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「ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん 劇場版」 ★★★☆ 3.9

◆娯楽を超えたゲームの力よ! ゲイマーおっさんずラブ吉田鋼太郎の魅力が光輝く、不器用親子の絆とオンラインゲームあるあるに笑って泣いてやりたくなるぴょん!

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ファイナルファンタジー」のオンラインゲームを通して父との絆を取り戻していく親子の話で、評判を呼んだ人気ブログをドラマ化(大杉漣千葉雄大)に続いて映画化。クスッと笑えて温かくてほっこりできる悪い人が1人も出ない作品なので万人におススメできるが、特に父親との微妙な男同士の距離感を感じる息子にはグッとくるはず。

自分を含めFFやオンラインゲーム自体に馴染みがなくても分かりやすく、初心者の父のキャラクターと共にゲーム上での二人のやり取りに笑いつつ、親子の絆の再生というシンプルなテーマが心に響いて、家族との絆の大切さを思い出させてくれる。

ストーリー展開は予告編で予想できる通りで何となくオチも含め分かってしまうが、話し方を忘れてしまった不器用な2人の一生懸命さに前半は面白くて後半は感動して泣けること間違いなし(自分は泣くまではいかなかったが)。

 

オンラインゲームあるあるネタがうまく笑いに繋がっていて、とにかく父親役の吉田鋼太郎が最高でハマり役すぎる(現実でも大のゲーマーらしい)、仕事一筋で無口で何を考えているのか分からない気難しそうな父親ながら、いざゲームの世界に入ると別人のように可愛くなりキャラが崩壊していくのには笑った。

アバターの名前を考えた結果「井上」にして変なポーズを多用し無駄にジャンプしたり語尾に「ぴょん」を使い始めるし、相手から話しかけられて返事の仕方が分からずコントローラーに話しかけたり、コントローラー取り上げられて拗ねる姿が笑えて愛おしい、まさに「おっさんずラブ」。

 

息子役の坂口健太郎も少し不器用ながらいい奴感が染み出ていて、父親の事を知りたくて自分の正体を隠してオンラインゲーム内で話かけながらゲーム外の家ではゲームの攻略を教えてあげる。このように典型的な日本人の親子の姿だからこそ、観ている自身と重なる部分がどこかあり共感してしまうのだろう。

ヴァーチャルの世界だからこそ言える本音、自分が社会人になって分かる父親の想いや苦悩、知られざる父親の姿、深まっていく家族の絆・・自分はあまりゲームをしないのだが、たかがゲームされどゲームの素晴らしさを感じた。社会問題でもある引きこもりなどで会話さえない親子も試してみる価値はあるのでは。

 

※ここからネタバレ注意 

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【(ネタバレ)演出・コメント】

演出は所々ツッコミどころも多いし、若干の安っぽさは感じるが、実写パートとFFゲームパートのバランスも良く、FFの世界を見せすぎないのも良かった。オンラインゲームの楽しさが十分に伝わってきて、本作を観て「ファイナルファンタジーXIV」を遊びたくなる人が増えそうだし、販促マーケティング映画としてもかなりいい出来なのでは。ゲームのキャラクターがシーンに合わせた動きや話をしていくのは見事で、ゲーム上なので表情は大きく変わることはないけど、その分観ている側がその行間を埋めていくことで感情移入がより深くなっていた。

 

正直、主人公がFFゲームを楽しみつつ仕事もこなして評価され、家族関係も恋愛もすべてが上手くいくのは映画とは言えあまりにも出来すぎかなと思う、その主人公を素直に応援し認める会社の仲間やゲーム世界の仲間も理想的すぎて・・特に広告会社の設定なので現実とのGAPを感じてしまう。

父親が会社を突然辞めた理由も最初の段階で容易に推測できてしまうし、主人公と父親との衝突シーンもなくお互いのゲーム上の助言だけで全てがトントン拍子で進んでいく・・映画の尺に収める為に話を詰め込むのは仕方無いし、ゲーム内のチャットがメインになるのも題材からして当然だが、心情や身の上話をまんま説明的に語っていて、もう少し次第に心を開くような心理変化の描写が欲しかった。

また、父と息子以外のキャラの存在感や話が薄くも感じた、父と娘の関係(山本舞香のパイプ役は良かったがお笑い芸人の彼氏が微妙)、先輩社員との関係などサラっと流れていき、同僚女子(ヒロインと言えるのか微妙)との都合の良い展開と恋愛面の心情描写の無さなど、あまり効果的には働いてなかった気がした。

 

【(ネタバレ)ラスト・コメント】

約束を守るため病気の苦しさを押し通して、最後のボスキャラをみんなで討伐しに行くシーンはさすがにアガった(ネットカフェでは騒ぎすぎだけど)。最後には「光のお父さん」が「光の戦士」となって自分の誰かのヒーローとして生きる希望を得るところ、父の知らない一面ではなく知っていたけど忘れてた一面を思い出すところはグッときた。

ゲームは子供のもので害があるという偏見が少なからずある中で、ゲームを通じて人の優しさに触れ成長していく姿、関係を築いていく姿を押しつけがましくなく伝えてくれる良い作品だった(今作と比べると「ドラゴンクエスト ユアストーリー」の酷さが際立つ)。

最終的にはface to face の関係も大事なのは言うまでもないけど、オンラインゲームのようなコミュニティも確かに魅力があって人間的・社会的にもコミュニケーションを学べる場なのだと改めて思った。

みんなで親子で一緒に思いを共有しながら成し遂げることはなかなか無い中で一つの可能性を見つつ、普通にこれから定年退職者の新しい居場所になるのかも、父親が短期で飽き性でなければプレゼントして進めてみるのもいいかもしれない。自分も定年後に備えて?始めてみようかな・・