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2025年 第48回 日本アカデミー賞(予想 ⇒ 結果)

本家アカデミー賞は3/3、日本アカデミー賞は3/14と今年は少し間が空きますが(例年は2-3日間の差)、今年もこちらを予想しておきます。


今年も数年前の酷さに比べればまだましなノミネートだけど・・相変わらず松竹・東宝東映の大手3社による寡占が続き、大御所、所属事務所の影響力、テレビ話題・見栄え要員が明らかで忖度対象の人や作品があるのは残念で恥ずかしい。他の主要な映画賞を獲っている独立系の作品はほぼノミネートすらされず、大手3社に全ての賞が偏り・固まり過ぎ。

キネ旬や毎日など国内の主要映画賞を獲っている「夜明けのすべて」は興収面でも5.4億とまあヒットした方なので、今回は何とか作品賞はノミネートされたが他は監督賞と主演女優賞の3部門のみで脚本もなくスタッフ技術関連はゼロという少なさが先ずはおかし過ぎる。(一昨年前の「ケイコ  目を澄まして」は主演女優のみだった)

世界の濱口監督の「悪は存在しない」は独立系の野心作もありゼロ、「ナミビアの砂漠」「ぼくが生きてる、ふたつ世界」「Cloudクラウド」も独立系でゼロ、「ぼくのお日さま」は新人賞のみと壁が高い。その中で自主制作ながら質も高く公開拡大で興収も10億を稼いだ「侍タイムスリッパー」がノミネートされたのは良かった。

ノミネート割合でいくと松竹23%、東宝33%、東映4%となんと3社で60%(昨年は84%)を占めるという異常な事態は変わらず・・・投票者の8割が映画会社のサラリーマンである組織人なので自組織作品に入れざるを得ない(命令なのか暗黙の了解なのか?)、海外のように映画人(監督、スタッフ、俳優など)を中心に選ぶ賞があってもいいのに。

今年は「山田洋二枠」「吉永小百合枠」が無い松竹だが、興収も話題も評価も満遍なく良かった「正体」があるので、ここぞとばかりに組織票を集めてくるだろう。毎年しつこく言いますが、投票者・審査員のみなさん、自社優先ノルマ・しがらみに縛られないで「映画を愛する一人」として投票して下さい(特に松竹の関係者皆様) 

今年は東宝の比率が高く、東宝「キングダム」10部門、東宝「ラストマイル」10部門、東宝「ゴールデン・カムイ」3部門、松竹「正体」13部門と最多ノミネート、松竹「90歳。何がめでたい」2部門、東映が少なく「十一人の賊軍」2部門のみ、ギャガ「侍タイムスリッパー」7部門、バンダイ・アスミック「夜明けのすべて」3部門、キノフィルムズ「あんのこと」3部門と「碁盤斬り」と「八犬伝」が1部門、ワーナー「働く細胞」4部門と「ミッシング」1部門、角川「カラオケ行こ!」2部門、というのが主要を占める。スタッフ技術部門は大手3社に偏っているのが明確でおかしいのが分かる。

それで、予想としてはスケール、エンタメ、クオリティ、興収どれもが高水準だった「キングダム」が優勢かと思うが>近年のアニメばかりで厳しい実写映画を支えてきたシリーズの区切りとして受賞させるには絶好のタイミングかと思われる。スタッフ技術関連はかなり独占する可能性が高いが、やはりシリーズもので単体作品としての評価と脚本が無いのがネックになるか。

「正体」は最多ノミネートで俳優陣含め高水準での評価で松竹としては何としても獲らせに行くこともあり、主演男優と助演女優も強いので監督賞とセットで作品賞につながる可能性が「キングダム」より少しだけ高いか・・でも最後まで迷うところ。実は2020年も同じで、藤井監督「新聞記者」と佐藤監督「キングダム」の対決があり作品・主演男優・主演女優が「新聞記者」、助演男優・助演女優が「キングダム」という結果になっている(この時は監督賞が「跳んで埼玉」というのが日アカらしいが)。

「侍タイムスリッパー」はこれだけノミネートされただけでも十分で無くはないがさすがに作品賞までは難しいかな、でも本家アカデミーでは独立系「アノーラ」が席巻したので本家に影響されやすい日アカなら無くもないかも。「ラストマイル」も良くできた作品だけどTBSドラマつながりが強く日テレ主催では脚本賞の可能性に留まるかな。個人的には圧倒的に「夜明けのすべて」が獲るべきだし、本来ならスタッフ技術部門も最多ノミネート・最多受賞になるべきと思ってはいるが・・

 

⇒結果は作品賞「侍タイムスリッパー」は正直サプライズだったけど、それ以外は全体的にはほぼ忖度のない順当な結果と言えるのでは。大手ではないインディーズ映画が作品賞を受賞したのは、本家アカデミーも「アノーラ」だったので流れでもあるが影響されたかな。過去にも作品賞は「桐島」「新聞記者」「ミッドナイトスワン」などサプライズはあったが、今回はほぼ一人で低予算での制作した度合いが違うので画期的だった。「カメラを止めるな」は300万の製作費で興収31億と自主映画の奇跡だったが最優秀受賞は編集賞のみで作品賞は獲れなかった(ただこの時は「万引き家族」で相手が悪すぎた)ことを思うと、今回自主映画に夢と希望を与えてくれたのは今後の映画界にとって素晴らしいこと。

まあ、松竹「正体」が作品賞受賞して独占になるとどうせやらせ・大手持ち回りの批判を受けることになるのを避けたい、何度かある日アカもやればできるアピールの年にしたかったのかな。あと商業的な面でも「侍」は配給会社としてはギャガが付いて、東宝や松竹の映画館でもまだ推し公開中でもありこの受賞で更に興収を伸ばしたい各社の意向の一致があったのかも。

会社別に見ると最多受賞は東宝「キングダム」4部門、松竹「正体」3部門、ギャガ「侍タイムスリッパー」2部門、東宝「ラストマイル」1部門、キノフィルムズ「あんのこと」1部門、ワーナー「働く細胞」1部門、角川「カラオケ行こ」1部門、エイベックス「ルックバック」1部門、と見事に大手各社の作品が満遍なくバランスが取れていて図っているかのよう・・いやでもバンダイ・アスミック「夜明けのすべて」がゼロというのが本当にありえないのだが・・個人的には「侍」が獲れるなら「夜明け」でも良かったのでは(本当の映画好き・評価基準でいけば)と思ってしまうところもあり・・

個人的予想の結果は全15部門中12部門的中(昨年は11部門的中)、作品賞はサプライズだったけど全体的には自分が予想した方に動いていたので、おおむね納得の結果かな。

テレビ的には司会は6回目の羽鳥さんと3回目の安藤サクラは落ち着いて回していたがインタビューはもっと映画的に個性を引き出してほしいところ(フルで観ていないので実際は分からないが)。今回はTVerで「ウエルカムレセプション」と「レッドカーペット」が配信されて、直前の様子や仲の良い組み合わせを観れたのは良かった。テレビナビゲーターのオードリー・若林は映画もちゃんと好きで観ている感じあり安定してきた、リポートも人当たりの良さでリラックスさせて素を引き出していた。今回から水トちゃんから佐藤栞里に変わったが、こちらも人柄の良さは滲み出ていたが映画好きからの引き出しは正直まったく感じられず(視聴率要員?)。

毎年のことだがスピーチ時間のバランスはもう少し改善して欲しい、今回はせっかくラストのサプライズ「侍タイムスリッパー」での時間があまりにも短すぎる、10秒ほどで安田監督や山口馬木也のコメントをカットして最後が駆け足過ぎて全く締まってない(最低編集賞並み)。2時間で収める苦労も分かるが俳優陣のスピーチもぶつ切りで作品賞や監督賞、スタッフ系のスピーチなどもう少し上手く編集できるはず、新人の時間が長すぎ(各事務所からの宣伝が重要なのだろうが)で作品紹介含め省けるはず。

 

 

 

 

【作品賞】

今回は自分のベスト20に入っているのが4作品(「夜明けのすべて」1位、「侍タイムスリッパー」10位、「ラストマイル」11位、「正体」12位)あり、「キングダム」も興収含め全体的に見れば選出は妥当かと思う。

この中では、普通に考えれば映画好きや評論家含め他の主要な賞でも圧倒的な「夜明けのすべて」が獲るべきだし個人的にもダントツで獲って欲しいところ。社会性と作家性に世界レベルの脚本・演出、いつもの16ミリフィルムの映像表現、地味で大きな出来事も怒らないがパニック障害PMSなど悩みを抱える市井の人たちに優しい光を当てた傑作、監督賞と主演女優のみで脚本やスタッフ技術系がゼロなのがどう響いてくるか(本来はおかしい)。主演女優は厳しいので監督獲れば可能性はあるが、やはり残念ながら日アカでは厳しいかな。嬉しいサプライズで投票者の良心にかけてみたいが・・

となると「キングダム」か「正体」で最後まで迷うところ、「キングダム」がスタッフ技術系を多く獲りそうで助演男優も強い(脚本が外れているのが弱点)、「正体」の方は最多ノミネートだがスタッフ技術系が弱めで主演男優と助演女優の俳優陣が強いのでどちらが全体評価につながるか。東宝は「ラストマイル」と票が割れるが、松竹は一本化できるのが強みなので、作品賞につながるのは「正体」かな。

「正体」はさすがの藤井監督らしく冤罪という社会テーマながら確かな俳優陣の演技とスキのない演出でグイグイ引き込んで見事にエンタメとしても楽しめる作品。興収も含め評価は高いので、松竹としては久々のチャンスを何とかものにすべく固めてくるだろう、監督賞を獲れば受賞の可能性は高いが最後まで分からない。

「キングダム」は過去は1作目が助演男優と助演女優を受賞、2、3作目はゼロで今回は興収80億含め過去最高のスケールとアクションと物語性で誰もが楽しめるレベルは確かに受賞に値する。が、やはりシリーズもので単体としては初見には難しく今までも逃してきたので評価にどう影響するか、技術関連より俳優・監督を獲った方が強いので。

「侍タイムスリッパー」は1館の上映から口コミ高評価で300館に拡大公開され興収10億という「カメラを止めるな」以来の低予算ヒットの話題作だった。安田監督が自ら脚本・撮影・編集を手掛け自腹で2600万を捻出し10人のスタッフと作り上げた。脚本の面白さはもちろん、殺陣シーンの本格さ、何より失われつつある時代劇・時代劇映画への愛情と敬意と情熱にあふれていて素晴らしいが、やはり作品賞受賞までは厳しいかな(あの「カメラを止めるな」も作品賞は逃したくらいだし)。

「ラストマイル」はTBSドラマの塚原監督、野木脚本、新井プロデューサーの布陣で「アンナチュラル」「MIU404」との同一線上の世界で作り上げたサスペンス。ネット通販の社会問題も織り込みドラマファン含め顧客の満足度は高かったが、こちらも作品賞までは厳しいかな。

 

〇「キングダム 大将軍の帰還」

△「侍タイムスリッパー」

◎「正体」

 「夜明けのすべて」

 「ラストマイル」

 

⇒「侍タイムスリッパー」

最後にサプライズが待っていた・・普通なら主演男優、助演女優、監督賞を獲ってきた「正体」だと誰もが思っていたはず。映画好き・これから映画を作る人たち自主映画に夢と希望と勇気を与える受賞で嬉しいのは間違いない。が少しだけ違和感や引っかかるところもあり、本来の作品賞としては脚本・俳優・スタッフ・制作陣・総合での完成度で選ばれるので、今回は脚本と俳優が獲れずに編集賞のみで作品賞受賞、票を入れる立場になると少し不思議な感じ。ノミネートは多数されているのでギリギリの接戦だったのかな。先ほど書いたように、ネットでは大手持ち回り批判・侍への期待が圧倒的に大きいので日和った?、今後の商業面や各社の思惑・バランスを取った感もなくはないが、ここは素直に喜ぶべきだろう。ブルーリボン賞では主演男優と作品賞を受賞しているので、今年はキネ旬と毎日を獲った「夜明け」とブルーと日アカを獲った「侍」の2作品が代表となる。

安田監督はコメ農家ながら一人11役をこなし、2600万円の製作費(口座残高7000円)も十分に回収できて(本来は2億ぐらいだが東映京都撮影所の協力などがあった)本当に報われて良かった。「カメラを止めるな」のような大胆な構成や脚本ではなくオーソドックスな時代劇でクオリティーと脚本の面白さで勝負、「カメ止め」を1回きりの奇跡にしなかったのも本当に凄いし尊敬に値する。スピーチでも山口さんと抱き合い男泣きながら「最後まで物事を諦めずにやることを教えてくれた一昨年死んだ父と、頑張っていれば誰かがどこかで見てくれているといつも言ってた福本清三(50年以上斬られ役を演じた俳優・故人)に見せてあげたい」と語っていた。

 

 

【監督賞】

ここは本当に難しく誰にもチャンスはありそう、作品賞とセットになるなら藤井監督が少し有利か?ただ、作品賞と共に「キングダム」も十分ありえるので最後まで難しいところ。藤井監督は「新聞記者」で作品賞は受賞済みなので、監督賞は初受賞成るか? 2020年の藤井監督「新聞記者」、佐藤監督「キングダム(1作目)」の時は二人とも監督賞は逃しているので、どちらがリベンジとなるか?(その時の監督賞は武内監督「跳んで埼玉」という茶番劇・・)

せめてここだけは本来あるべき「夜明けのすべて」三宅監督に獲らせてあげたいが、過去からの日アカを見ると厳しいのかな。ようやく作品と監督にノミネートされたのが第一歩、濱口監督のようにいずれカンヌやアカデミーを獲って有無を言わさず受賞して欲しい。安田監督は時代劇への愛情と情熱は報われてもいいし、脚本・編集・撮影もこなして本家アカデミーも一人でこなしたショーン・ベイカーが受賞しているので、可能性はあるかも。塚原監督もさすがの安定感で可能性はゼロではないかな。

 

〇「佐藤信介」(キングダム 大将軍の帰還)

 「塚原あゆ子」(ラストマイル)

◎「藤井道人」(正体)

 「三宅唱」(夜明けのすべて)

△「安田淳一」(侍タイムスリッパー)

 

⇒「藤井道人

主演男優と助演女優を獲ってここがキモだったので、藤井監督の名が呼ばれた時は作品賞も決まりかと思った。社会的テーマに自分の個性を出しながら多彩な俳優陣のベストアクトを引き出し、演出含め全体感は文句なし、念願の監督賞初受賞となった。38歳での達成となり、2014年に史上最年少30歳!で受賞した石井裕也監督「舟を編む」に続く若さとのこと。コメントは「映画の現場は楽しくなきゃいけないし、その場を作るのは自分の責任だと強く感じた。これからもインディーズスピリッツで作り続けたい、楽しい映画業界を作っていけるよう頑張ります」と、ハードな業界全体の改善にも言及していた。テーブルでの仲間の様子を見ても藤井組は楽しそうな感じはしたし、今後も骨太なテーマとエンタメの両立をバランスよく撮れる監督なので期待したい(エンタメ受け狙いには走らずに)。

作品賞を獲るなら本当は監督賞も安田監督でいいのだが、一人で11役もやり過ぎたか?松竹の方で作品賞とバランスを取りに行ったか? 三宅監督は次回作でぜひ有無を言わさぬリベンジを、とっくに世界を獲れる基準だとは思うので。

 

 

【主演男優賞】

ここは2強で最後まで迷うところ、横浜流星の七変化は、行く先々で変えていく人物像を細かい仕草や表情で見た目も性格も見事に演じ分けていた。冤罪という難しいテーマでの諦め・葛藤・怒り・慟哭など訴え共感させるパワーも凄い、来年度の大河の主役という箔付けで初の受賞なるか? 

対抗馬は山口馬木也で、タイムスリップした武士の戸惑いや順応していく姿をユーモアあふれる自然体で表現していた。長年の時代劇のわき役経験を活かした侍の所作や殺陣アクションは見ごたえあり素晴らしかった。個人的には横浜流星はこれからまだチャンスは多いので、今回は山口馬木也に獲らせてあげたいところ。

草彅剛は毎度の落ち着き払った存在感で、寡黙ながら闘志・侍魂あふれる演技で魅了していた。綾野剛はいつものヤクザ役ながら少年に振り回されるコミカルさを強調しつつ絶妙なカラオケ具合も良かった。山﨑賢人はシリーズ4作目も前半は頑張ってはいたが、今作はやはり大沢たかおの存在感が圧倒的過ぎて主役を奪われていたのは止む無し。しかし、この5人なら松村北斗は絶対にノミネートされて受賞でもいいレベルなのに謎すぎる(作品と主演女優はされているだけに)、STARTO社としての問題が影響しているのかどうか・・

 

 「綾野剛」(カラオケ行こ!)

△「草彅剛」(碁盤斬り)

〇「山口馬木也」(侍タイムスリッパー)

 「山﨑賢人」(キングダム 大将軍の帰還)

◎「横浜流星」(正体)

 

⇒「横浜流星

ここはやはり横浜流星でしたね、大手で大河主役として注目される今とるべきタイミングはもちろん、着実な積み重ねがあってこそ。藤井監督とはデビュー時からタッグを組んで磨いてきてお互い感極まるところも多いはず(特に今作は3年かけて一緒に脚本やセリフのやり取りしてきた)。コメントは「自分は芝居はうまくないですし遊びもなく頑固でつまらない人間ですが、毎日芝居のことだけを考え作品命で向き合ってきたのが認められた気がして励みになった」と真面目な彼らしく。アクションの強み(岡田准一とはまた違った)もあるので世界への進出にも期待。

山口馬木也は一世一代のチャンスで作品賞も獲っただけに残念、でもこれで注目を浴びて各局のドラマなどに出演していくと思うので活躍が楽しみ(でも時代劇の殺陣が一番かと思うので時代劇ブームのいまNetflixなどで世界進出も十分あり)。草彅くんが役とは対照的に、綾野剛に同じ剛(つよし・ごう)仲間だねと明るく振る舞っていたのがらしいなと笑いつつ、主演男優受賞済で常連になっていくなら改めて凄いなとも思いつつ。

 

 

【主演女優賞】

ここは誰が見ても間違いなく河合優実だろう、今年のあらゆる活躍はまさに彼女の年だった、ドラマは「家族だから・・」や「不適切にもほど・・」(これでお茶の間ブレイクするとは)、今回は「あんのこと」が対象になったが「ナミビアの砂漠」も難役で彼女にしか出来ない傑作で、更に「ルックバック」の声優まで完璧。今までも数々の映画賞に輝いてきたのに日アカはこれまでノミネートすらされず、正直石原さとみに獲らせるため(事務所の力?)、新人賞ノミネートだけの可能性も恐ろしかったが、今回はさすがに無視は出来なかったようで安心。

石原さとみは自分のイメージをかなぐり捨て子を持つ母親としての希望と絶望と変化を見事に体現していてキャリアベストかと思うが、彼女を脱皮させるがための演出が大げさだった感は歪めない。上白石萌音は身体の不調と心の浮き沈みに翻弄されながらも懸命に生きる姿をユーモアを交え丁寧に演じ、温かい声で幸福感をもたらせてくれた。満島ひかりは久々のノミネートで嬉しいがキャリアベストまではいかないかな、草笛光子はタイトル通り年齢を感じさせない熟練のユーモアあふれる安定感はさすがだがノミネートだけでも十分かな。

 

〇「石原さとみ」(ミッシング)

△「上白石萌音」(夜明けのすべて)

◎「河合優実」(あんのこと)

 「草笛光子」(九十歳。何がめでたい)

 「満島ひかり」(ラストマイル)

 

⇒「河合優実」

ここは当然の結果、この5人並んでもやはり彼女独特の存在感は貴重。ダンスに打ち込んでいた身体表現、どんな役へも自然な溶け込み感、コメディもアクションも脱ぎもこなせる幅広さ、すでに「由宇子の天秤」「サマーフィルムにのって」「ある男」「PLAN75」「愛なのに」などの代表作でも十分に証明済。監督みんな使いたいだろうし、今年も何本も控えておりまだ24歳なのでどこまで化け続けていくのか楽しみで仕方がない。チャラい恋愛ものやTVドラマには出ないで映画畑で選んでいって欲しいところ、いずれNHK朝ドラや大河ぐらいは止む無しだけど。コメントは「信じられない気持ちでこの場にいるだけで夢のような思いです、未熟者で新参者ですが敬愛する大先輩に囲まれて映画の世界に足を踏み入れて本当に良かったと思います」と感激しきりだった。終わって若林から来年は司会だよと言われて素で驚いて困っていた顔がまた魅力的なのも良かった。

やはり女優陣はみんな衣装にも見とれてオーラが半端ない。石原さとみはご懐妊発表後でめでたくゆったりめのワインレッドのドレスで妊婦とは思えぬさすがの美しさ、頑張っていたけど相手が強すぎたかな、良くも悪くも石原さとみにしか見えなくて演出もあるが発声や身体表現が大げさで自然体と役になりきるのは差があり過ぎた。それでも今作でのチャレンジは必ず今後に活きてくるので2人のママになった新たな可能性に期待。

上白石萌音は着物の落ち着いたほんわり雰囲気で癒された、髪を切るシーン含め、今回なぜかノミネートされなかった(何の力が働いたのか絶対におかしい)松村北斗の名前を出して彼のおかげでここにいると言ってくれたのは彼女らしいさすがのコメントだった。満島ひかり安藤サクラに褒められて「誰よりもサクラちゃんに褒められるのが無理・・めっちゃ嬉しい」と二人とも目に涙を浮かべ泣いていたのが印象的だった(あの「愛のむき出し」から16年とは・・二人がここまで大物になるとは感慨深い)。草笛光子は御年90歳でもあの美貌と華やかさはさすが、内野聖陽エスコートされて登場・壇上しつつ少しおぼつかないながら振り絞っていたコメント含め感動的だった。

 

 

助演男優賞

ここは誰が見ても間違いなく大沢たかおだろう、クセがすごい大将軍キャラを体重や筋肉の大幅増に、表情や言葉遣いも含め原作ファンも納得の体現化を極めていた。シリーズ4作続けての顔として今作で最後の有終の美を飾らせてあげたいところ。山田孝之は本人を追い続け冤罪の可能性を感じながらも組織の命令との葛藤を見事に演じていたが、インパクトは少し弱いかな。

佐藤二朗は「さがす」に続いて笑いを一切封じて、主人公含め誰にも頼られる大人の一方で人間の奥底に隠された闇を体現していた。岡田将生も安定の演技で悪くはないが抜け出てるわけではなく、内野聖陽にいたっても熟練ではあるがキャラが濃いだけで二人とも何もこれでノミネートしなくてもが正直な感想(二人とも他にふさわしい作品があるので)。

しかし、ここでも池松壮亮がノミネートされていないのが残念、「ぼくのお日さま」のコーチ役と「ベイビーわるきゅーれ」の殺し屋の対照的な2役は素晴らしかったが、作品が独立系なので止む無しか。(日アカは過去から池松壮亮を軽んじ過ぎ)。

 

 「内野聖陽」(八犬伝

◎「大沢たかお」(キングダム 大将軍の帰還)

 「岡田将生」(ラストマイル)

△「佐藤二朗」(あんのこと)

〇「山田孝之」(正体)

 

⇒「大沢たかお

ここは当然の結果、20キロ増量して鍛え上げられた巨体に余裕の笑み、独特の話し方などクセ強の人気キャラ王騎大将軍をシリーズ7年間通して献身的な役作りで作品を支えてきたのは誰もが評価するところ。コメントは「助演は主演をどう盛り上げるかを考える、主演の山崎くんはじめスタッフみなさんに助けられながら演じてきた、劇場に足を運んでくれたお客様には改めて本当にありがとうございます。」と役柄同様に堂々とファンにも感謝を伝えていた。山崎賢人には役柄上だけでなく俳優としても生き様を身をもって示して伝えてきたのも素晴らしい。あと、若林とのインタビューで奥渋谷のカフェで若林が厨房でバイトしてた時に、大沢がよく店に来ていたのを覗いていたエピソードはさすが持ってるなあと感心した。

山田孝之は意外にも初ノミネートということでビックリだが(てっきり「凶悪」で主演男優かと思っていた)、事前から気負わずリラックスしつつコメントでは「組織の板挟みの役柄上ストレスでハゲるんじゃないか心配して毎回本当にメイクさんに「ハゲてませんか?」と確認していたらしく。この会場ではミーハー心を封じてダンディなおじを演じていくのを忘れてましたと切り替えていたのも面白かった。

佐藤二朗は次作の役柄上で帽子を外せなかったが、相変わらずのコメント力で盛り上げていたのはさすが、事前のレセプションで芦田愛菜と二人で登場し顔の大きさが自分で言うように確かに違い過ぎていた、河合優実が受賞した時に見せていた涙も印象的。岡田将生は衣装とノーフレームのレンズ眼鏡の威力も含め男から見ても何だろう?この色気は・・高畑充希との結婚で更に増してきたのか。「美しいのに違和感がある」とコメントした満島ひかりとは「悪人」以来14年ぶりの共演だったのも胸アツ。正直「ドライブ・マイ・カー」で助演ノミネートされるべきだったので、今回はリベンジできて良かった。内野聖陽は役で演じた葛飾北斎とは別人のような短髪でこちらも大人の色気・魅力あふれるカッコよさに惚れそう、大沢たかおと横並びで映ったシーンは「仁」の南方先生と龍馬が思い出されてグッときた。

 

 

 助演女優賞

はい、助演は毎年のことだが今年も酷い・・大手3社や事務所の調整枠とテレビ視聴率用の要員枠(ベテラン女優枠や見栄え・若者受け枠も定番化)として毎年何かの力が動いているのだろうか?(ノミネートされた人には罪はないのであしからず、独立系作品からは選ばれないから無理やり感が強いのも理解はできる)。

今年は他の映画賞で獲っている「ぼくが生きてる、二つの世界」忍足亜希子がいないのは残念過ぎる、実際のろう者として自身もコーダの娘がいるので思う気持ちや上手く伝えきれないリアルさはもちろん、30年に渡る変化をいつもチャーミングな笑顔と明るさで支えるザ・お母さんに誰もが心動かされるはず。ここは胸を張って多様性の象徴例としてもノミネートさせるべきだった。あとは「一月の声に歓びを刻め」カルーセル麻紀も同様で多様性もあり、初老のトランスジェンダー役として自身の生き様が反映された説得感はこれぞ助演女優にふさわしい。

この中だと消去法で「正体」の吉岡里帆が強いか、主人公と深く関わっていくうちに犯人と認識しつつ冤罪の可能性との葛藤と自分を含め信じぬく姿を見事に演じていた。なかなか受賞できずに来たので、いよいよ受賞して新たな一歩を築けるかどうか。

個人的には「ミスミソウ」から山田杏奈は好きだったのでようやくノミネートされて嬉しく(ゴールデンカムイでも良かったけど)、こちらも主人公を信じる葛藤を表現していたが、吉岡里帆よりインパクトが薄いのが難点。

清原果耶もずっと好きで今作も父親の無実を信じながら気強く待ち続ける娘を安定して演じていたが抜きでてはないかな、土屋太鳳は八犬伝のお姫様役で出番も印象も薄く何故にノミネートされたのか?、芦田愛菜も感動パートを担っていて良いのだけどこの作品でノミネートされなくても、二人とも納得しているならいいけど。。

 

 「芦田愛菜」(はたらく細胞

△「清原果耶」(碁盤斬り)

 「土屋太鳳」(八犬伝

〇「山田杏奈」(正体)

◎「吉岡里帆」(正体)

 

⇒「吉岡里帆

ここは消去法でいってもまあ当然の結果かな、当日は能登半島七尾市での舞台公演のため残念ながらリモート出席となったが(時代劇?のカツラで登場)、コメントは「ビックリしすぎちゃって・・私にとってとても重要な作品になった」と強い思いれと自身のエキストラ経験を述懐し「現場の全員が心から良い作品を作りたいと一致団結して手を取り合ったときにパワーを発揮する映画にこれからも携わりたい、離れた場所にいてもそのエネルギーが届く力があり時代を超えて残っていくもの、見ていただく方のパワーになれるよう精進したい」と真面目な彼女らしく飛躍を誓っていた。「見えない目撃者」「ハケンアニメ」とステップアップして初受賞、これからも楽しみ。

山田杏奈は新人賞も受賞のため忙しそうだったが、背中ざっくりのロングドレス姿で美しく大人になったなあと実感、マイナー系の良い映画(「ひらいて」「山女」など)にも出演して確かな実績と評価を得てきたので今回ようやくの助演女優まで来た感じ、これからも挑戦し続けて欲しい。清原果耶は高身長にブラックドレスがよく似合い、草彅剛から「これ飲みなよ!元気出るから!」とお出汁をいただいて、なんて温かい大きな方なんだろうって胸に染みました、とのエピソードを披露していた。助演女優は受賞済なのでそろそろ主演女優を獲れる作品に出合えるといいな(十分な実力は実証済)。芦田愛菜アルマーニの黒いロングドレスで知的でエレガントな大人びてキレイだった、新人賞の6歳の時の映像としっかりとした受け答えを見ると、本当にすべてが順調に育っていて娘を持つ身として羨ましくなる。土屋太鳳は「八犬伝」で演じた伏姫のごとく青を基調とした鮮やかな着物姿で華々しく、ロングヘアーもオールバック&ポニーテールにまとめ美人顔が際立っていた。

 

 

【アニメーション作品賞】

今年もアニメーションが強かったので、いつもこの5枠は激戦だが、一つやっちまったながあるのが残念。「コナン」は興収1位の158億は素直にすごいし、毎回安定の面白さだけど毎年のシリーズものだけに受賞まではやはり厳しいかな。「ハイキュー」も興収2位の116億と口コミから熱烈ファンが拡大して王道の熱きスポーツ戦いものとして興奮させられた。

ガンダム」は未見だがSEEDシリーズ18年ぶりの新作ということでこちらも興収50億と定番ファンに支えられた安定の面白さかと思われる。その中で「がんばっていきまっしょい」は興収1億程度の大惨敗作で大した話題にも評価上にも乗ってこないのだが(原作は傑作青春小説だけど)、松竹ということでの枠でした。

なのでこの中では間違いなく「ルックバック」になるだろう、58分の上映時間で1800円の均一料金ながら興収も20億、口コミもあるが、圧倒的なアニメ表現とストーリーの完成度があればこのタイパ時代にこれだけ大評価・大ヒットできることを示した意義は大きい。京アニ事件含めてクリエイティブの喜びと重みと覚悟、すべての創作者たちへの尊敬を込めて受賞して欲しい・されるべき。

 

 「がんばっていきまっしょい

 「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」

△「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」

〇「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」

◎「ルックバック」

 

⇒「ルックバック」

ここは興収よりも、やはりアニメ表現・業界・クリエイティブに関わるものとしては選ばざるを得ないので、受賞出来て本当に良かった。また、今回から新設された、選考対象作品において特に優れた貢献を示した技術者を顕彰する「クリエイティブ貢献賞」も原動画スタッフ8名が選出・受賞されていたのも手書き含め新しいアニメ表現が評価されて素晴らしい。

 

 

【外国作品賞】

ここはやはり「オッペンハイマー」が固いだろう、大好きなクリストファー・ノーラン監督が昨年の本家アカデミー賞を総なめしただけに監督、スタッフ、俳優陣すべてが格調高く高次元でバランスが取れていてエンタメとしても完成度が高い。映画館(IMAX)での圧倒的な映像体験への貢献も大きく評価につながるはず。

「哀れなるものたち」は死んだ女性に胎児の脳を移植したベラの成長物語だが、ヨルゴス・ランティモス監督らしい何でもありの壮絶さと常識を軽く超えてくるぶっとんだ作品なので好き嫌いは分かれるので厳しいかな。「関心領域」はアウシュビッツの隣で暮らす家族の物語で、直接的な場面は一切見せず音だけで想像させられる音で観る新しい映画体験だったが少しアートよりかな。

「シビル・ウォー」はアメリカが分断された内戦の世界でトランプ政権の今いろいろな見方が出来る、いつどこで現実になってもおかしくない怖さが強過ぎるか。そしてなぜかこの5作品に入ってきた「花嫁はどこへ?」、花嫁の取り違えから起こる展開が最後まで楽しめて温かい気持ちになる良い映画なのは間違いないが、ベスト5に入るかは微妙な感じ・・よく見たらやはり今作のみ配給が松竹だったのでそういうことでした・・

 

〇「哀れなるものたち」

◎「オッペンハイマー

△ 「関心領域」

 「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

 「花嫁はどこへ?」

 

⇒「オッペンハイマー

原爆の開発者の伝記だけに内容的に日本では受け付けない人もいるが、映画としては一人の男の苦悩と後悔を描いており映像・演技含め高次元の完成度なので、受賞には値する。本家アカデミーも独占しているし。

 

 

 脚本賞

ここは基本は作品賞とセットが多いが、敢えて2作品もノミネートされている野木亜紀子で「ラストマイル」の方が固そう、オリジナルで社会問題に切り込みながら細かいところまでリアルにしっかり伏線回収しつつ見終えた後に考えさせられる構成が見事だった。基本的に作品賞とリンクするので作品賞から見れば「正体」もありえるが、少し展開含め粗さも感じたので難しいかな。

作品賞では候補の「キングダム」はシリーズもので仕方がないが前半と後半がうまく機能してないので外されても止む無し。「侍タイムスリッパー」は監督オリジナルで2時間10分飽きさせずに最後まで楽しめるので、作品賞とセットで番狂わせがあるかもしれない。「あんのこと」は新聞記事の実話をベースにどこまで落とし込むか悩みながらコロナ禍も通して現代の見えない闇(病み)を突き付けたのは重すぎるが評価されるべき。

しかし、「夜明けのすべて」がノミネートされていないのが納得いかないし(やはり作品賞は厳しいか)、濱口監督の「悪は、存在しない」の世界基準の奥深い巧妙すぎる脚本を外すのもありえない。。

 

△「入江悠」(あんのこと)

 「大島里美」(九十歳。何がめでたい)

 「小寺和久/藤井道人」(正体)

 「野木亜紀子」(カラオケ行こ!)

◎「野木亜紀子」(ラストマイル)

〇「安田淳一」(侍タイムスリッパー)

 

⇒「野木亜紀子」(ラストマイル)

こちらは順当な結果、カラオケ行こ!も良かったけど、オリジナルとして「ラストマイル」での受賞でしたね。作品賞を獲るなら本当は「侍タイムスリッパー」だったけど、ラストマイルが獲れるならここしかないので少し力が働いたのかも。それでも前作「罪の声」でも受賞しており今度はオリジナルで戻ってくるとの誓い通りは素晴らしい。「テレビドラマで私たちが積み重ねてきたものがあって、ようやく作らせてもらえた、主演満島ひかりさんをイメージして『こんな満島ひかりを見たい』と作った脚本」とのこと。

 

 

 編集賞

作品賞とリンクしていることが多いので、ここは「正体」になるのかな、ただ脚本と同様に全体から見ると上手くはまってないところも多かった感じ。なので「キングダム」か「侍タイムスリッパー」も十分に可能性はあるので、最後まで迷うところ。

しかし、安田監督は自ら作品・監督・脚本・編集・撮影で一人で5部門ノミネートされているのは凄いこと。先日の本家アカデミーではショーン・ベイカーが一人で4部門とも受賞していたが、ノミネート数では上回っているし・・。一つぐらいは獲らせてあげたい意向が働けばこの部門がチャンスか、あえてここは「侍タイムスリッパー」に賭けてみたい。

 「板部浩章」(ラストマイル。)

〇「今井剛」(キングダム 大将軍の帰還)

△「古川達馬」(正体)

 「松尾浩」( はたらく細胞

◎「安田淳一」(侍タイムスリッパー) 

 

⇒「安田淳一」(侍タイムスリッパー) 

まさに読み通りで「侍」でしたね、作品全体で見ればこの5本では十分獲れるレベルだったので、この部門がチャンスとは思っていたけど、本当にセットで作品賞まで獲るのは予想外だった。。

 

 

【撮影賞】

「夜明けのすべて」「悪は、存在しない」「ぼくのお日さま」の素晴らしい撮影が無視されているのが怒り心頭だが(せめてこういう部門は独立系でも選ばれるべき)、この中だとやはり圧倒的なスケール感や戦闘・アクションシーンの目立つ「キングダム」になってしまうか、基本的に撮影・照明・美術はセットでこういう作品が独占しやすいこともあり。ただ「キングダム」は前の作品で受賞済みだったので「正体」の可能性もあり。

〇「川上智之」(正体)

◎「佐光朗」(キングダム 大将軍の帰還)

「関毅」(ラストマイル)

 「相馬大輔」(ゴールデンカムイ

 「安田淳一」(侍タイムスリッパー)

 

⇒「佐光朗」(キングダム 大将軍の帰還)

順当な結果でした。

 

【照明賞】

基本的に「撮影賞」とセットの場合が多いので(ノミネートもまさに同じ)、こちらも「キングダム」か「正体」で悩ましいところ、だが「キングダム」になるだろう。

〇「上野甲子朗」(正体)

◎「加瀬弘行」(キングダム 大将軍の帰還)

△「川里一幸」(ラストマイル)

 「佐藤浩太」(ゴールデンカムイ

 「土居欣也、はのひろし、安田淳一」(侍タイムスリッパー)

 

⇒「加瀬弘行」(キングダム 大将軍の帰還)

順当な結果でした。

 

美術賞

こちらもカネのかかった大作が強いので、壮大さを輝かせた様々な舞台やセット、格闘や馬・衣装など細かいところまで再現した「キングダム」になるだろうか。同じく「十一人の賊軍」や「ゴールデンカムイ」もここならチャンスあり、「はたらく細胞」も体内と細胞の華やかで細かいところまで見事だった。

△「磯見俊裕、露木恵美子」(ゴールデンカムイ

〇「沖原正純」(十一人の賊軍)

◎「小澤秀高」(キングダム 大将軍の帰還)

 「松本真太朗」(正体)

 「三浦真澄」(はたらく細胞

 

⇒「三浦真澄」(はたらく細胞

ここは納得、あの細部にまで宿る美術は素晴らしかった。

 

【録音賞】

ここも兵士たちや馬、アクション・戦闘シーンなど音響の設計も含めて「キングダム」が強いか。同じく「十一人の賊軍」もここならチャンスがありそう。

〇「浦田和治」(十一人の賊軍)

 「金杉貴史」(はたらく細胞

△「西條博介」(ラストマイル)

◎「横野一氏工」(キングダム 大将軍の帰還)

 「 米澤徹、浜田洋輔」(正体)

 

⇒「横野一氏工」(キングダム 大将軍の帰還)

順当な結果でした。

 

【音楽賞】

ここでも「悪は、存在しない」(元が石橋英子の音楽作品の映像化なので親和性・音像表現は突出して圧倒的)、「夜明けのすべて」「ぼくのお日さま」の素晴らしい音楽が無視されているのが怒り心頭だが、この中だと非常に難しいがこちらも「キングダム」になってしまうだろうか・・正直よく分からないしどうでも良い(世武裕子の音楽は好きだが)。

△「大間々昂」(正体)

 「世武裕子」(カラオケ行こ!)

〇「得田真裕」(ラストマイル)

◎「やまだ豊」(キングダム 大将軍の帰還)

 「Face 2 fAKE」(はたらく細胞

 

⇒「世武裕子」(カラオケ行こ!)

ここは個人的には世武さんの音楽は好きなので、外れても受賞は嬉しいところ。

 

【新人俳優賞】

毎年一番どうでもいいところで各事務所が今後に踏まえ推して泊をつけておきたいだけの忖度でしょう。さすがに近年減ってきている旧ジャニーズは1人のみ、山田杏奈と赤楚衛二はどんだけ今更だし、齋藤飛鳥も板垣李光人も新人とは言えないだろう、まあ渋谷凪咲はちゃんと映画デビューか。

今後の映画界における本物の新人としては越山敬達と齋藤潤がきちんと選ばれて良かったが、期待の女性陣としては中西希亜良と早瀬憩は選ばれるべきだった。

 

齋藤飛鳥」(【推しの子】 The Final Act)

渋谷凪咲」(あのコはだぁれ?)

「山田杏奈」(ゴールデンカムイ、正体)

赤楚衛二」(六人の嘘つきな大学生、もしも徳川家康が総理大臣になったら)

「板垣李光人」(八犬伝はたらく細胞陰陽師0)

「越山敬達」(ぼくのお日さま)

「齋藤潤」(カラオケ行こ!)

森本慎太郎」(正体)

 

先日、渋谷のMIYASHITA PARKで特集パネルを見ていたのもあるが、みんな映画の役とは違った雰囲気でやはり新人で推しとはいえ選ばれただけはある輝きとオーラ。齋藤飛鳥の着物姿と顔の小ささは衝撃の美しさ、赤楚衛二はこれまた若林ネタで売れる前にジャージかなんかで体当たりイベント?に参加していたこと、渋谷凪咲は意外と齋藤飛鳥とは初対面だったこと、越山敬達くんがなんと15歳であと少しで中学校卒業ということ(映画の時よりはるかにイケメン・高身長で今後が楽しみ)、齋藤潤くんも17歳で映画時よりイケメンで「室井慎次2部作(マイワースト)」への出演が汚点にならないか、などが印象に残った。。

 

 

【話題賞

オールナイトニッポンでの投票ということで純粋な映画としての評価とは別物、いつもはいかにも推しの強いファン投票で不思議な結果になることが多いが、今回はその通りとなって帰ってきた。

作品部門:「帰ってきた  あぶない刑事」

俳優部門:  「森本慎太郎」(正体)

 

「あぶない刑事」の話題賞受賞は第12回日本アカデミー賞のとき以来36年ぶり2度目、初回ドラマからは40年ということで、柴田恭兵73歳と舘ひろし74歳のまさにダンディという言葉がふさわしいカッコよさは健在だった、レッドカーペットで銃で撃つマネで盛り上げられるのはさすがだし確かに撃たれてみたい。。

森本慎太郎もドラマでの山ちゃん役や正体での役といい上手くハマれば良い役者になりそう。同じSixTONESメンバーの松村北斗がなぜか主演男優ノミネートされなかったのだが、今後も一緒に頑張っていって欲しい。

あと、今回から「主題歌賞」を新設、その年の最も印象に残る主題歌を担当したアーティストに「主題歌賞」を贈呈することになり、 初の受賞者が「Mrs. GREEN APPLE」(対象作品「ディア・ファミリー」主題歌「Dear」とのこと。本家アカデミーの歌曲賞(書き下ろしの主題歌などの歌曲に与えられる賞)に当たる部門だが、なぜ今更なのか?本当に値するのか?今後も正式に続けていくのか?疑問点も多い。ミセスの楽曲は書下ろしだし素晴らしいので文句はないが、他のノミネート楽曲が明かされておらず、ミセス“決め打ち”で人気にあやかって話題賞の一環で十分かとも思わされる。個人的にはハンバートハンバート「ぼくのお日さま」が元ネタだけに映画と完璧にシンクロなのだが・・

あと、それならずっと言われている本家にある衣装デザインやメイクアップやヘアメイクなど映画を作る上で重要な“裏方”の人たちにスポットを当てた賞も今後の映画界のためにもしっかりと設けて評価すべき。