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「ハロウィン」 ★★★ 3.1

◆原点回帰の正統派ホラー続編、40年ぶりに殺人鬼ブギーマンと元祖絶叫女王ローリーとあのテーマ曲が「来る~」

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なぜハロウィン本番10月でなく、4月に公開するのか?意味が分からず・・10月の方が圧倒的に観客入るだろうに(何の力が働いたのか?単にタイミングを損ねたのか?)。ジョン・カーペンター監督が産んだ伝説の殺人鬼ブギーマン「ハロウィン」の新作、リメイクかと思いきやオリジナル1作目の続編的内容だった。1作目と同じくハロウィンの日に精神病棟から脱走して、40年ぶりに妹ローリーに会いに殺しに行く王道の話。

見なくても楽しめるが、出来ればオリジナルは見ておきたいところ(レンタルあり)。

 

あの印象的なテーマ音楽とお約束の展開は怖いながら安心感もあり、王道のホラー演出「イチャつく男女はすぐ殺される」「(志村)後ろ!後ろ!」「なぜそっち行くかなあ」「トドメは刺さないと」など特にヒネリもなく、ただ殺していくのみ。多くのキャラが無防備に考えなしに行動に出るのが笑いを誘い、死亡フラグも分かりやすいのが良い。 1作目を意識してか直接的なゴア描写はほとんど無く、個人的には怖くなかったが、それでもR15指定なので苦手な人は注意。

 

ヒロインであるローリーとその娘カレン、孫アリソンと親子3世代が登場して各キャラも面白い、ローリーはかつてのスクリーミング・クイーン(絶叫女王)と呼ばれた女の子から、サバイバル術を磨き家中にトラップを仕掛けるなど最強のババア戦士に進化していたのには一番ビックリしたかも。

正直、マイケルが暴れるまでの前半は退屈だが、オリジナル版へのリスペクト&オマージュがたくさん散りばめられていて、愛が凄く感じられた。個人的にはオリジナル版はもちろん、ロブ・ゾンビ監督版の1作目も好きだが、その後に続くシリーズ(10作?もあり)は少し見ただけで全部は見ておらず。変にマイケルのバックグラウンドなどをいじったりすると面白くないので。


ハロウイン」が魅力的なのは、殺人鬼であるマイケルの殺す動機が全くの謎で、何も話さず何を考えているのか全く分からないところ、ストーカー・忍者並みに隠れたり突然現れてビックリさせたり、圧倒的なパワー・スタミナで何やっても死なないところであり、この設定を変えてないのが良かった。特に今作も町を徘徊しながら、スタスタ歩みより躊躇なく淡々と殺していく様子をステディカムで流れるように撮らえたシークエンスは一番の見どころ(さすがに子供や赤ちゃんを殺すシーンは無かったのは現代版ならではか)。

オリジナルに近づけたせいか撲殺、絞殺かナイフでの刺殺などのパワー系が多く、殺し方にバリエーションが少ない、しかも殺害シーンをしっかり見せてくれず、惨殺された死体が映るというパターンが多いので、個人的には物足りずR15ならもっと攻めても良かったと思った。(ITなどの幅広い層にヒットしているホラーの描写に合わせたのか?)

 

【演出】

テンポに無駄がなく、ブラックユーモアのある脚本も演出も手堅く、昔ながらのドキドキ煽り&突然の驚かしシーンは安心して楽しめた。トイレの個室シーンが一番ドキドキして、終わったあと個室に行けなくなった人も多いのでは。

メインテーマとカボチャのオープニングからのタイトルクレジットは最高、撮影は過度な描写を控えて光と影を上手く使っていた。

音楽は御大カーペンターが自ら手がけていて、やはりこれだねテーマ曲含め古臭さがありながら盛り上がれるのは強み。

役者は、実際と同じく40年待ったジェイミー・リー・カーティスの信念・叫びなど、完全にターミネーター2のサラ・コナーと化したキャラへの入り込みが素晴らしく、ちゃんと過去のトラウマに悩まされる弱さの表現も良かった。ローリーは年老いてさらにパワーアップしていて、バトル映画としても上手く昇華されている。


今作は、ホラー映画ならではの若くて可愛い女の子やおっぱい・エロがほとんど無かったのが少し残念でもあり、この映画らしくもあり。

あと、男性の登場人物がみんな使えない・・父親が最初の方でネズミ捕りの罠を作るのが得意と言ってたのに、普通にあっさり殺されてしまうし、誰も悲しまないのが同じ父親としてとにかく可哀そうで。

監督はデヴィッド・ゴードン・グリーン、「スモーキング・ハイ」「コンプライアンス 服従の心理」「グランド・ジョー」「ボストン ストロング 〜ダメな僕だから英雄になれた〜」などコメディからシリアス、感動ものまで、あまり知られていないが隠れた名作も多く、今作のホラーも含め改めて器用だなあと感心。

 

※ここからネタばれ注意 

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【(ネタばれ)ラスト・考察】

ラストの直接対決はホラーというよりアクション映画になってたが、カレンの射撃時の「\GotchaHappy Halloween Michael!」のセリフは気持ちよくしびれた。

ラストカットの3人は、3世代にわたって血塗られた過去からの精算、やり切った喪失感や哀愁を感じさせ、トラウマを抱えた・抑圧された女性への応援歌としても美しく見えた。

締めは、アリソンの持つ肉切り包丁をクローズアップして続編を匂わせて、エンドクレジット後のマイケルの吐息、で実は死んでない描写も今回もお決まり通りだった。。(死体を確認しないで留めないで確実に止めを刺さないと、まあ絶対に生き返るんだろうが)

とにかく、続編としては理想的なくらい良くできており、新旧ファンも納得できるはずなので、平成最後のホラーとして見ておくのも悪くない作品では。