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「ブライトバーン 恐怖の拡散者」 ★★☆ 2.5

◆スーパーマンの反抗期に中二病をこじらせたら・・プライド爆発でオー面倒くさい「BAD GUY」に変身、思ったよりグロいシーンに注意、最恐の高い高いばばあー! 

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「もしスーパーマンが邪悪に育ったら?」という今までのヒーロー映画では省かれてきた少年期の成長過程について焦点を当てた作品。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガンがプロデューサーとなり、デビッド・ヤロベスキー監督によるヒーロー映画とホラー映画を組み合わせたほぼB級に近い作品。

物語自体は「オーメン」と同じ展開で、スーパーマンのホラーパロディとしてアイデア自体は悪くないのだが、演出もストーリーも脚本も総じて薄っぺらいのが残念(「スーパーマン」の事前知識があった方が楽しめる)。完全にジェームズ・ガンの好み爆発で中二病感が強すぎ、R指定でないのが不思議なほどかなりグロく、人体破壊描写は強烈で苦手な人は注意、予告でもあった目のシーンは目を背けたくなるはず。

 

キャラの動機付けが弱く、親子間の絆も上手く描かれていないのもあり、結構ありきたりで先が全部読めてしまう、「スーパーマン」のクラーク・ケントが間違って邪悪な夫婦の元に届いていたら?と考えてながら見ていて、改めてジョナサンとマーサの親としての偉大さを感じたし、クラークの思春期も見て見たかった。。

おそらく思春期なりの多感さが原因で抑えきれない衝動の方をもっと深く描いた方が良かったのでは、面白くなりそうな設定や要素はあったので勿体なかった。まあ、親子・家族愛とか少年の成長への葛藤など無いに等しく、潔く邪悪さだけに特化した90分のシンプルなストーリーで魅せてくれるのは清々しくさえあるのだが。。

 

※ここからネタバレ注意 

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【(ネタバレ)演出・考察】

息子ブランドンの覚醒してからのスプラッター化はやりたい放題で、あの眼球にガラス片が突き刺さってから破片を抜くまでの動作をちゃんとビジュアルとして映像化したのは凄い、血の出方といいリアルなイタさ。また、車を縦にして頭から突き落とすというダイナミックな方法で、顎が粉砕し口から下が外れてダラーン状態(死んでなさそうなのがまた辛い)のキモイ悪さ。父親カイルは背後から頭に発砲するも傷一つ負わず、まさにスーパーマン同様の“目から赤いビーム光線”で頭部に穴が開いたり容赦なくグロさを魅せるのは良かった。

 

ブランドンが邪悪に変身していく動機や理由が明確ではないので、いまいち共感できない・・思春期の体の変化、湧き上がる衝動の最中に現れるスーパーパワー、好きな子に避けられ、友達にいじめられ、両親には裏切られてと最悪の状況が重なったら怒りが爆発し、最強になってみんなを見返したいと思う気持ちも分からなくはないが・・

両親からは愛され何の不自由もなく生活できていて、皆殺しにするほどの理由には程遠く普通に意味が分からない。世のため正義のために使わないのは別にいいけど、反抗期を超えて完全に拗らせ過ぎで「ぼくは特別ですけど何か?」悪意の精神が満ちて破壊を抑えられないのは明らかにやり過ぎ。自分のサインを残したり、ダサい手作りコスチュームを着たり承認欲求もいっちょ前にあるし。

一体何がいけなかったのか?のレベルではなくて、力の覚醒と共に邪悪さが一気に爆発していることもあり、結局「宇宙人としてそういう種族だったから」としか言いようがない。多少は人間の感情?として善と悪がせめぎあっている感は残ってはいたようだが・・

ただ、ダメ押しは父親の性教育だったのかもしれない、息子が性に目覚めたと思って狩猟に行った時に雑な知識とアドバイスをしたのが、完全に裏目に出たような気がする(その時のブランドンの表情が「何をふざけたことを言ってんだこの親父は」的な何とも言えない感じが笑ってしまった)。

 

また、スーパーパワーが圧倒的すぎて、戦う以前に成す術がないので恐怖もなくただ殺られるのを待つだけ、生き延びる可能性を感じないのも面白さに欠ける・・人間の銃ごときではなく、対抗できる敵がいないとドラマ的につまらない(次作に引っ張っている?)

ブランドンを演じた“ジャクソン・A・ダン”は、子どもにしては可愛げのない顔つきや佇まいが素晴らしく、覚醒後の「もうイッちゃってる不気味さ」も上手く演じ分けていた(アベンジャーズ/エンドゲームでアントマンが若返った時の少年役だったとはビックリだが)。

エンディングで流れるビリーアイリッシュの「bad guy」はアゲアゲで最高だった、これは拡散者になるだろうが、今作のサブタイトルをなぜ「恐怖の拡散者」にしたのだろうか?、ラストも一方的に破壊しまくるだけで、恐怖の拡散という表現は全然ピンとこないのだが・・今作は日本で映画事業に参入した楽天の配給作品第一弾「Rakuten Distribution」の作品として拡散者にしたかったのか?

 

【(ネタバレ)ラスト・考察】

サプライズ溢れる展開とオチが用意されているわけでもなく、父親の次に母親まで殺して完全に人間を卒業して覚醒完了、世界各地をやりたい放題大暴れ・破壊しているニュースが流れながらのエンディング(何の怒りからなのか?、ただの侵略者になったのか?)。

ラストの母親を抱えて上空に飛んでいって向かい合って静止するシーンは「マン・オブ・スティール」のスーパーマンの象徴的な構図と同じだったが、そこから地上に放り投げるのは容赦なく後味も悪くて良かった(まさに「高い高いばばあー」と力関係の逆転)。

ほぼ予告動画で作品の見どころを全て出し尽くしている感があり、やはりヒ一ローや対抗馬のいない世界が無いのはツライ。続編があるかどうかは分からないが(終わり的には作る気マンマンのようだが)、次作ではヒーロー?が出てきて戦ってブランドンが勝つ展開になるのか?、どこかの惑星の王子として迎えに来て敵と戦う展開になるのか?、意外と>普通に反抗期が終わって青年期としての青春物語になったりして・・