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「X-MEN ダーク・フェニックス」 ★★☆ 2.6

◆X-WOMENも残念ながらジーンとこず・・立つ鳥(不死鳥)跡を濁す?、改めてウルヴァリンアベンジャーズの凄さを実感

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X-MEN」シリーズの7作目、20世紀FOXによる最後のX-MEN作品として原作コミックでも重要な作品として名高い「ダーク・フェニックス サーガ」を映画化。これまでの「X-MEN」シリーズや「デッドプール」「ローガン」などで製作や脚本を務めてきたサイモン・キンバーグが監督デビューを果たした。

今まで脚本を書いていた人が監督をする不安の上に、製作途中でいろいろトラブルや大人の事情があったようで、最終作としては非常に残念な作品となってしまった。アメコミ実写化のパイオニアらしからぬ、MCUと比較するとオープニングや演出も、全体的に雑さを否めず、興行的にも赤字の大爆死で、日本でも話題性に欠いていた。

 

前半はシリアスな感じで進み、いつもの仲間同士の関係に亀裂が入ったりダークな感じで良く出来ていたが、後半からいろいろと強引で雑な展開となり特に盛り上がりも少なくラストもスッキリしないまま・・やはり初期の三部作につながる展開にしてくれないと消化不良で終わってしまう。

「フューチャー&パスト」のせいで過去と未来がごちゃごちゃになって、上手くつなげるのは難しいとは思うが、やはり「アベンジャーズ エンドゲーム」の完璧すぎるこれまでのつながりや伏線回収を見てしまうと、全体的な統一感・プロデュース力の無さが浮き彫りになってくる。

 

元々強大な力を持ちながら、制御にやや不安のあるメンバーのジーン。宇宙で人命救助の際に浴びたエネルギー波をきっかけに、彼女の体に異変が現れる…。物語の比重がジーン一人に寄りすぎていて、地上の全生命体を滅ぼしかねない最大の脅威のはずなのにあまり危機感が伝わらず、魅力だった群像劇の要素もほとんど感じられず。それぞれのキャラの処理も雑で、いつの間にか消えているキャラもいて、20年間の締めとしては寂しい限り、これならいっそ「アポカリプス」で完結でも良かったくらい。。

 

現実の人種・ジェンダー問題や多様化のメタファーである「ミュータント」と人間の共存という、昔から掲げてきたテーマも活かしきれず。最終章なのに結局、人間と分かり合えたのか?も分からず・・。その中で迫害する側(人間)、迫害されつつも共存を願う側(X-MEN)、迫害する側を滅ぼし楽園を作る側(マグニート勢)の三つ巴の葛藤が見どころなのに・・今作は人間は全然出てこないし、ジーンを殺す気満々だったマグニートも呆気なく心変わり迎合してるし、ジーンも意外とあっさりチャールズを許してるし、登場人物たちの心情の変化に説得力がなく、軸がブレブレで物語に入り込めず。なので、せっかくの女性陣の活躍も、レイブンの「ここでは女が男を守ってる、X-WOMENね」の台詞が薄っぺらく聞こえてしまう。

 

ただ、アクションは素晴らしく、特に最後の列車内の戦闘シーンは、各々のキャラの武器を最大限に魅せた鳥肌もののベストバトルだった。合わせて相変わらずハンス・ジマーの作り出す音楽も素晴らしかった。

また、キャスト陣もみんな本当に素晴らしく、今まで本当にお疲れさまでしたと伝えたい。おそらくMCUに移ったらキャストは一新されるだろうし。特に今作は、マイケル・ファスベンダーが演じる新版のマグニートーがとにかく強くカッコよく悲哀を感じる魅力的なキャラクターで、ヒュー・ジャックマンウルヴァリンの代わりに作品に華を与えてくれた。

 

【ラスト】

後半クイックシルバーが退場して一切現れなかったのは残念だが、ラストは正常に戻ったジーンが圧倒的なパワーで自らを犠牲にして地球を救う。

しかし、今作のヴィランであるジェシカ・チャスティンは、初の宇宙人キャラならもう少し爪痕を残してほしかったし、アッサリやられすぎ。結局、何星人で何を目的にして何がしたかったのかが全く説明されないまま、単なるジーン物語のお飾りでしかなかった(ジェシカ・チャスティンの無駄遣いもいいところ)。

 

ジーンが最初の熱放射を吸収した時は全くの無傷だったのに、最後の熱放射を放出した時は跡形もなく蒸発するのはなぜ?という疑問は残るが、最後は地球を救うため文字通り不死鳥となった(なる必然性は?、また復活する可能性もなくはない?)。

あげく学園の名称を「恵まれし子らの学園」から「ジーン・グレイ学園」に改名して終わったが、いやいやシリーズ最終章としてこれでいいのか?(単体としてはジーンが主人公だからいいけど)。普通に考えれば、制御しきれないで殺す理由の無い一般人も大勢殺しているのでは・・そして、誰よりも仲間のこと、子供たちのことを考えていて、今作で命を落としたミスティークやレイブンをガン無視?して、名前も冠されず銅像もなしでいいのか。。

エンドロールの後、少し期待していたけど何も無く、オープニングにもエンディングにも例のX-MENのテーマが流れなくて残念。

 

次作がどういう形になるかは全く分からないが、ディズニーに買収されてマーベルに戻ってきたので、今後の新たなX-MENの展開に期待は出来る。本当にX-MENアベンジャーズに融合するのか?、ジーンが入ったらもう最強すぎて、匹敵する敵を作るのが大変そうだ。あと、キャプテン・マーベルとどっちが強いか、宇宙一天下武道会で闘って欲しい・・