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【映画館紹介】:「アップリンク 吉祥寺」

◆「バウスシアター」の後継館として待望のお洒落なミニシアター、5つの個性的な空間で座席数は少ないながら極上の音響と座り心地を体験・・

 

昔に住んでいたけど、最近はほとんど行かなくなった吉祥寺に、2018年12月14日「アップリンク吉祥寺」がオープン。良く通っていた想い出のPARCOブックセンターの跡地に出来たミニシアター。シネコンとは違う雰囲気を味わえる「ミニシアター・コンプレックス」ということで、5つのスクリーンに計300の座席という小さい映画館。

上映するのは音楽やアートに関係する作品や新しく個性的で興味深い作品が多いが、渋谷より比較的メジャーやファミリー向けの作品も扱い、時間を分けて1日に20本ぐらいを上映している。今回はスクリーン1で「メランコリック」を鑑賞。

 

【場所】

吉祥寺西口から2分程度、駅近で分かりやすい「パルコ」の地下2階。

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 【入口・ロビー】

エレベータで地下2階に降りて一歩足を踏み入れると、ターコイズ・ブルーの壁に真っ赤な受付カウンター、ミラーボールとクラブのような映画館とは思えないスタイリッシュなお洒落空間が広がっている(受付のミラーボールは渋谷のクラブ「WOMB」からの寄贈とのこと)。

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エスカレーターで降りた場合、カウンターの反対側に出るのでちょっと迷うが、左の青いトンネルを抜ければカウンターに出る。

ちなみにエスカレーターで降りると壁面に巨大な、アップリンクで製作したアレハンドロ・ホドロフスキー監督の「エンドレス・ポエトリー」の一場面がお出迎えしてくれる。

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青いトンネルは青い洞窟のようで、デレク・ジャーマンの全編「青」画面映画「BLUE」を配給したアップリンクの原点・歴史を感じさせる。

全体的に照明がかなり抑えられていて映画によく出てくる薄暗い路地を連想させる。

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【チケット・券売機】

エレベーターで降りたら正面にカウンター、左手にチケット発券機がありWeb予約したチケットを発券するが、基本的に当日券も自分で発券機で席を選んで買う感じ。

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売店・カフェ】

お洒落なカウンターでターンテーブルなど(DJも入るのかな)も置かれていた。王道のポップコーンやドリンクもあるが、アルコール類も充実していて、おススメは「クラフトコーラ(伊良コーラ) 」という100年前のレシピを元にした体に優しいコーラと、シャルキュトリーコダマのホットドッグとのこと。

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そしてアップリンクといえばのマニアックな物販コーナーもあり、映画のパンフレット、作品に関連した商品、本、DVDやコラボしたアクセサリーなど様々なグッズが置いてある。オリジナルバッグに、ホドロフスキーデレク・ジャーマングザヴィエ・ドランなど関連深い監督たちのものも多い。

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【ソファ・休憩所】

エスカレーターの横は20メートル近い待合通路となっていて、長いソファーに上映中の映画のポスターやチラシがキレイに並べられていて、ゆっくりと上映待ちが出来るようになっている。

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ギャラリースペースも設けられ様々な企画で期間展示をしている。映画にまつわる興味深いアート作品に出会うきっかけになるかも。

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 【シアター】(スクリーン1)※他のスクリーンは見たら追加

5スクリーンがそれぞれ29、52、58、63、98席という異なる座席数で、一つ一つのスクリーンがコンパクト(基本はW4.8m×H2.0m)で、狭いながらもゆったりとした空間で落ち着いて鑑賞できる。アップリンク渋谷の椅子や空間は、どちらかというと友達の家で映画を観ている感覚だが、こちらは徹底的に空間づくりに拘っていて、天井が低く限られたスペースを有効に活用するため、頭が被らないよう椅子をズラして配置したり座高を変えて調整したり工夫している。

各スクリーンのデザインを「ポップ」「レインボー」「レッド」「ウッド」「ストライプ」と5つのコンセプトでそれぞれ椅子、壁、照明デザインを分けて空間を演出していて、どれも最高、できれば全部制覇したい。

 

今回見たスクリーン1は「POP」がコンセプトで63席、座席はオレンジ、ブラック、ブルーの椅子がランダムに配置され、壁紙はイーリー・キシモトの独特なパターン。

座席シートはフランスの映画館椅子メーカー・キネット社の特注で、ゆったり包み込んで沈み込むような感じで2時間まったくお尻が痛くならなかった、背もたれも高めで後頭部もしっかりカバーしていて小さい席番号がかわいい。

見やすい席は、小さい箱なので、どこもそんなに変わらず、前の席の人の頭も被らない。スクリーンが小さいので、前方だと若干見上げる形で、一番後ろまでいくとスクリーンが小さく感じ天井が目に入りがち。個人的には「D4」あたりが真ん中で見やすいと思うのでおススメ。

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音響にもこだわり、国内屈指の音響メーカー「田口音響研究所」の平面スピーカーを採用し、ハイレゾ音源を引き出した小さい箱だからこそ楽しめる立体的な音響をコントロールしているとのこと。確かに実際に聞いてみて、全体にクリアで美しく広がるような心地よさと、細かい演出の音まではっきりと聞こえてきた、今度はアクションや音楽などの迫力系の音響作品を体験したみたい。

スクリーンは太鼓張りで角を丸くして、スクリーン生地にはニット織を使用した「サウンドマット」を採用しているとのこと。

通常は背後のスピーカーの音を出すためスクリーンに穴が空いているが(データ的には6%も穴が空いている)、このニット織だと音はちゃんと織物のすき間から出てくるらしい、なるほど勉強になるなあ。

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吉祥寺の映画館といえば、かつては吉祥寺サンロード商店街の奥にあった映画館「バウスシアター」が象徴的だった(昔よく行ってたが2014年に閉館)。それからは比較的メジャー系の映画館ばかりだったので、今回待望のミニシアターとして、吉祥寺の新たな多種多様なカルチャーの発信基地として期待していきたい。