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「IT イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。」 ★★★☆ 3.6

◆「ディス(リ)・イズ・イット」青春ダークSFファンタジーキング映画、漫画太郎と遊星からの物体ITとスターシップトゥルーザーズ、信じることさ必ず最後にそれに勝つ♩

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スティーブン・キングの小説「IT」を映画化し大ヒットしたホラー「IT イット “それ”が見えたら、終わり。」の続編にして完結編、監督は前作から引き続きアンディ・ムスキエティが、脚本も人気ホラー「死霊館」シリーズのゲイリー・ドーベルマンが続投。前作から27年後が今作の舞台で大人になった「ルーザーズ・クラブ」の各々が再び「それ」と対峙する様を描く。

個人的には前作も大して怖くなかったが今作は前作以上に怖くなかった、いわゆる突然の”わっ”とくる脅かし系で音も含め脅かし方が一辺倒、絶対にここでくるなと思うところでベロベロバー状態・・途中でビルが「もう慣れてきたな」と言った時はまさにその通りすぎて笑ってしまった。

暗闇に潜むピエロの顔でこれから何が起きるか分からないジワジワ感が少なく、ピエロよりもクリーチャー的な気持ち悪さとグロ描写が多かった感じ、SFコメディ、ホラー、青春、恋愛、アクションといろいろな要素とシチュエーションで3時間は長かったけど何とか観られた。

 

基本はホラーと言うより、大人になったメンバーが子供時代を振り返り過去の記憶とトラウマにケリをつける「スタンド・バイ・ミー」であり、必要悪のペニーワイズを介した大人の青春映画、良くも悪くもスティーブン・キング映画となっている。前作の魅力は少年少女たちのジュブナイル成長譚&青春の輝きにあったが、今作で子供たちが広げた風呂敷を大人になった彼らに全てキレイに折り畳ませるのはやはり無理がある。

それでも各メンバーの子供の頃の回想シーンで同じ場面が挟まれるとノスタルジックになれるし、よりルーザーズのキャラクターが深掘りされていくのは良かった。大人になったルーザーズ・クラブを演じるのは、ビル役がジェームズ・マカヴォイ、ベバリー役がジェシカ・チャスティンとまさかの豪華キャストでビックリ、あの子供たちが大人になったらこんな感じになるだろうと想像できる上手いキャスティング(昔のふとっちょは大きくなったらイケメンになるのは定番か?)。

いちおうR指定になっているが、あの手この手でルーザーズを怖がらせようと一生懸命奮闘してるペニーワイズが、だんだん可愛く面白くなってくるので、家族みんなで怖がりながらも楽しんで観るのもいいかも・・

 

※ここからネタバレ注意 

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【(ネタバレ)演出・コメント】

ペニーワイズの強さの秘密や恐怖の源を解き明かすため、それぞれ7人分の過去のエピソードを盛り込んでいくのはさすがに3時間は長くてテンポも悪い。ホラーシークエンスを単につなげただけで物語として「線」になっていないので、逆にNetflixなどで全10話くらいのドラマにした方が良かったかも、一本の映画としては前作の方が完成されていたと思う。

残念だったのはピエロとして理不尽な残酷すぎる殺しが少なかったところ、万人受けを狙ったのか人によって見た目や攻め方を変えてしまってどれも中途半端な感じだった。ペニーワイズもはっきり見せすぎで、演じているビル・スカルスガルド自体がイケメンなのを隠しきれないので怖くないのもどうかと思う。

個人的にはベバリーが訪ねたババアが最高、見た目は完全に漫画太郎の画だし、お茶を淹れてる時の定点カメラで映す全裸のダンシングババアが強烈すぎて笑ってしまった。あとはメンバー全員が再会して中華卓で食べながら昔話してるところの怪奇シーンやポメラニアンのシーンも良かった。

何気にリサイクルショップの店長としてスティーブン・キング本人がカメオ出演したのは驚いたが(ビル(=キング自身)の小説の結末が酷いことを認めている)、序盤に出てくるグザヴィエ・ドランはあんな役で良かったのか?

 

【(ネタバレ)ラスト・コメント】

オリジナル版の後半のグダグタをどう覆すのかがポイントだったが、ラストは可もなく不可もなく伏線も回収しつつ大団円でまとめきった感じ。結局ペニーワイズ自体の正体は明確にされず不完全燃焼だったが、あの恐怖の舘でみんなで団結して打ち勝っていくシーンは前作と同じく感動して泣けてくる。

なにか邪悪なものが人々の恐怖心などを餌にして得体のしれない「それ」が出来上がったと思っていたが、今作のラストの戦いを観ると「それ」は太古の昔に現れた謎の生命体(宇宙人?)としか思えなくなる(最初に先住民族が出てきた時にアレと思ったが)。悪魔?光?隕石?恐怖心?謎のまま。

マイクが調べたペニーワイズの封印方法で倒すのかと思いきや効かず、何も無くなった時に自分を信じることだけしかなく・・まさか言葉で罵って小さくしていって心臓ぎゅっと握り締めて殺すとは予想外、こんな死に方でいいのか物足りなさも感じてしまった。

弱い存在(子供)を怖がらせることで自分が強い存在であると認識することが、ペニーワイズのエネルギー源だったからこそ、それを自分に自信を持った言葉でひたすら罵りまくってコテンパンにすることで小さく萎ませられたのだろう。子供の口ケンカのようなフルボッコのディスリ(ラッパーのフリースタイルMCバトルにしても面白かった)の畳み掛けは、敵ながら可哀想にすらなってきた(言葉のイジメ・ダメ・絶対)。

 

クライマックスの変わらなかった友情と思い出を燃やすところ、その後それぞれの世界で頑張っていく未来が見えたところはグッときた。何気にショーウインドウに彼らの姿が映った時に死んだスタンの姿も見えたのも涙(スタンの死があったからこそ繋がりが強くなって一緒に戦っていた)。「ルーザーズ」は「負け犬たち」から「失った者たち」として団結してペニーを自分自身を乗り超えたのだ。

子供の頃の嫌な記憶と向き合うことは大人になってからの課題であり、トラウマを克服することの難しさと一歩を踏み出す勇気の大切さを改めて実感させられた。「忘れたい記憶ほど残るし良い記憶ほど忘れてしまう」のも納得。

「自分を信じて自信を持って自分らしく生きていくこと」、そうすれば「それ」には出逢うことはないのだろうが、いつ赤い風船やピエロが目の前に現れても立ち向かえる想像力と勇気と仲間を大事にしていこう。。