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「コンフィデンスマンJP」 ★★★ 3.4

「最後に笑うのは誰だ?」目に見えない真実の世界の中心でエンタメを叫ぶのダーこんなに振り切った長澤まさみにならボクちゃんも騙されたい?「男と女のラブゲーム♩」

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お約束のフジテレビ・月9ドラマの劇場版、「キサラギ」「リーガル・ハイ」などの人気脚本家・古沢良太の新作コンフィデンス・ゲーム(信用詐欺、騙し合い)もの、監督はTVシリーズと同じ田中亮監督。いつものダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)が今回ターゲットにしたのは香港マフィアの女帝ラン・リウ(竹内結子)が持つ伝説のパープルダイア、そこに以前ダー子と組んでいた恋愛詐欺師ジェシー三浦春馬)が絡みながら予測不能な展開になっていく。

テレビドラマは何話か見ていて、さすがの古沢良太脚本らしく面白かったので、映画版になってどこまで拡げて騙してくれるか否が応でも期待してしまう。ラストは必ずどんでん返しがあって絶対にダー子側が勝つというのはドラマを見ている人は分かっているので、どこで裏切られるのか伏線を含め見ていた・・結果、想定の範囲内ではあったが、まあ普通に面白く楽しめたのは良かった。

 

映画的に優れているかどうかと言えば、やはり2時間ドラマスペシャルの範囲内の商業映画としか言えないけど、ドラマシリーズに出てきた人たちも集合しつつ、巧妙な古沢脚本の爽快などんでん返しエンタメ作品として誰もが分かりやすく楽しめる作品ではある。何となく予想できそうな伏線が当たってくる楽しみと、その予想を上回る隠れた驚きとのバランスも良い。ドラマを見ていなくても楽しめるが、やはりテレビドラマのファンムービーなので知っているとより楽しめる内容であるのは間違いない。

このテンポとノリの良いコミカルで華やかな空気感は(良くも悪くもフジテレビっぽいし90年代も感じる)、今の生き辛い閉塞感を打ち破ってくれるし、何よりコメディエンヌとして確固たる地位を築いた感のある長澤まさみの魅力が全開で、この可愛さには確実にやられるはず。

「目に見えるものが真実だとは限らない、人は信じたいものは全て作り出せる」、 目に見えない真実の世界の中心にエンターテイメントがあるのかもしれない。

 

【演出】

ドラマ版に負けず劣らず凄く入り組んだ脚本で、ちゃんとロマンスとのメタ構造になっているのはさすが、ただドラマ版より伏線の貼り方が細かすぎて広すぎて、映画自体のテンポが少し良くなかった(特に前半)。ドラマだから目をつぶれたB級感や作戦の荒唐無稽さは、金を払ってみる映画としてリアリティを求めすぎると厳しく、簡単に騙され過ぎてご都合主義としか思えなくなるので注意を。あくまでもB級として騙されるどんでん返しの爽快さを楽しむべき。

個人的にはここまでコメディに振り切ってるいるなら、もっと畳み掛けるように笑わせて欲しかったのと、映画ならではの展開がもう少し欲しかった。せっかく香港を舞台にしているのに、香港の風景と空気感をキレイに撮っているだけで、香港らしいエピソードや捻りがほとんど響いてこなかった。最初は香港市民の暴動から始まったので、政治問題の時流にも絡めてくるのかと思ったが、実際の抗議デモとは全く関係なくて何だったんだろう・・ まあ、途中でジャッキーちゃん(本物チェンでは無い)が出て来たり、ジョン・ウーっぽい演出には香港映画リスペクトがあったのかもしれないが。。「ゴースト」や「ローマの休日」の名場面の大ネタは分かりやすく笑えたかな。

 

今作が気に入った人は、ぜひドラマ版などでオマージュを捧げていたコンゲーム映画の原点である傑作「スティング」を見て欲しい、気持ちよく騙されて、ポール・ニューマンロバート・レッドフォードのカッコよさに惚れるはず。

今作の三浦春馬もカッコよすぎた、あれでアプローチされたら誰でも惚れてしまうやろー(落ちたら終わるけど)。あとラストで小栗旬がまさかのチョイ役で出てきたのは驚いた(贋のダイヤモンドを製作する職人)。

何気に劇伴が fox capture plan TBS「カルテット」もやってた)でオシャレで良かったし(Stingの「Shape Of My Heart」っぽいのもあり)、主題歌はTVシリーズからと同じくOfficial髭男dismで「Pretender」も良い曲(祝!紅白出場、このドラマがキッカケでブレイクしたと言ってもいいのかな)。

 

※ここからネタバレ注意 

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【(ネタバレ)ラスト・考察】

ドラマは観ていたので、最初に赤星(江口洋介)が出てきた時点で役者的にもドラマ的にも赤星が最終ターゲットになるのは予想できるので、後はジェシーかラン・リウのどちらが協力者なのかを気にしながら見ていた。モナコがスパイなのは登場時点で分かるのでモナコが誰とつながっているのか(いなくてもいい場所にいる)を考えるとジェシーだろうし、ジェシーが協力者でダー子とロマンスになる訳も無いから、必然的にラン・リウが協力者なのだろうと思っていた・・結局この脚本は全て「モナコ=観客」に向けられて設定されていたのだが良く出来ていた。

そもそもラン・リウが正体不明の人物の設定なので何かあるのは間違いないし(ダンナも怪し過ぎるし)、香港であんな組織を作って騙すのはさすがに無理があるけどこのドラマなら全然ありえるし(笑)。あの怪しい眼帯のおばちゃんが何者かと思っていたら本物のラン・リウだったとは、でも勝手にラン・リウを名乗って利用したら、すぐバレてどう考えても普通にすぐ消されると思うけど・・

赤星とのゲームを楽しむ手紙やジェシーが情けない小物に成り下がるところも良かった、実は赤星が一番まともなイイ奴だったという。。

いちおうエンドロール後にもお楽しみ?があるので、最後まで見るべし。

 

彼らは全員あくまでも「お金」が全てであり最終的に「お金」が手に入ればいい、「正義」という概念を表に出さないことで逆に正義や悪を考えさせられているのかもしれない。「何を信じればいいのか分からない」「目に見えるものが真実ではない」時に、最後に頼れるのは「自分が信じられるものが真実」ということ、例えウソだったとしても、自分がそれを信じて幸せだと思えるならそれでいいのかもしれない。

「恋は、いつだって自分を欺くことから始まり、他人を欺くことで終わる。これが世間でいうロマンスというものである」、結局「恋愛」とは実体のない「愛」を相手に信じ込ませるための、相手の「愛」を信じるよう自分を騙し込むためのコンゲームということか・・金だけでなく心まで奪う恋愛詐欺師が1番たちが悪い!

既に来年の5月に続編が決定しているようだが、パターン化している感もあるので、どこまでコン詰められるか期待して待っていたい。おそらくまた事前にスペシャルドラマをやって、そこから事前に自然にトリックを仕掛けてくるのでは?