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2020年 邦画ベスト(個人賞)

◆2020年 邦画ベストの中から個人賞(監督・脚本・主演男優女優・助演男優女優)を選んだので発表していきます。

ちなみに昨年2019年の邦画ベスト(個人賞)はこんな感じでした。さて、今年はいかに? 


 

 

 

【監督賞】

【第1位】大林宣彦「海辺の映画館 キネマの玉手箱」

【第2位】河瀨直美「朝が来る」

【第3位】黒沢清「スパイの妻 劇場版」

 (次点)深田晃司「本気のしるし 劇場版」
(次点)HIKARI「37セカンズ」、山拓也「佐々木、イン、マイマイン」

  

大林監督は集大成でありつつ描きたいテーマや映画そのものに挑戦し続けてきた実績と、これから継承していく制作陣や観客たちに希望を託した映画の未来に。

河瀨監督は役積みさせた役者陣と独自の映像美で、難しいテーマを今までよりも分かりやすく開かれた形で訴えかけてきた。

黒沢監督は映画を作る教科書のような完成度で新たな黒沢ジャンルを開拓して世界に認められたのはさすが。

深田監督もカンヌが正式開催されれば何かの賞を獲っていたであろう。HIKARI監督と内山監督も新人ながら新しい独自の感性でのこれからの期待が膨らむ作品だった。

 

 

 

 脚本賞

【第1位】濱口竜介、野原位、黒沢清「スパイの妻 劇場版」

【第2位】野木亜紀子「罪の声」

【第3位】足立紳「アンダードッグ」「喜劇 愛妻物語」

(次点)深田晃司、三谷伸太郎「本気のしるし 劇場版」
(次点)河瀨直美、高橋泉「朝が来る」

 

黒沢監督に師事する二人の持ち込み企画だけあって、戦争史・映画史まで盛り込んだ新たな黒沢映画としての愛のドラマと言葉へのこだわりや背後に隠れた深い意味を考えさせてくれた見事な脚本だった(濱口監督としての世界基準の新作も楽しみ)。

いま最も充実しているであろう野木脚本は分厚い原作を万人向けにしっかりと再解釈して提示した骨太作品。足立脚本もさすが大御所の安定感で2本とも正反対ながら見ごたえ抜群。

本気のしるしは漫画原作を大胆な解釈で見事に現代化し後半での伏線回収まで対比構造に感心。朝が来るは時系列を混ぜながらも変化する過程と人生の脆さ不可逆性の儚さとリンクしていた。

 

 

 

【主演男優賞】

【第1位】森山未來「アンダードッグ」「オルジャスの白い馬」

【第2位】草彅剛「ミッドナイトスワン」

【第3位】高橋一生「スパイの妻」「ロマンスドール」

(次点)小栗旬「罪の声」
(次点)仲野大賀「泣く子はいねえが」「生きちゃった」「静かな雨」、助演:「MOTHER  マザー」「#ハンド全力」「今日から俺は!劇場版」

 

森山vs草彅どちらも甲乙つけがたいが、物語性と演出の好みで未来に、ボクサーの肉体改造はもちろん日常の細かな仕草や変化していく背中や全身で語る感情表現が素晴らしかった。

草彅剛は役に完全に同化しつつ孤独と葛藤の中で母性に目覚めていく変化と空気感は彼しか出来ない領域に入っていた。高橋一生はインテリで穏やかながら内に秘めた底知れなさで本当に騙しているのか愛なのか?ポーカーフェイスがハマり役。

小栗旬はいつもの?過剰な演技が控えめでさりげないながら熱を帯びた存在感が良かった。そして今後は主演助演どちらも担うであろう仲野大賀はこれだけ多くの作品で全てを見事に演じ分けて成りきっていたのはたゆまぬ努力もあるはず。

あと「本気のしるし」の森崎ウインは完璧なハマり役で代表作間違いなし。

 

 

 

【主演女優賞】

【第1位】水川あさみ「喜劇 愛妻物語」「滑走路」 助演:「ミッドナイトスワン」「アンダードッグ」「グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」

【第2位】長澤まさみ「MOTHER マザー」「コンフィデンスマンJP プリンセス編」

【第3位】蒼井優「スパイの妻」「ロマンスドール」 助演:「おらおらでひとりいぐも」

(次点)永作博美「朝が来る」
(次点)土村芳「本気のしるし  劇場版」、助演:「MOTHER  マザー」

 

水川あさみはだらしない身体に太った赤パン姿で夫に浴びせる辛辣でこれでもかの罵倒の連続ながら、心のどこかで夫を信じ期待している芯の強さを悲喜交々をまとわした、一方で「滑走路」での正反対の役や他の助演を含め今年は彼女の年だった。

長澤まさみは自堕落でありながら魅惑的な毒親で観客を絶望に落とし込むような翻弄ぶりで新境地での挑戦(まだキレイすぎた感はあるが)とコンフィデンスマンのコメディアンヌとしての安定感はさすが。

蒼井優は時代掛かったセリフ回しや意識したオーバーアクト気味な昭和女優としての演技は、この世界観に見事にハマっていて彼女しか出来ない。

永作博美は役積みで芝居を超えて夫婦間の苦労や彼女の背負った人生を好演、土村芳はあざとさが見えてしまうと破綻してしまう天然の難役を自然に演じていた。

 

 

 

助演男優賞

【第1位】宇野祥平「罪の声」「本気のしるし 劇場版」「37セカンズ」「星の子」「喜劇 愛妻物語」「事故物件 恐い間取り」「酔うと化け物になる父がつらい」「パラダイス・ロスト」

【第2位】成田凌「窮鼠はチーズの夢を見る」「弥生、三月、君を愛した30年」「糸」「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」

【第3位】勝地涼、北村拓海「アンダードッグ」

(次点)北村有起哉「本気のしるし  劇場版」「浅田家!」「生きちゃった」
(次点)石坂浩二みをつくし料理帖

 

間違いなく宇野祥平ダントツ、「罪の声」では一瞬にして尋常じゃない重苦しい雰囲気で観客を底なし沼に引きずり込んだ主役を食う演技、「本気のしるし」での一筋縄ではいかぬ怪演、その他多くでの圧倒的な存在感は増すばかり。

成田凌は作品ごとに上手くなって演じ分けも板についてきたが、窮鼠でのわずかな仕草や表情で感情の機微を表し女性以上の色気と激愛ぶりは誰でも落ちてしまう有無を言わさぬ説得力。

アンダードッグの二人も夢も芸もない中途半端なチャラい2世の足掻きぶり、天才ならではの光と影・過去と現在の切り替えがそれぞれ見事。

北村有起哉は極悪のようで一番マトモな狂言回し役を彼にしか醸し出せない空気感で、ベテラン石坂浩二のさり気ない江戸ダンディズムと人間味のにじみ出る円熟さ。

若手では「his」「佐々木、イン、マイマイン」で準主役の藤原季節もこれからの期待感に溢れていた。

 

 

 

助演女優賞

【第1位】蒔田彩珠「朝が来る」「星の子」「#ハンド全力」

【第2位】渡辺真起子「37セカンズ」「浅田家!」「風の電話」

【第3位】ベッキー「初恋」

(次点)浅田美代子「朝が来る」
(次点)神野三鈴「37セカンズ」

  

蒔田彩珠の末恐ろしさ、若者が抱える心情や大人のように器用にふるまえず、孤独で複雑なまま抱え込む辛さをリアルに繊細な表情の変化で表現していく完全にもう一人の主役になっていた。

渡辺真起子は酸いも甘いも知り尽くした人生の先輩として頼れる姉御を粋にカッコ良く絶妙な距離感で主人公に影響を与えていた。

ベッキーはキャスティング・タイミング完璧で、あの経験を活かして糧に想像以上にぶっ飛んだはっちゃけさで暴れまくる爽快さ。

浅田美代子は養子縁組ヘルパー代表を素顔をさらして優しく見守る手堅い演技、神野三鈴は世話が生きがいになって親離れできない本当の親子のように体当たりの熱演。

 

 

 

【新人賞(男優)】

【第1位】奥平大兼「MOTHER マザー」

【第2位】上村侑「許された子どもたち」

【第3位】下倉幹人「アイヌモリシ」

 

【新人賞(女優)】

【第1位】佳山明「37セカンズ」

【第2位】服部樹咲「ミッドナイトスワン」

【第3位】芋生悠「ソワレ」「#ハンド全力」「37セカンズ」

【第3位】小西桜子「初恋」「ファンシー」「佐々木、イン、マイマイン」「映像研には手を出すな!」