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「トイストーリー4」 ★★★☆ 3.8

「ウッディー番外編」賛否両論問いストーリーわれわれの方がオモチャにされた感あり、オモチャから本物のヒーロー未知の旅へ「自分の人生をいかにして歩み続けるか?」

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オモチャというテーマを深く追求した圧倒的な傑作「3」から約10年ぶりのまさかの新作、あの「3」の完璧とも言える締めくくり後の続編を誰が望むのか?どう展開するのか?、期待と不安が入り混じる中で恐る恐る鑑賞。なるほど賛否両論になるのも納得、今までをある意味”旧三部作”とするかのような内容とラストに驚きつつ、「3」の後に作るならこれしかないとも思わされた意欲作だった。

監督も変わってウッディとボーをメインに新キャラクターが存分に活躍している分、バズやジェシーが脇役になってしまったが、CG映像の表現や演出、ストーリーの面白さはさすがピクサーで誰でも十分に楽しめるクオリティ。今作は特に内容といい終わり方といいより大人向けになった印象で、アイデンティティの喪失と再発見、多様性や強くてカッコイイ女性像など今の時代・社会性も反映されていた(子供の目線だとどう感じるのだろうか?)。

「オモチャの幸せは持ち主に愛されること」というトイストーリー不変のメッセージから人生・生き方を問いかける今作・・とにかくオモチャに対する考え方、今までのキャラへの愛着度により人それぞれ思うところが違うだろうが、個人的には「3」には及ばないものの新たなリブートもの(「ウッディー番外編」)としては良い作品だったと思う。

 

※ここからネタバレ注意 

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【(ネタバレ)演出・考察】

新たな監督は「インサイド・ヘッド」で脚本を担当したジョシュ・クーリー監督、脚本は引き続き「トイ・ストーリー」全作を手がけてきたアンドリュー・スタントン。全体的にアクションが派手でテンポも良い。CG映像は更に本物のオモチャ感にレベルアップしていて生き生きと描かれている、ボーの陶器製?の身体の質感や特に雨のシーンでオモチャに当たって跳ね返る水滴の質感などのリアリティが本当に凄まじい。

新キャラのフォーキーの成り立ちや動きがかわいかったが、デューク・カブーン(声はキアヌ・リーブス)のジョン・ウィックとは違った微妙なスタントマンぶりが最高だった。ところどころ「エクソシスト」「フランケンシュタインの花嫁」などのオマージュもあって楽しいシーンも多く、全体のエンターテインメント感あふれる完成度はさすが。

  

新キャラのフォーキーのとウッディとの対比が見事、フォーキーは持ち主ボニーに一番愛されるオモチャなのに自分のことをゴミだと思い込んでいる、ウッディはそんなフォーキーにオモチャとしての役割を懸命に伝えようとするが、自分自身はもうオモチャとして求められていない現実を突きつけられる。これは、子供や大切な人が離れていくなどして自分の役割が終わった後、どのように“その後”を生きていけばいいのか・・という今作のテーマに結びついていく(アンティークショップの名前も「セカンドチャンス・アンティーク」)。

また、ボーとギャビー・ギャビーとの対比も見事、アンティークショップで故障して役割を失っているギャビー(カブーンも)はウッディからボイスボックスを奪い(ウッディは過去からの決別を決めた)、最後には新たな持ち主と出会い初めてオモチャとしての役割を得ることになる。一方でボーは電気スタンドの人形としての役割を終えて、外の世界で自由闊達に過ごし新たな役割を見つけながら生きてきた経験と説得力で、ウッディの新たな決断を促すことになる。どちらが正しいとかではなく、どちらの生き方も素晴らしいし、何より自分の生き方を自分自身で考えることが大事なのだ。

 

【(ネタバレ)ラスト・考察】

今までは何度ピンチに陥ってもオモチャの使命を果たすため必ず子供の元に戻ってきたウッディ・・それを十分に理解していながら、誰にも必要とされなくなった時の自分の存在意義への葛藤を繰り返す。「オモチャにも人生?があり一度の人生を謳歌する権利があり、広い世界を見る必要がある」自分の力で人生を切り開き逞しく成長したボーの体験に基づく問いかけが響き、盲目的に持ち主の愛を欲していたオモチャとしてのアイデンティティが覆される。

ラスト、バズたちと合流したウッディは、信頼できる仲間たちとフォーキーにボニーを託し家には帰らず、ボーと一緒に外の世界に旅立ち自分の人生を生きる「セカンドチャンス」を決断する。自分が正しいと信じる道へ進むこと、今まで築いてきた信頼関係があるからこそバズや仲間たちも理解してくれて温かく送り出してくれる(バズが背中を後押しするシーンは涙)。もちろん今までずっと一緒に過ごしてきた大切な仲間が離れるのは寂しいけれど、それぞれの本当の気持ちや幸せを願えばこそ、その生き方は誰にも否定できない。

ただ、仲間たちとの別れの葛藤はもっと描いても良かったのでは、今までの関係を思うと少々あっさりしすぎのように感じてしまった(オモチャだからいいのか?)。

 

賛否両論あるラスト、今まで見てきたファンにとっては納得できない人も多いだろう・・持ち主に必要とされなくなったら勝手に出て行っていいのか?これまで築いてきたバズとの友情や昔からの仲間との絆よりも優先すべきことなのか?(友情より愛情というわけではないが)。

でもあの完璧に終わった「3」の後としては、この展開とラストしかないだろう、前と同じパターンでは10年も空けて作る意味がないし、新たにシリーズ化していくためにも新たな旅立ちが必要だったとも言える。 

 

「宇宙の彼方へ、さぁ行くぞ!」ラストのセリフが、昔から見守ってきたトイストーリーファンには複雑ながら泣けてくるはず、狭い世界から大きな世界へ、オモチャから本物のヒーローへの旅立ち、ウッディの新たなもとい・ふといストーリーに期待していきたい。

とりあえず、自分の子供たちのオモチャをもっと平等に大切にしよう・させようと思いつつ、捨てられないで溜まっていくのも困ると思いつつ(出来るだけ大切にしてくれる人を見つけて引き継ごう)・・もしかしたらウッディみたいに秘かに部屋から出て行って自分の人生を歩んでるオモチャがいるかもしれない、そんな想像をしながらそれぞれのトイストーリーを作っていくのもいいだろう。。