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「あの頃、君を追いかけた」 ★★ 2.2

◆台湾版を追いかけ過ぎた劣化版、齋藤飛鳥の顔の小ささとポニーテールとユウキ100%裸を愛でるだけ、誰もがきっとペンツンデレされたいはず

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「SUNNY」と同じく、こちらはギデンズ・コー監督の台湾青春映画の傑作「あの頃、君を追いかけた」の日本リメイク版。

オリジナルは冒頭から徹底して下ネタ全開で男子たちのおバカ度も激しく、90年代のもたらす時代の空気感とともに高校生の性春を描いていた(だからこそラストへの展開が活きる)。が、今作は低年齢層向けの恋愛ものとして、下ネタもおバカ度もかなり控えめとなっている、それ以外は台湾版を忠実にリメイクし過ぎていて、様々な「大人の事情」も入り込み(台湾上映・プロモーションなど)、非常に不満の残る作品となってしまった。

 

構成は全てを均等に作り上げていて、緩急はほとんど無く、登場人物の感情変化の描写も雑、更に台湾版をそのまま直訳したかのように、重要なセリフや転換場面などの言葉や単語に深みがなく、感情移入できない。家での全裸も中国カンフーも、90年代の台湾だからウケたのに、そのまま現代日本でやられてもなあ(山田裕貴ファン向けなのか)。

とにかく台湾版に合わせ過ぎて、時代や季節などの設定がめちゃくちゃ、日本とは違う大学受験の流れ(9月?)で台湾流をそのまま採用していてその後に卒業旅行だったり、ヒロインが上京するのに二人とも半袖・半ズボンだし、クライマックスの見せ場のためだけに入れた唐突な台湾ロケは違和感しか残らない。

特に真愛が地元に久々に帰ってからのデートシーン、急に台湾デートになっていて何の説明もない、おそらく台湾でのプロモやランタンのシーンを入れたくて無理やりねじ込んだのだろうが・・ここは想いを伝えようとしてうまくいかない重要なところなのに・・せめて日本風のイベントにするか台湾旅行する設定にしないと(でも付き合う前に海外旅行も無いか)。

やはり卒業してから後のくだりが微妙過ぎて、数年たってもほとんど外見も変わってなくて時の流れがつかみにくい(結婚式は何歳なのか?)、いっそのこと高校の間だけに絞って後は後日談みたいにしても良かったのでは。最終的に彼女が外科の医者と結婚したところは現実的で良かったが、その他みんな文筆家やデザイナー、IT社長など全員大成しているのは明らかに出来過ぎでは(パラレルワールドから集まったのか?)。

最後のシーンで(ずっと青ペンでツンツンされていた)シャツの背中の青いペンの染みが出てきたのはグッときたけど。

 

主演二人以外のキャラも個性的に見せて、ありきたりだし、あまり効いてこないし、ほとんど流されている。不自然なクセとか突然のゲイカミングアウトとか、しょっちゅう出てくる鼻血と勃起と猫なんて、意味ありそうで全く最後まで機能してこないし。。ゲイの子の葛藤なんてほとんど描かれずラストはあっさりインド人の彼氏作ってIT社長になったとか。。

あの時こうすれば・・の分岐点は分かるが、「パラレルワールド」の言葉を出したわりに活かされず、ラストでハッピーバージョンを見せていたが、パラレルワールドと呼ぶものでもないし、描き方も中途半端な回想で、弱いキスシーンもファンサービス?なのかラストに響いてこない残念さ。

あとは、「芸術家と犯罪者が共存している」というセリフが出てきて意味不明(サイコパスと言いたいのか)、そんなアーティスト気質も感じられず、犯罪者=暴力=格闘技をやってるからだとしたら勘違いも甚だしい。

格闘技と暴力の違いが本当に分かっていないで、格闘技は野蛮で幼稚な人間がするものとしてあの時ドン引きしたのなら(それだけが原因ではないと信じたいが)、そもそも合わない女性だったのでは・・いや、その考え方はこっちが引くわ。「格闘技は暴力とは違う、相手に怒りや憎しみはないから、肉体と肉体の対話でしか得られない答えを探している」と格闘技の本質を明確に答えた彼のどこが幼稚だと言うのか!

 

喧嘩したり、理解しあえなかったり、何度もすれ違ったりしても、価値観が全く違う二人だからこそ惹かれ合い、けれど付き合うにはお互いに勇気が足りなかった。好きなのに素直になれない、好きだから相手を理解したいのに理解できない、失望されたくないから自分から一歩踏み出せなかった。相手の丸ごと受け入れられるほど大人でもなく、相手にすべてをさらけ出せるほど大人でもなく、付き合って変わってしまうことの恐れなど、あの時こうしてたら、ああしてたらとかの小さな後悔は誰にでもあるはず。

ラストはハッピーエンドではないが、この世界の二人にとってはあるべき結果なのだろう。何度あの夜を繰り返しても、あの時の彼の精一杯は変わらず、「幼稚」と言われるのがあの頃なのだ(台湾版はもっと男子の幼稚さが描かれているので言われても違和感ないが、日本版はそこまで幼稚ではなかったので何とかなった感は強い)。

それでも、最後まで幼稚な男子のまま新郎にキスをしたのは男ならキュンとくるはず。最後は自分の大切な人に幸せになってほしい、そう思える人と出会えることが奇跡であり、あの頃の想い出と共にこれからの大きな糧になるはず。どちらかと言うと男の目線の方が共感できる映画なのかもしれない(齋藤飛鳥が目当ても多いし)、なので「秒速五センチメートル」とか好きな人にはハマるのかな。

 

オリジナル版のヒロイン、ミシェル・チェンも最高に可愛かったが、今作も可愛さでは負けていない。乃木坂46で屈指の人気メンバー齋藤飛鳥の超絶小さい顔とポニーテールの可愛さをひたすら堪能できるだけで、この映画の価値は十分にあるはず。まあ、初主演で演技は決して上手いとは言えないが、役柄とその存在感はさすがで、「響」の平手友理奈に近いものがあった。ツンデレがすぎる、なぞの猫耳カットは完全にファンサービスなのか突っ込みたくもなる。

山田裕貴の思春期全開な裸のままの演技はさすがの役者だったが、他のキャストは努力は見られたが、どれも感情の変化に乏しい。たぶんセリフの酷さと相まって、その背景や意図も理解不能なまま演出をつけてもらえなかった感じがして、文章で起こしたのを単に読み上げているようだった。

 

エンドロールでスーパーバイザー 秋元康、作詞 秋元康 と出てきた・・なるほどね・・の映画でした。台湾版も機会があれば是非!