映画レビューでやす

年間500本以上観る会社員のありのままのレビュー

2022年 洋画ベスト

◆2022年もたくさんの映画を観てきました、映画館での新作はもちろん旧作・B級含めレンタルやネット配信(AmazonPrimeやNetflix含む)、テレビ放映など合わせてざっくり500本ほど。

そのうち2022年1月~12月公開の作品の中から、洋画・邦画に分けて独断と偏見で【ベスト20】を選んだので発表していきます(順位はその時の気分で変わるし、残念ながら見逃した作品もあるので見たら更新するかも?)。

 

ちなみに昨年2021年の洋画ベストはこんな感じでした。さて、今年はいかに?

 

 

 

 

【第20位】「MEMORIA  メモリア」 

監督自身が経験した“頭内爆発音症候群”から着想を得た作品で、植物学者が断続的に繰り返される「音」の正体を探っていく物語だが、アピチャッポン監督らしいまさに理解するより感じる映画、他人の夢の中に入り込んだような奇妙な感覚での摩訶不思議で心地よい映像体験が味わえる。ティルダ・スウィントンの存在感とコロンビアの美しい原生的風景のマッチング、いつ鳴るか分からない音の不穏さ全開のなか変態的な長回しでも緊張感を持続させる独特なリズム感がクセになる。が、SF、サスペンス、ヒューマンドラマを超えて誰も見たことのない言葉では表現できない精神世界なので、よく分からず瞑想モードで寝落ちする人も多いだろう(2001年宇宙の旅タルコフスキー作品に近い感覚)。
言語での対話が難しく軋轢が多い時代に外国語、ダンス、音でしかできないコミュニケーションを呼び戻す、「音」が主役となって謎の音に導かれ、その音は人それぞれ感じ方が違うため言語化するのが難しいのを一緒になって翻訳していく。人間の内側、分からないものを想像しながら記憶の波動とチャネリングを図る・・最後の瞬間に何をどう感じるか? 過去と未来、空と大地、自然と人間がつながる、あらゆるものの意識や記憶を音として捉えて妄想の深淵に降りていく・・感覚が研ぎ澄まされて観た後に外に出てみると今まで見えていなかった・聞こえなかったものを感じられるかも?

 

 

 

 

【第19位】「ギレルモ・デル・トロピノッキオ」 

長年温めてきただけあってまさにギレルモ監督独自のピノッキオ、ムッソリーニファシズムが台頭する1930年代のイタリアを舞台に監督らしいダークな世界観でミュージカル形式のストップモーションアニメとして蘇らせた。近年なぜかピノキオ作品が3本も公開されたが、反戦や命の重さを訴えかける今の時代ならではの本作がベスト、戦争下の子どもは「パンズ・ラビリンス」が思い出され、いつものフェチぶり異形の者への愛を始め監督の集大成としても見られる(グロさは弱めなので安心を)。
ちょっと怖いキャラデザインもストーリーも歌も映像作品としてクオリティが高過ぎ、手作りの温もりと細部に拘りぬいた繊細な表現でCG技術が当たり前の時代にクリエイターの創作魂を刺激されたのだろうか。完成まで15年を費やしたこだわりを描いた舞台裏のNetflixのドキュメンタリーも必見。息子を失った父、その息子になりたい異形の少年との家族のカタチ、戦争と喪失、永遠の命より大切なもの、愛する人と過ごす時間、生と死、人生に意味を与えるものとは?ラストまでつながる人生における教訓が詰まった大人向けのアニメ(アカデミー賞アニメ部門は決まりかな)。歳を重ねて老いていくことは幸せなこと、それが生きるということ。

 

 

 

 

【第18位】「西部戦線異状なし 

アカデミー賞を受賞した有名過ぎる1930年の映画版を原作の母国・ドイツで改めて初めて映画化したNetflix配信の戦争ドラマ、本作も今年のアカデミー賞にノミネートされており高い評価中。とにかく戦場の最前線に放り込まれた臨場感と迫力はもちろん、痛みや恐怖や狂気がリアルに伝わってくる、ひたすら前線で無意味に無残に命を落としていく若者たちの凄惨な最期が描かれていてかなりの悲惨さと不条理さが増した反戦映画となっている。撮影、音楽、インサートカットやロングショットも素晴らしいセンスで映像は美しいが、本当に憎くて殺したいわけじゃない命がけの仕事感で命令に従うしかない姿が辛くてしんどかった。
銃を持たない指令層の人間のエゴや上司の誤った判断によってすぐに戦いを終えられない理不尽さ、あと30分早くすれば・・一部の政治家や軍人のプライドや野心の都合で若者の命が軽々と失われ特に気に留めない虚しさと怒り。エンディング「数百メートルの陣取りに4年かけていた・・」ほとんど動かなかった最前線の膠着状態(300万人の死者)を「異常なし」で済ませていいのだろうか・・100年後の今も同じ悪夢が起こっており、人類は過去を省みず何も学ばない、戦争を繰り返して今この時も現場で命を落としている現実には言葉が出ない。

 

 

 

 

【第17位】「秘密の森の、その向こう」 

前作「燃ゆる女の肖像」で恐ろしい才能を見せつけたセリーヌ・シアマ監督の新作は、8歳の双子姉妹(可愛すぎ)を主人公にコロナ禍で限られた制限の中、最低限のスタッフで2週間で撮りあげた73分のファンタジー作品。祖母が亡くなりその家に来た少女が森を散策して自分と同じ歳の8歳だった頃の母と出会い親友のような時を過ごす物語、静かに穏やかに淡々と進むのでおそらく寝落ちする人も多いだろうが、とにかく一切の無駄がない完璧な尺と世界観だった。実家で両親の子供の頃の写真を見ていろいろ想像したことや田舎での昔のことが懐かしく甦ってくる、フランスならではのおしゃれな過ごし方と大人びた感じは全然違うけど(笑)。
奥行きのあるカット、シンプルな室内と美しい自然、セリフの最小限で仕草や表情で丁寧に伝わり、BGMもほとんど無く心地よい時間、誰に視点で見るかによっても感じ方が変わってくるかも。ジブリ作品に影響を受けたらしいが、「みつばちのささやき」を彷彿とさせるドライなリリシズムと深い愛情が全編を貫き、リアリズムとファンタジーのらせん構造に3世代の女性の物語が絶妙に織り込まれている。大人もみんな最初は子どもだったことを忘れないで・・自分の子どもは昔の自分と一緒に仲良く遊んでくれるだろうか>

 

 

 

 

【第16位】「セイント・フランシス 

何者にもなれない人生の壁にぶち当たる34歳の女性ブリジットが同性カップルの6歳の娘フランシスの育児をすることで成長していく物語、軽妙な会話劇の中で中絶や生理など思いのほか血がドバドバな感じが凄かった(ここまで生理を描いたのは凄い、男性から見ても参考になった)。性別、ジェンダー、人種、宗教、学歴、産後うつ、育児など女性ならではの差別や抑圧、それに対する女性の連帯を描きつつ、強い意思を示したエンタメ作品として完成させているのが凄い。
これだけの重いテーマをユーモアたっぷりに驚くほど赤裸々に年齢や肌の色も超えたシスターフッドまで重層的な要素が積み重なっている、自由奔放でいい加減な主人公に好みは分かれるがもしれないが、人生に焦り悩み疲れている方にはおススメ。ブリジットは拗らせ女子より根っからのリアルなダメ女な感じがまた良い、成長したのもちょっとだけで今後の人生が上手く回っていくのかは分からないけど、このフランシスと過ごしたひと夏の想い出とラストの約束があれば前向きに生きてはいけるはず。とにかくフランシスの可愛さと言葉に撃ち抜かれること間違いなし。

 

 

 

 

【第15位】「ウエスト・サイド・ストーリー」 

多くの移民が暮らし対立が激化する1950年代のニューヨークを舞台にした不朽の傑作ミュージカル、巨匠スピルバーグが積上げた経験と最新の技術で念願のリメイク。ロマンチックな歌唱シーンや緊張感あふれるナイフの決闘シーンなど細かいこだわりの演出、音、光と影、衣装など時代を感じさせない正統派としての映画のあり方、ベテランならではの上手さが際立っていた。もともと持っている本質的な悲劇を強調しながら女性陣から見た視点、移民や人種間の対立の現代も続く問題を描く、現代的な翻訳での見事なアップデートでオリジナルへの愛が伝わる忠実さはあるが、真っ当すぎて若干面白みに欠けるところもあり。
躍動するダンスシーンでの俳優を俯瞰から映していく構図やセットを最大限に活かしたカメラワークが計算し尽くされていて、現代ならではの撮影技術の最高峰に惚れ惚れした。旧アニータのリタ・モレノの出演も嬉しいが、新アニータのアリアナ・デボーズが飛び抜けて素晴らしくアカデミー助演女優賞も納得、アンセル・エルゴートの古い質感の歌声も良かった。ストーリーは古典的なロミジュリ話だが、どうすればこの悲劇を防げたのか>争いは悲劇しか生まないのは今も変わらず・・

 

 

 

 

【第14位】「アネット」 

ゴダールが亡くなった今年、同じ革新的な映画作家レオス・カラックス監督の10年ぶりの作品は寓話的なダークミュージカル映画であり救いでもあった。ともに有名なコメディアンとオペラ歌手が電撃結婚し不思議な女の子アネットが生まれるが、そこから人生の歯車がズレ始める・・先ず赤ちゃんが人形なのを始めさすがというか見たことのないストーリー・映像・音楽(オープニングとラスト含めSparksが良い)の独創性と強烈さ、不穏で不気味な違和感を感じつついつの間にか心地よくなる不思議な感覚。カラックス監督なので好き嫌いは分かれるが何かすごいものを見たい人はぜひ(過去作より分かりやすいかも?)。
基本は男女のイザコザなのだが、冒頭の長回しの高揚感と幸せな時から堕ちていく闇の中、悲劇的物語を幻想的に魅せる演出で大波に漂い呑み込まれていく。マリオン・コティヤール(過去にオペラ歌手を演じてるので歌も完璧)とアダム・ドライバー(またゲス男が似合う)の狂気と歌も最高にイカしていて、愛の歌から暗闇を覗くなと喪失を歌うラストシーンまでのつながりが素晴らしい。愛の結晶であり未来の希望である子どもが父の操り人形となる隠喩表現の意味、人間が人形に人形が人間に見えてくる凄さ、何気に古館寛治や水原希子もチラ見出演していてビックリ。。息すらも止めてご覧ください。。
  

 

 

 

【第13位】「戦争と女の顔 

戦後のレニングラードを舞台に戦争に従軍し心と体に深い傷を負った二人の女性の過酷な運命を描く、ノーベル文学賞を受賞した作家のノンフィクション「戦争は女の顔をしていない」を原案とした戦わない芸術的な戦争映画。長編2作目の監督、劇伴なしでたっぷりと間をとったロングテイクとクローズアップを多用する大胆な演出、臨場感たっぷりのカメラワークに鬼気迫るカット、緑と赤を巧みに配した色彩のセンスで鮮烈な印象を植え付ける。終始重く辛く見終わってどっと疲れるが今のタイミングでロシアで公開された意味も含め観るべき作品(ウクライナキエフ出身のプロデューサーとともにカンテミール監督もロシアから脅され国外脱出している、上映禁止・排除)。
戦争シーンは一度も出てこないが、女性が抱える葛藤や戦地に赴いた困難さ、日常の中に侵食してくる感じ、説明を避けながらも簡単に癒えることのない傷の深さやPTSDなど戦争の悲惨さが痛いほど伝わってくる。終戦後も人生は続いていく、国も男性もボロボロで女性の苦しみは誰も理解しようとしない、英雄になるのは男性だけで女性の存在は無かったかのように振る舞う世間の冷たさ。この作品を1991年生まれの若いカンテミール監督が撮った意義も深く、また2人の主人公を演じた若い女優も映画初出演とは思えぬほど素晴らしかった。緑のセーターから最後の赤いニットの意味、エンドロールも秀逸だが苦しくもあり、今のロシアを見る限り当時の彼女たちの願いが叶えられたとは到底思えず、これからも終わらない埋められない悲しみや苦しみが続いていくのだろうか・・

   

 

 

 

【第12位】「わたしは最悪。」

医学生から作家に転身した30歳のヒロインを中心に若者の不安や混乱をリアルに独創的に描く、仕事・恋愛・結婚など選択肢の多い今の世界で自分が人生の主人公になるにはどうすればよいのか? いろいろな失敗から投げやりになったり迷いながらも決断を下していく姿を、人間としてダメな嫌らしいところを曖昧にせず生々しく描いている。人によっては自分勝手な生き様に見えてイライラ・ムカつくかもしれないが、個人的には最悪とまではいかない主人公の迷走する姿が愛おしかった。自分の人生は自己中心で当然だし、意思を貫くために他者を傷つけざるを得ない時もある、悪意はなくその時に自分なりに考えて出した答えだし、安定より冒険を選ぶ彼女は羨ましくも思う(友達なら面白いけど恋人には辛いかな)。
北欧オスロならではの美しい映像や章立てしたストーリー展開は抑揚もあってテンポが良い、依存したいけど依存されたくない感じで出てくるセリフが同じ30歳前後の葛藤している人たちに響くはず。最悪な自分を最高と言ってくれる人に出会えるかどうか? 人生は選択の繰り返しで合っているかは過ぎてみないと分からない、先を考えても過去を悔やんでも仕方がないから全てがつながる今を大事にするしかないのだ。感情がむき出しになる瞬間、凍てついた街を駆け抜けるシーンが印象深い、ラストも皮肉感がありこれもまた人生かと。

 

 

 

 

【第11位】「カモンカモン」 

9歳の甥と共同生活をすることになった孤独な男がふれあいを通して自分を見つめなおしていく、単なる子育て映画ではなく人生の本質や死生観まで普遍的なテーマを子供目線から考えさせられる哲学的な作品、子育て経験のある人は一層共感と哀愁を感じるはず。マイク・ミルズ監督の優しいまなざしによって、全編モノクロながらどのシーンも豊かな色彩で溢れているかのよう、光の美しさにカメラワーク、新しいのにノスタルジー、シンプルでスタイリッシュ、まずます磨かれている。この頼りない叔父さん役をジョーカーの次に演じる体型ふっくらホアキンもハマり役だが、独特な感性を自然に演じている子役のウッディ君も素晴らしい、二人の掛け合いの愛おしさと関係のバランスが良かった。
子供は思ってる以上に大人で柔軟で吸収が早いし言うことが真理を突いている、人生の物事の本質を良く見ている、改めて大人も子供も関係なく対等に向き合って自分に素直になるべき。子どもに対して当事者性を持つ大切さ、子どもを育てるとか守るとか何が出来るかを考えることは父性や母性を超えた義務みたいなもの、大人が次の世代に責任が持てるような社会にすること、そういう大人にならねば。「君の話を聞かせて、大丈夫じゃなくても、大丈夫」「起きると思うことは起きない、考えもしないようなことが起こる、だからどんどん先へ進むしかない、先へ、先へ」
   

 

 

 

【第10位】「TITAN  チタン」

幼いころ交通事故で頭骸骨にチタンプレートを埋め込まれた女性の狂気の愛の変奏曲、想像以上のエロ・グロ要素満載で女性ならではのユーモアとロマンチックさを武器に描く強烈な映像体験、とにかく人を選ぶ(嫌い・ダメな人の方が多い)が気づけば夢中にさせられるはず。こんな今まで見たことのないぶっ飛んだ超問題作がカンヌのパルムドール受賞するとは審査員偏り過ぎ(笑)。殺人はもちろん自分を痛めつけるなど痛々しいシーンの連続と車との性交シーンのシュールさ、前作の人肉食テーマの「RAW」よりジュリー・デュクルノー監督の異常性や偏愛が増していて今後どこに向かうのやら・・
グロテスクなホラー描写が多いが、娘と父親、幼少のトラウマによる成人の変容、ジェンダーアイデンティティ、それらの暗喩としての痛みを伴う表現を観客の深層心理に突き刺してくる。身体と物体と性が絡み合うのはクローネンバーグ監督(車性としては「クラッシュ」)と比較されるが(少し「鉄男」の金属感もあり)、女性監督であるゆえか変容の描き方が異質、行き場のない不安やカメラワークの不気味さも見事で、普通ならB級になるのを完璧な変態芸術品に仕上げているのはさすが。主演の女優も体当たり演技とかいうレベルを超えてるし、ここまで全てが吹っ切れていると気持ちがいい、衝撃のラストを救済と捉えていいものか・・ 

 

 

 

 

【第9位】「あのこと」 

ノーベル文学賞を今年受賞したアニー・エルノーの小説を映画化、中絶が法的に禁じられていた1960年代のフランスで予期せぬ妊娠をした女子大学生の12週間にわたる苦難を描いた物語、ただ平穏な普通の一日を取り戻すための壮絶な闘いの記録(昨年も「17歳の瞳に映る世界」が同じ題材でベストに入れてた)。ドキュメンタリーのように主人公に寄り添うカメラワークで、誰にも言えず孤独の中でもがく様子が臨場感あふれる、ドラマチックさは無く淡々としつつ目を背けたくなる現実と痛みの描写が緊迫感たっぷりに真っ向から映し出され、一緒に追体験をしているかよう・・覚悟して観るべし。

苦しくて痛くて何度も目を閉じ耳を塞ぎたくなるが、一人に特化した視点や丁寧な描写でディヴァン監督の沈黙と余白を巧みに操り、ゆったりとしたペースから急激な展開で裏切られる気持ちよさもあり。何においても女性の心理的・身体的な負担が大き過ぎる不条理な世界、自分が女性側・男性側だったらどうするか?考えさせられた(全男性が観るべき)。今でも中絶禁止のところがある中、命か未来か・・人殺しという視点での問題はおいても自分の身体のことを自分自身で選択する権利を脅かされている事実を他人事には出来ない。あのこと、あの子と、あの事・・良い邦題かも。

 

 

 

 

【第8位】「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」 

大好きなウェス・アンダーソン監督の雑誌文化への憧れが詰まった新作、贅沢過ぎるオールスターキャストが勢ぞろい、スクリーンがそのまま雑誌のレイアウト構図でアート・政治・料理など小さな短編がページをめくるように進んでいく。モノクロと色彩美、凝りに凝った美術や小品とカメラワークや構図、監督ならではのファンタジー・ユーモア・毒気を織り込み、独特のクセになる世界観は毎度のことながら一つの芸術品として完璧。どのシーン切り取っても一枚の絵画として成立するし、早いテンポのナレーションと共に次々とカットが切り替わっていく編集の妙、ほんと天才的すぎて頭の中を見てみたい。
正直それぞれのストーリーは情報量も多く難解なところもあるが、オシャレで不思議で可愛くて、レア・セドゥとベニチオの裸やマクドーマンドとシャラメの絡みなど豪華俳優陣のスポット使いを見ているだけでも楽しい。決して万人受けはしないがハマる人にはとことんハマる異常なほど計算し尽くされた画面、カオスに見えて完璧にコントロールされているとんでもない映像、アニメまで盛り込んで斬り口が多様なので見るたびに感想も変わる。一度だけでは魅力が把握できないので、小難しい愛読誌のように何度も見たい愛着が生まれてくるのは毎回のこと、今回は特に映画館に行ったのに美術館や図書館に行った感が強かった。

 

 

 

 

【第7位】「トップガン  マーベリック」 

今年最大の話題作・大ヒット作でみんなが大好きで一位にするだろう作品、1986年の前作から36年ぶりとなる続編。冒頭からラストまで何もかもが完璧な作りこみ、CGや特殊効果では味わえない実際の迫力で自分が戦闘機に乗っている没入感、改めて映画館の大画面爆音で見ることの幸福感、久々にハリウッド大作としてコロナ禍で劇場から遠のいていた世界中の観客を呼び戻した功績が大きい。スカイアクションの圧倒的リアリティ、キャラ立ちの候補生たち、シミュレーションの繰り返しによる分かりやすさ、前作ファン感涙の80年代からのアップデートされた視点も含めバランス感が素晴らしい(おじさんリピーター多かったのも当然)。
トム・クルーズが自らの老いを受け入れつつ示した希望が大ヒットとなり映画館を救うヒーローとなる、トム様そのものの生き様ともリンクしている。あの頃の自信と若さに満ちていたアメリカ、その黄昏感を背負って自らの肉体とIMAXカメラを実際の戦闘機に押し込み、8Gの重力に耐えて映画館で観るべき映像を紡ぎ出す姿、戦友が去る中で新しい世代に範を示しタスキを渡す姿に涙。展開は予想どおりで実際にドッグファイトするのは激アツだったが、空爆をはじめアメリカ万歳のナショナリズムと戦争エンタメの強い感は仕方ないが感じてしまったのも事実・・

 

 

 

 

【第6位】「RRR」 

あの「バーフバリ」シリーズの監督が英国植民地時代の激動のインドを舞台に、実在の偉人をモデルとした二人の男の友情と使命がぶつかり合うアクションエンターテインメント作、「RRR(Rise,Roar,Revolt)」。観客を一瞬たりとも飽きさせないという信念、実際に想定の斜め上で驚かされる徹底して見たことのないアクションシーンの連続、嫌でも体が動き出す高速のナートゥダンス、王道の胸アツ展開クライマックスのドラマがこれでもかと続き、張り巡らされた伏線回収も見事で3時間至高の超ド級のエンタメ体験だった。カッコいいと思うものを全力でカッコよく見せる直球の価値観と表現方法が本当に気持ちよく伝わってきて、絶対に映画館の大画面で見るべき、インド二郎系マシマシのメインだけのフルコースをぜひ堪能あれ!
突っ込みどころ満載だけど盛りだくさん過ぎてどうでも良くなるので安心を?、回想シーンや音楽の入れ方も上手く、見終わってもナートゥが流れてくるクセの強さ、テンション上げたい時に最高(でも絶対に踊れない)。製作費100億!かけられるのもすごいがそれに相応・超えてくるのがまた本物のプロフェッショナル。エンディングで各英雄を紹介するのはちょっと露骨すぎかとは思ったが、それぞれのやり方で己の全てを捧げ、虐げられた人々のため理不尽な圧政に抗う姿は今の状況にも響いてくる(ウクライナが撮影地というのも)。

 

 

 

 

【第5位】「NOPE  ノープ」 

空に現れた〇〇が実は〇〇でした・・というB級仕立てを独創的な脚本と悪夢的な映像で描いたジョーダン・ピール監督の新機軸。パニックホラー仕立てながら周到に白人男性観の映画史を黒人側から意義立てて見せる、映画史に裏側にいた彼らが空からの不気味な存在に襲われ、「見世物」としての映画の主人公になる見事過ぎる脚本。絶対に初見では理解しにくい様々なメタファーを、前2作以上に象徴化しワンシーンの中に何重にもレイヤーを重ねた多層的な作品なのでメッセージが伝わらない人も多いかと思う。とにかく考察のしがいがあり過ぎる内容なので好き嫌いは分かれるだろう(NOPE=無理・ダメだ)。
恐怖表現もさすがで、この得体のしれなさは自身のアイデンティティや社会との違和感から現実に体験したからか?「見るー見られる」の一方的な関係が「搾取」の構造の根源を踏まえた上で差別や格差などの問題意識から立ち向かう最後の決戦の熱さ(西部劇!)、映画の未来を突き付けるラストカットまで息を飲んで見逃せなかった。動物映画(チンパンジーがトラウマレベルで怖くなるけど)でもありジャンルの枠をなぎ倒す、メタファーを深堀するほどハマっていく新しい映画のカタチ。ただ、IMAX以外の画角では黒い額縁が見えるのでキモの”空”を見上げるシーンなど見世物としての映画の本質を損なってしまうので注意を。

 

 

 

 

【第4位】「パラレル・マザーズ 

毎年精力的に新作を撮り続ける70歳を超えたアルモドバル監督、お得意の母性にスペインの近現代史を織り込みより作家性を進化させてきた。赤ちゃん取り違えによる母たちの錯綜とスペイン内戦による母たちの遺恨トラウマを通して女性が力強く生きる姿を礼賛する。取り違えドラマ自体は新鮮味はないが、内戦という三世代に渡る過去と自分のルーツへと展開させながら、その状況に置かれたそれぞれの悲痛な感情を抱えながら真摯に向き合おうとする心理描写の演出が素晴らしい。
いつものファッションや小物・内装などスタイリッシュな原色使いの色彩センスの素晴らしさ、固定のバストショットが多くカット割りや場面転換のタイミングなどの独特さ。数奇な運命で結ばれた二人の母の自然な流れでの変化と共に、
同性愛・家族愛などいろんな愛の多様性をカテゴライズできない一貫したメッセージで訴えかける。パラレルな2つのテーマ、小さな家族単位から大きな国自体とのつながり、ラストの終り方もこれで良いと思わせる作り。とにかく娘への愛の矛盾や出自に揺れ動く母親の苦悩を見事に演じきったベネロペ・クルスが圧倒的だった。今も続く戦争のあとで同じような女性が現れ、埋葬された遺体を発掘する光景をまた見ることになるのだろうか・・

 

 

 

 

【第3位】「ベルファスト 

1969年のベルファストを舞台とするケネス・ブラナー監督の自叙伝的映画で、宗教対立で故郷に残るべきか離れるべきかを子供の視点から描いた作品(出来れば歴史や宗教の背景知識が多少あった方が良い)。大半はモノクロで主人公の目に映る日常のアイルランド紛争の暴力や両親のケンカへの漠然とした不安のグレーから、楽しい輝くひとときの記憶は総天然色のカラーへの切り替わりが見事。チキチキバンバンのシーンなど映画愛あふれるネタも好きだし、派手な盛り上がりはないがモノクロならではの細部にわたる美しさと緻密な画面づくり、淡々としたヴァン・モリソンの音楽が静かに寄り添って染みてくる使い方やセンスも素晴らしい。
監督の原体験に基づくだけあって誠実な説得力のある人生賛歌で、生まれ育った街や友人や家族は忘れない限り消えることは無い。争いの中にも普通の生活が地続きにあり生きてる限り進んでいくしかない日常のありかた、夜のあとには朝が来るということ、いろんな思想やいろんな人がいるけど一人ひとりと向き合って尊重することの大切さが伝わってくる。あくまでも少年視点で描かれる愛らしい日常のギャップ、切なくも温かいラストの余韻(テロップも)、おじいちゃんおばあちゃんの達観ぶりが最高でいつでもユーモアと強さを持っていたいと思わされた。

 

 

 

 

【第2位】「Coda あいのうた」 

2014年のフランス映画「エール!」のリメイクで(こちらも当時鑑賞していた感動作でもっと評価されるべき)、家族の中でただ一人だけ耳の聞こえる少女の勇気が家族や様々な問題を力に変えていくヒューマンドラマ。CODA(Children Of Deaf Adults)=耳の聞こえない両親に育てられた子供。昨年のアカデミー賞で作品賞受賞作で、ベタな展開だが誰が見ても素直に感動させられる、見終わった後に明るく優しい気持ちになれるのは間違いない。オリジナルの素朴さよりもよりドラマチックで兄妹パートや恋愛描写を含めシアン・ヘダー監督が丁寧に上手くブラッシュアップしている。
前半のまさかの下ネタ攻勢に驚きつつ(今まで控えていた作品が多い)、ヤングケアラーの社会問題も織り込みながら、田舎の普通の暮らしの風景や自然と共に少女役のエミリア・ジョーンズの心が洗われる・世界を優しくしてくれる美しい歌声が素晴らしく響く。特に
分かっていても聞こえないお父さんに向けて歌うところや手話で歌うシーンはジーンとくる。助演男優賞受賞の父親役の実際のろう者の俳優であるトロイ・コッツアーのリアルな演技にも心打たれる、障がい者を特別ではなく下品でおおざっぱな一人の人間としてリアルに描いたのも好感。

 

 

 

 

【第1位】「リコリス・ピザ」 

大人びた自信家の子役俳優の高校生と地に足の付かない25歳の女性、何者かになりたい10歳差の男女が若気の至りならではの付かず離れずの駆け引きと一線を越えてお互いが素直になっていく・・その美しさと本当に大事なものに気づいていく姿を描いた最高におしゃれなボーイ・ミーツ・ガール映画。PTA監督の中で最も陽気でノスタルジックで甘い青春小説のよう、最近の重厚な作品から昔に戻ってこんなにロマンチックで自由奔放な作品を作ってくれるとは、ただ普通のラブコメではないので好き嫌いは分かれるかも。PTAらしい70年代の世界観や雰囲気の設定や演出、音楽の使い方のセンスは変わらず、やわらかい光と青春のスピード感、二人の走る姿やヨコ移動のカメラワークにも魅せられる、ラストの美しい景色と高揚感も見事。
圧倒的な情報量と早い展開でビジネスも恋もハチャメチャになりながら残酷な社会や自分の無力さを知って成長していく、その背景で70年代アメリカ社会の苦悩も上手く浮かび上がらせるのもさすが。脇役が豪華すぎる中、名優フィリップ・ホフマンの息子と3姉妹バンド・ハイムの3女の初出演ながら青春の初々しさに満ち溢れた感じが良い。その主人公二人が決して美男美女ではないのも共感しやすく、剥き出しノーガードでの恋の無限大のエネルギーには魔法をかけられたよう(ウォーターベッドで跳ねたい)。人込みの中であの子を見つける、あの子に会いたくて走り続ける。。

 

 

 

 

★【総括】

洋画の興行収入は「トップガン」135億、「ジュラシックワールド」63億、「ファンタビ」46億、「ミニオンズ」44億、「スパイダーマン」42億となって「トップガン」のトップぶりが目立ち、あとの続編だらけも内容や評価もいまいちだった感じ。トップガンスパイダーマンザ・バットマンゴーストバスターズ、ウエストサイドストーリー、スラムダンク、シン・ウルトラマンなど過去作からの復活がテーマが多かった。新しいコンテンツが作りにくい・アイディア枯渇は昔から言われており、続編ものの失敗作も多いが、今年はオリジナル越えの作品も多く、このレベルの勢いが続くなら昔からの映画ファンとしては嬉しい楽しみ。
また、想像を超える映画体験、配信の時代が定着した中で大スクリーンの映画館で見るという復活劇に貢献した作品が多かった。トップガンなど主役自らがごまかすことなく身体をはってみせ、映画館で観客に楽しんでもらう想いがとにかく伝わってきた。過渡期に入ったアメコミ映画は、個人的には今年は正直いまいちだった、スパイダーマンの過去集結の胸アツ展開もファン目線過ぎのほぼ反則技で、マルチバースも食傷気味であり、バットマンの3時間の陰湿な感じも良かったのだが、求めるレベルが高くなっているだけに超えるのが難しいのも事実。マーベルやディズニーの配信を含め粗製乱造感もあるのか求心力を失っていると思われ、莫大な資金を背景に突き進んできたNetflixも株価暴落も受け選択と集中の段階に入ってきて、幾多あるコンテンツの一つとしての消費への危機感が出てきたのも興味深く、また映画界で変化が生まれてくるのだろうか?

 

自分のベストを振り返ると、劇場で見ないと映像と音の迫力・臨場感すべてに意味がない5,6,7,10,20、女性視点からの社会問題への警鐘9,10,12,13,16、大好きなベテラン監督たちの変わらぬチャレンジ魂1,4,8,14,15、19、難解で考察しがいのある5,10,20、リアルな戦争・内戦の影響下を描いた3,4,13,18、19、いろんな形の青春モラトリアム映画1,2,12,16、革新と王道のアップデートされたミュージカル14,15,19、とにかく子役がかわいくて上手い3,11,16,17。

今年はロシアのウクライナ侵攻での反省しない人類の愚かな戦争を改めて突き付けられた作品、女性ならではの問題や生きづらさをリアルに嫌な面も描いた作品、が必然的に多くなった。その中でも暗い気持ちを吹き飛ばす爽やかで前向きになれる青春映画の「リコリス・ピザ」が1位、PTA監督にしか作れないセンスが最高だった。2位のコーダも王道ながら本当によく出来た誰が見ても感動するアカデミー作品賞受賞も納得の作品で、3位と4位は脚本の素晴らしさ、5位のNOPEは新しい切り口で映画の可能性をまた広げてくれた難解も何回も見たくなる作品だった。

 

 

残念ながらベスト20から漏れた作品にも素晴らしいものが多かったので、以下に【次点】の5作品をあげておきます。

 

 

【次点】「LAMB  ラム

昨年のミッドサマーに続くA24ならではの独創性あふれる北欧ホラー、山間に住む羊飼いの夫婦が羊から生まれた羊ではない何かアダを育てていくが・・何か起こりそうな不穏な匂いをずっと漂わせてこのまま終わり?かと思ったら最後にドーン!とあんぐり系。セリフを極限まで絞り情報が少ないのでキャラクターの感情や行動の意味が読み取れず、テーマやメッセージやメタファーなどいくらでも考察できてしまう面白さ(アリアやアダなど名前からしキリスト教・神話関連)。要所要所での不自然なようで意味のある丁寧なカットや細かい表情の変化や視線の動きに注目してみると2回目の見え方も変わってくるはず。
ノオミ・ラパスのハマり具合も良く無駄のない洗練された映像センスは抜群だが、BGMなしで長回しも多く前半は淡々と静かに進むので眠くなるかも(羊は数えなくても)。アイスランドの壮大で雄大な自然、羊も猫も犬もみんな演技?が上手くアダの不気味な可愛さもあってホラー映画ほど怖くはないシュールな世界観を楽しめるかどうか?、最後は一見分かりやすいがもう少し深く踏み込んで欲しかった気もする、とにかく人間が一番恐ろしいのはその通り。。

  

 

【次点】「FLEE  フリー」 

同性愛を禁じる祖国を追われたアフガニスタン難民であるゲイの青年アミン、その壮絶過ぎる記憶をドキュメンタリー形式で聞き出しつつ、彼の身の安全を守るため敢えてアニメーションで表現した作品(実写だと辛すぎる)。難民の数は1億人を超えている今まさに静かで地味だが観るべき、家族と居場所を奪われ、身分を偽って生きるしかない主人公の逃亡(FLEE=逃げる)を通して難民の抱える傷の深さが浮かび上がる(時代背景や意味をよく知っておくべき)。実写とアニメの織り交ぜ方が絶妙で、ラストの切り替えは実話なのだという絶望の中で希望も感じさせられた。
紛争や差別心、LGBTQなどのテーマも織り込みながら社会の無関心に胸を痛めるが、アミンの性への違和感や目覚めが明るく描かれているのは良かった、どんな状況でも青春はあり普通に恋する気持ちの素晴らしさは変わらない。想像もつかないような本当の地獄とアミン家族の苦闘、怒りとやり場の無さに凹むが知らないより知るべき、遠い存在の難民を少しでも身近なものとして考えられるきっかけになって欲しい(日本は難民にも同性愛者にも優しくないことも)。彼らの故郷とは生まれ育った場所では無く安全にとどまれる場所、ウクライナで起きている現実と重ねてしまうが、改めていま平和に暮らせること、ビッグマックとコーラが普通に食べられることの幸せを噛みしめて。

 

 

【次点】「ブルー・バイユー」 

幼いころに韓国から養子として渡米したアントニオは妻と娘と幸せに暮らしていたが、30年前の書類不備で強制送還になり裁判を起こそうも費用が無いためどうするのか? 主演のジャスティン・チョンが脚本・監督を務めているだけにリアルに響いてくる国際養子縁組や不法移民の問題、知らなかった事例を考えられたのは良かったが、あまりの理不尽さと常に八方塞がりの詰み状態で追い込まれていてひたすら重くてしんどい。ラストは自分も同じ状況だった娘のためを思って選択せざるを得ない道が切なく胸が締め付けられる。
妻のアリシア・ヴィキャンベルをはじめ子役の女の子の自然で抑えた演技と温もりのある映像、詩的ながら感傷的には終わらない、生と死、過去と現在の対比が明確に提示されている。親の勝手で米国に養子に出され生まれ育ったのに言葉も通じない祖国に戻らされても何も出来ない、子どもには全く罪は無いだけに辛すぎる。様々な差別を描いているが法や建前以上に大切なもの、根底には最初から最後まで愛を信じてる純度の高さが美しく響いてくる、愛に国境はないのだから。エンディングで実際に国外追放となった人の名前と写真が出てきて今なお継続中であり、日本も含め未だに解決しない移民難民問題の難しさが見られる。

 

 

【次点】「アフター・ヤン」 

一緒に暮らしていたアンドロイドロボットのヤンが故障したことで始まる生と死、喪失と再生、家族、愛、命と記憶の物語、深遠なテーマを静かに温かく描いていてA24らしい近未来ヒューマンSF作品。コゴナダ監督ならではの空間や構図、建築物へのこだわりや撮り方(小津監督っぽい)、家やインテリアの色やデザインなど洗練されて無国籍な感じ、近未来的ながら実在しそうな不思議な世界観がリアル。坂本龍一の音楽はもちろん、オープニングの全員でのヘンテコダンスとリリイシュシュの「グライド」のカバーが流れてきたのは予想外で最高だった。
保存されたヤン目線の6秒間の映像ショットの数々が本当に美しく、AIロボットながら確かに日々の生活や家族への愛があったことが分かる、改めて目に映る世界の美しさと目の前の大切な存在への愛おしさを思い出させてくれた。人は忘れられた時に本当の死を迎える、残ったビデオは単なる記録ではなく愛する家族との大事な一瞬を選んだヤンの記憶だからこその価値がある。生活の記憶の断片の積み重ねで人生は出来ている、毛虫の最期の姿は蝶であり、終わりは無でも大丈夫、誰かの記憶に残るように大事な人との思い出を大切に生きていこうと思う。

 

 

【次点】「アバター ウェイ・オブ・ウォーター 

ジェームズ・キャメロン監督の映像へのこだわり、興行収入歴代世界一位の前作から13年ぶりの続編、なぜ今になっての答えとなる最新の映像テクノロジーを駆使した映像表現は3DをベースにDOLBYIMAX、MX4Dなど様々なフォーマットで映画館の3Dでなければ意味がないのは間違いない(4DXは確実に酔いそう)。目の前の光景が現実ではないことに頭が追いつかないほどのリアルな映像美、滑らかな水中の水の表現は監督こだわりの心地よさ、前作以上の没入感で新次元に到達。世界中で大ヒットして(歴代4位、ベスト5にキャメロン作品3作品!)赤字にならず良かったが、日本ではアニメ作品に全く適わないという事実。
正直いって前作以上に話はたいして深みもなく面白くはない(山を海に変えただけ)、ちょっと父親の立場に納得いかず(家父長制もの)、3時間12分はさすがに長くもう少し編集できたのではとも思うが、この映像体験だけでも見る価値はあるし飽きることはないはず。捕鯨のシーンが続くと日本人としては複雑な気持ちになるが(船に漢字が書いてあるのも嫌らしい)。全5部作のうち次は3作目となるが技術進化はどうなっているのか、もうそこまで革新的には難しいだろ
うとは思いつつ楽しみにはしておこう。

 

 

 

※【2022年 洋画ベスト 一覧】 

リコリス・ピザ

② コーダ あいのうた

ベルファスト

④ パラレル・マザーズ

⑤ NOPE ノープ

⑥ R R R

トップガン マーベリック

⑧ フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

⑨ あのこと

⑩ TITANE チタン

⑪ カモン カモン

⑫ わたしは最悪。

⑬ 戦争と女の顔

⑭ アネット

⑮ ウエスト・サイド・ストーリー

⑯ セイント・フランシス

⑰ 秘密の森の、その向こう

西部戦線異状なし

ギレルモ・デル・トロピノッキオ

MEMORIA メモリア

 

(次点)

〇 LAMB ラム

〇 FLEE フリー

〇 ブルー・バイユー

〇 アフター・ヤン

アバター:ウエイ・オブ・ウォーター