の製作費だし)、演出ではやはり原点である黒澤映画の凄さも実感させられた。。

 

役者は少し差はあるもみんな頑張っていたのでは。

山崎賢人:今までラブコメ実写ばかりだったけど、ようやく脱皮できたのかな、体重も10キロ減らしてジョジョよりも気合が入って良かった。が、どうしても粗暴なヤンキーっぽい感じが抜けず、これは演出側の問題だろうがひたすら叫び・怒鳴り続ける単調なセリフ回しが痛かった。冒頭からの成長の変化をあまり感じられず表情などの機微も読めず、一面的なキャラになってしまったのは残念。

吉沢亮一人二役を雰囲気や声の差で絶妙に演じ分けて、微妙な顔の動かし方からセリフ読みに至るまで変化をつけて主人公並みの存在感。とにかくその凛とした表情の美しさと後の皇帝につながる魅力に溢れていた。

長澤まさみ:美し過ぎる、こんな色白美人な山の民首領はいないだろうが、とにかく美脚と戦いで魅せる太ももを見るだけでもこの映画の価値はあり。

※橋本環奈:可愛いけど、こっちの路線の方が向いているのかも、本拠地へと案内するという役割だけなので微妙な位置づけ、当初は報酬目的だったのに、なぜ仲良く味方になったのか演技から読み取ることができなかった。

大沢たかお:漫画はもっと大柄でがっちりしているが、体重13キロ増やした肉体作り、垂れ目気味で穏やかな顔ながら冷静沈着な強かさ、頼もしい存在感は見事だった。それよりも高めのトーンのオネエ系のセリフ回し「んふっ♪」が頭から離れない。。

あとは原作どおりの本郷奏多、悪役としての歪んだ性格が表情と目つきで伝わってくるし、少年らしいあどけなさが最後に露呈する脆さも表していた。坂口拓はさすが圧倒的な剣豪としてのオーラがアクションに凄味を生み出していた。

 

原作漫画は継続中で、今作が5巻までなので、今後の登場人物や魅せ場を考えるといくらでも続編は作れるはず・・まあヒットしたので間違いなくやるだろうけど(ソニーさん引き続きお願いします)。今作のキャスト陣の再現度や舞台のスケールは申し分ないが、人物の心情に寄り添わせる演出やアクションの魅せ方など映画としてはまだまだ修正する要素もあり・・次作ではより一層の予算をかけ、工夫を凝らしたよりスケールアップした作品となることを期待したい。全員揃った三国志アベンジャーズまで是非!