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「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」 ★ 1.0

◆【酷評注意】映画の熱量を上げろタコ!なに言いたいのか全然わかんねぇんだよ!! 

 盛大ドーピングで映画失格! 

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奇才、三木聡監督による声帯ドーピングの世界的ロック歌手シンと、声が小さすぎて聞こえない歌手ふうかの2人が出会うことで始まるシンの声を巡る争奪戦を描いたロックコメディ。

三木監督の作品は、個性的な役者陣とゆるくてシュールな小ネタギャグなどで、見ている人を完全に置いていくスタイル。好みが激しく分かれるのだが、個人的には「亀は意外と早く泳ぐ」「インスタント沼「転々」やテレビドラマの「時効警察」はかなり好みだった。ただ、前作の「俺俺」がいまいちハマらず、そこから劇場作品として5年も期間が空いたので少し不安だったのだが、残念ながらその嫌な予感が的中してしまった。

おなじみのキャストは魅力が薄く、ゆるーい空気、小ネタはあったが今一つ笑えず。いかんせん無理やり過ぎる展開でのストーリーが雑過ぎるのと独りよがりの映像演出が全て空回りしていた。

観る人を突き放してでも自分が撮りたいものを撮っているのはいいが、今の時代の感性と距離を感じてしまった。何となくだが、最近ギャグ満載の福田雄一銀魂など)が人気なので焦ったのかとも思ったり・・(こちらはシュールさより下らなさ分かりやさを重視なので目指すところは違うが)。

 

「やらない理由を探すな」など良いセリフも無くもないが、キャラクターや話にその言葉に見合うだけの説得力や葛藤が描かれてない。

多少はプロットの理屈や整合性は外れてもOKだが、このテイストで後半の感動させたいような展開は中途半端過ぎる。更に音楽映画なのに音楽の魅力やパワーも描けておらず、突き抜けるようなバイタリティやパワーが足りないのも問題。結局、何をしたいのか分からないダラダラグダグダした内容で、長々しいタイトル同様、正直見ていて長く感じた。

 

あと、主人公であるふうか(吉岡里帆が悪いわけではないのだが)のキャラクターの弱さ、声が小さいだけで影が薄く、もう少しキャラを立てて欲しかった。シンがなぜそこまでして、ふうかを変えようと思ったのかが伝わってこない、本人が声の小ささに本気で悩んでないし、音楽へのこだわりもなくいちおうソロでも成り立っている。妹のために歌ってるとか伏線かと思いきや、妹は出てこないし、実はシンの妹だった・・なんてこともなかった。。

やたらと長い謎の車並走キスシーンも笑うとこなのか?感動するとこなのか?微妙だし、というか二人のそういう関係含めいろいろと唐突すぎ。吉祥寺のメイン風景を楽しんでいたのに、後半はいきなりの韓国が舞台になるし(声帯ドーピング=整形?)。

 

カメラワークは特に意味もなく、ズームしたり傾けたり回転させたり、かなり酷いので、苦手な人は注意が必要なレベル。

役者としては、吉岡里帆は悪くはないが、主役としては麻生久美子と比べたらまだまだかな。阿部サダヲはまあ、いつもの感じだけど、橋の上から川へ飛び降りるシーンは「彼女がその名前を知らない鳥たち」へのオマージュなのか?

定番の松尾スズキ(ザッパおじさん)とふせえり(デビルおばさん)のコンビはキャラクター含め楽しめた。「いーのいーの、ブライアン・イーノ」は好き! 千葉雄大のなかなか見られない体の張り方は見もの!

あと、八十八ヶ所巡礼が出ていてビックリ、シンのライブではやはりKenKenはスゲーかっこいいし、楽曲自体はHYDEあいみょんが参加しただけあってクオリティはとても高かった。吉岡里帆の歌はそこそこ上手いがインパクトが弱いかな。

 

本作は残念だったけど、今年12年ぶり!に復活するTVドラマ「時効警察」の新作には期待しているので、本作の評価は「誰にも言いませんよ」カードを渡して待っていることにしよう。。