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「ザ・フォーリナー/復讐者」 ★★★ 3.0

◆こんなジャッキー見たことない、一切笑わない死んだ目のダークサイドジャッキー、さすがの007も最恐ストーカーにはお手上げ?

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突然の無差別爆破テロで愛娘の命を奪われた元特殊部隊員の怒りと哀しみの復讐物語。ジャッキーが主人公のアクションバリバリの復讐ストーリーを期待すると少し違うので注意が必要。実際には北アイルランドIRA絡みの社会派ミステリー的な側面も強く、元過激派で副首相ピアーズ・ブロスナンのパートの方が重要だったりする。

「チャイナマン」っていう原作小説があるらしいが、ストーリとしては結構粗めで、イギリスとアイルランド、テロリストと政治家の関係が複雑に入り組んだ騙し合いの中、アジア人の外部者(フォーリナー)のジャッキーが引っ掻き回す(少し空回り感もあり)。

物語の核となるのが副首相と他のIRA幹部とのゴチャゴチャな組織内紛であり、正直ラストまでジャッキーのやってることは「犯人の名前を知っているであろうピアースにひたすら粘着」という地味で完全にストーカー的なのだが、逆に新鮮で面白かった。

 

とにかく、ジャッキーの目が終始死んでいて一切笑顔が無かったのにはビックリ、虚無的に追い回すジャッキーは復讐者というより同じ質問を繰り返すイカれたサイコスリラーな追跡者。あまりしゃべらない分、表情で語っていて、目の奥に宿る哀しみと復讐の炎を感じさせる佇まいが素晴らしかった(一気に老けたなあと思ったらさすがに老け顔メイクだった)。

要所で挟まれるアクションも元軍人設定なので、手際よく身近な物で爆弾を作ったり、森に誘い込んで仕掛けたトラップで敵を潰してゲリラ戦を繰り広げる姿は完全に「ランボー」だった。でも屋根から落ちる時のリアクションやイスを使った攻撃、見事に砕け散るガラスの窓や机、パンチの連打など少しジャッキーのコメディっぽさも残っていて妙な安心感もあって良し。

 

対するブロスナンも何とも言えないクセモノ感で表裏ありながら対立する間で苦悩する姿が良く出ていた。終盤ジャッキーによる執拗なストーキングにいい加減うんざりする感じに同情した、まるでハロウインブギーマンのように神出鬼没な奴に執拗に名前を教えろと迫られるのは恐怖しかないだろう(しかし一国の副首相なのにセキュリティ甘すぎ)。

ジャッキーとピアース・ブロスナンの競演となれば、ひと昔前なら大騒ぎになったはずだが、2年越しに日本でようやく公開されてそれほど話題になってないのが昔ながらのジャッキーファンとしては少し寂しくもあり。

監督は、マーティン・キャンベル、永らく低迷していた007シリーズを復活させた「ゴールデン・アイ」など、お得意のそつのないアクション映画としては佳作かな。

 

※ここからネタばれ注意 

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【(ネタばれ)ラスト・考察】

ラストは犯人のアジトに介入して好き放題暴れまくったけど、いざ復讐のシーンが案外あっさり終わったので、もう少し盛り上がりが欲しかったかな。警察からの「ドラゴンを目覚めさせるな」ヤバい奴なので放っておこう(何か使い道があるかも?いつか利用しよう?)となったが、さすがに復讐も終わったあとで第2弾はないだろうなあ・・

結局、ピアーズ・ブロスナンは悪い政治家には違いないが、ひたすらストーキングされながら、奥さんや仲間、愛人にまで騙され造反されて、いろいろと散々な目に遭った挙句、ネットで恥ずかしい悪事を公開されて終わりという・・しょぼさも含め少し同情してしまった。。

あと、男女みんな浮気しすぎ・乱れすぎ、出てくる女みんなベットシーンで隙あらばハニートラップを仕掛けてくるし。そんな中、ジャッキーとお店の女性の最後のハグには、二人の過ごしてきた時間の濃さ、互いへの信頼の深さが感じられて良かった。復讐の果てに何もないわけではなく、独りぼっちでもなく、生きていけると光を感じさせるラストだった。

 

エンドロールは、さすがにこの内容なので、恒例のNGシーンは当然無かったが、なんとバックに流れるのは情感込めて歌い上げるジャッキーの曲だった・・微妙に曲調含め安っぽくて合ってなかった(やはり楽しい映画のエンドでNGシーンと共に歌われるイメージが強いので)。

ジャッキー65歳・・・まだまだこれだけのアクションをこなせるのは流石としか言えない、次の作品も期待しつつ。今作をまるまるリーアム・ニーソンに入れ替えたら、全然違ったテイストの映画になるんだろうなあとも思いつつ。「エクスペンダブルズ」への参戦もぜひお願いします!