◆ディスり・イズ・ダ・さいたま、ひたすらくだらない本気の茶番劇に誰もがぶっ翔んで埼玉に住みたくなるはず？、海がなければそこらへんの草でも食わせておけ！
「パタリロ」でも有名な魔夜峰央の原作「翔んで埼玉」のまさかの実写ギャグ映画化、邦画史上最大の茶番劇にふさわしく、最初から最後までひたすらくだらないを突き通す作品。埼玉を中心に関東圏の人しか分からないローカルネタのオンパレードなので、他の地域の人たちがどれだけ楽しめるのかは分からないが、とにかく金をかけて本気でギャグ映画としてバカやっている姿勢は素晴らしい。
自虐的で痛快なディスり合いによるナンセンスな笑いは、誰もが爆笑まではいかないけどクスクス・ニヤリとは出来るはず、真面目に見たら負け。まんまとマーケティング戦略に乗せられ話題になりながら全国的に大ヒットしたのは、いかにも今の日本映画業界らしいが、個人的にはさすがに1800円を払う気はなく、レンタルでなら十分に楽しめるレベル（劇場はじめ大人数で笑いを共有してこそ真価を発揮する作品でもあるが）。
とにかく、とことんフザけた話をとことんマジメに演じる役者たちに尽きる、キャスティングが完璧過ぎる上に、やり切る役者魂、2次元から仕立て上げるメイクと衣装などスタッフを含め全力でおバカを徹底している。
二階堂ふみを男役にしたことでＢＬモノとしても違和感なし、そこにGACKT、伊勢谷友介、京本政樹という“濃い目の美形”を揃えることで腐女子以外も取り込み、ＢＬ要素を普通に繰り広げるのが面白かった（主役の二階堂ふみとGACKTが沖縄出身なのは狙ったのか？）。
埼玉ディスり差別ギャグに関しては、そこまでいじるかというくらい徹底して誇張して描いているので、不快になることもなくバカバカさの方が突き抜ける。かなり細かい小ネタが散りばめられているので、何度か見て拾っていくのも楽しいはず（伝説の千葉県人役でジャガーさんも映ったし）。埼玉出身の人たちは自分ごととして捉えていくのでもっと面白いのだろうなあ、羨ましいなあとも思いつつ。
そして埼玉だけでなく千葉、群馬、茨城、栃木、横浜、東京一部もディスっており（特に群馬は酷い）、最終的には出身地で差別する方が悪いと着地していくので、「東京至上主義からの脱却＝地元への誇りがあれば十分に幸せなこと」のメッセ－ジは多少なりとも共感できるのでは。※群馬なら同じく「お前はまだグンマを知らない」の方がより内容も豊かに群馬愛を描いていたのでおススメ。
個人的には、もっとハチャメチャでぶっ翔んでいて、色々な仕掛けや演出があるかと期待していたので物足りなく、最後まで大茶番を貫いて欲しかったかな。。
あと、出来れば埼玉VS千葉のもっとコアなディスり合戦を見たかった・・有名人対決だとYOSHIKI出した時点で千葉の圧勝なのだが（対抗馬がTHE ALFEEの高見沢）・・小島よしおと小倉優子が出てすかさず弱い！ってとこは爆笑してしまった（まさかのビーチボーイズも）。ご当地キティが名物が何もないので動物のサイの格好をして玉に乗っているダジャレだったのも笑撃。。その後、埼玉と千葉が一致団結して東京に殴り込むという展開も胸熱すぎて涙。。
ブラザー・トム、麻生久美子、島崎遥香の現代パートも内容としては面白かった、現代視点から擦り合わせが出来るという仕掛けも良かった。ブラザートムの車のナンバー「1173(いい波)」でTUBEのステッカー貼ってあったのは海に憧れてる設定かな。
何気にエンドロールで流れる「はなわ」の歌がこの映画にぴったり合っていて最後まで楽しめた。さいたまんぞうの「なぜか埼玉」も懐かしかった。
今の日本、SNSなどでの炎上が日常化して、差別意識や他者を見下すことで自分の誇りを保つような風潮が徹底して叩かれる中、ここまで堂々と差別的な内容を逃げずに表現して見事なエンターテイメントとして仕上げた武内英樹監督とスタッフに拍手（さすが「テルマエ･ロマエ」を成功させただけある）。
結局この映画は埼玉をディスるどころか完全な埼玉愛の映画となっていて、地元や出身地への愛着、好きという気持ちを呼び覚ましてくれる。実際にこの映画が公開されて、どれだけの人たちが埼玉を見直して羨ましくさえ思ったことか。
同じような内容で、関西地方（特に大阪、兵庫、京都、奈良は分かりやすそう）や九州地方（福岡中心）など、それぞれが住む地方で作って欲しいと思っているはず、大ヒットするかは？だけど。。関東だけじゃなくどの都道府県にも独自の性格・特徴があるからネタには困らないはず。
東京、神奈川の人口集中が限界となり、埼玉が受け皿になれるのか？、虎視眈々と日本全国並びに世界埼玉計画が進められている（しまむらもファミマも埼玉から全国展開）という恐ろしさをラストで見せつけられて、他の関東圏が黙っていられるのか・・これからも不毛な？茶番劇は続いていくのか・・
どこに憧れるとか、どこには負けたくないとか様々な思いを抱えつつ、すべてをネタに楽しみながら最終的には自分が生まれ育った街を愛していけばいいのだ！
