◆2019年もたくさんの映画を観てきました、映画館での新作はもちろん旧作・B級含めレンタルやネット配信(AmazonPrimeやNetflix含む)、テレビ放映など合わせてざっくり620本ほど。
そのうち2019年1月~12月公開の作品150本ぐらいの中から、洋画・邦画に分けて独断と偏見で【ベスト20】を選んだので発表していきます(順位はその時の気分で変わるし、残念ながら見逃した作品もあるので見たら更新するかも?)。
ちなみに昨年2018年の邦画ベストはこんな感じでした。2位の「寝ても覚めても」は映画としては素晴らしいけど、違った意味で再注目されているのが何とも・・さて、今年はいかに?
【第20位】「ウィーアーリトルゾンビーズ」
死んだ両親の火葬場で出会った孤独な中学生4人たちが、RPG形式クエストや音楽を通じて生を取り戻していく青春ブラックコメディ、家庭の抱える闇や大人の汚さと欺瞞を浮き出させながら、死・愛・青春などをポップに爽快に描いていくバランスが見事。
CM出身監督らしく鮮やかな色彩とセリフでのメタ表現、攻めたカメラワークや素早いカット演出、編集すべてが独特のアート的センスで新しくエモく、思春期の独特の感性を捉える表現力は素晴らしい。中毒性の強いテーマ曲や紅一点の中島セナのクールな存在感も頭から離れなかった。
【第19位】「火口のふたり」
男女二人ひたすら食べる・セックスする・寝るの繰り返しでココロとカラダは距離感と相性が大事、荒井監督らしくポルノ一歩手前のアート色の強い演出でリアルで生々しいドキュメントのように「性」と「生」を描く。
世界の終わりには一番大事な人と身体の言い分に身をゆだね本能のまま素直に生きること、おっさん妄想のエロ世界ながら終末的な死の匂いが漂う中、震災映画としても鋭い切り口で無力感と生の希望を見せてくれる。火口から落ちるのか噴き出すのか?柄本佑と瀧内公美の全編二人だけのハダカの芝居が素晴らしかった。
【第18位】「天気の子」
天気という誰にとっても身近なテーマを扱い、自らの生き方を選択する少年と少女の姿を描いた進化した“新海ワールド”、圧倒的にリアルで美しい映像と再びタッグを組んだRADWIMPSが奏でるシンクロした音楽はさすがの完成度。
あえて「賛否を生む物語を選択した」と言うように、ラストも含め明かされない伏線と謎の深い考察も可能な演出は、「君の名は」へのアンサーとして自身の強い作家性である“新たなセカイ系”を再構築していた。相変わらずご都合主義の展開で中二病・童貞臭さ全開だがメッセージ的には前作より好みだった。
【第17位】「ひとよ」
今年も多作の白石監督だがさすがのクオリティ、原作が舞台なだけに緻密な脚本とシームレスな回想シーンの挿入が見事で、何よりも全員主役級4人のキャスティングとそれぞれの確かな演技が素晴らしい。
白石監督らしく誰もが目を背けたくなるもの、暴力や悪意、人間のずるさや弱さ、家族の面倒臭さを容赦なく見せられ感情を揺さぶられる。思ったより重たさは控えめで、時折ユーモアを交えながらセリフひとつひとつが心に響いてきて、本当は誰よりも家族を想っているのに素直な気持ちを出せないもどかしさが痛いほど伝わってきた。
【第16位】「HELLO WORLD ハロー・ワールド」
世界がひっくり返る新機軸のハイスピード電脳系SF青春ラブストーリー。「天気の子」に続きセカイ系の新しい展開パターンとして3DCG含めいろいろとチャレンジしていて見応えがあって面白かった。
前半に恋愛や世界観を説明し後半は怒涛の展開と、90分によくここまで詰め込んだなあと言うくらい速いテンポで進んでいき、思ったよりSF色が強いので慣れていない人は途中で置いてかれてラストもポカンとなるかも。純愛物語としても成長物語としてもラストでのタイトル回収まで相当深く考察しがいのある良く出来た作品だった。
【第15位】「長いお別れ」
認知症がテーマだと悲惨で暗い内容になりがちだが、今作は終始ユーモアや家族の愛情や温もりを交えながら“日常の風景”として描いており、妻・2人の娘・孫の3世代の視点から様々な想いがあふれてくる作品。
中野監督らしく冒頭からさりげなくメタファーや伏線が配置されていて、細かい小道具の使い方も上手く、見ていくにつれ丁寧な回収でじわじわと感動が増していき、徐々に記憶を失っていく父と向き合ううちに自分自身を見つめ直していく過程も面白い。すべてを忘れてしまっても最後に残る家族の記憶と絆にジーンときた。
【第14位】「町田くんの世界」
人気少女漫画を演技経験ゼロの無名の新人2人を主役に主役級のベテラン演技派勢を脇役として起用した石井監督らしい挑戦的な映画。原作より思いっきりファンタジー要素が強く過剰な演出やラストシーンを含め賛否両論あると思うが、主演2人の瑞々しさにより青春さも増して、デフォルメされた登場人物たちの葛藤や衝動のぶつかり合いが際立つ。
善意の押し売りとも言える町田くんが、自分の価値観を揺さぶられても妥協せずカッコ悪いまま答えを探す姿には、当たり前だけど忘れていた「優しさの連鎖」を思い出させてくれた。
【第13位】「さよならくちびる」
女性ギター・デュオ「ハルレオ」が付き人シマを含めた三角関係をこじらせながら、解散に向けて全国ツアーを巡っていく、秦基博とあいみょんが今作のために書き下ろした歌も素晴らしい青春音楽ロードムービー。
ストーリーは淡々と進み余白も多く描かれない部分も多いが、ちゃんと実際に二人で演奏し歌っている曲の微妙な変化や表情で語っていて、相手を思うからこその素直になれない恋愛映画としても素晴らしい。アーティストとして生きることは自分の音楽の主人公として生き続けることに音楽の本質を見たような気がした。
【第12位】「凪待ち」
白石監督では今作の方が好み、香取慎吾が今までのイメージを覆して演じるギャンブル依存症の見事なクズ男が、喪失感にのたうち回りながら人生を変えようともがく様を描いた作品。
ミステリーと言うより人が変わることの難しさ・どうしようもない弱さを描くやるせない人間ドラマとして、ひたすら息苦しく重くヘビーな展開が続きイライラするほど落ちていく。それでも最終的に救ってくれるのは人の情け・人とのつながりであり、主人公のクズ男・被災地・香取慎吾本人の3つの再生・再スタートを重ねることができグッときた。
【第11位】「殺さない彼と死なない彼女」
原作の人気4コマ漫画が持つ独特のリズム・空気感を完璧に映画として再現していて、ただのメンヘラ映画でもお涙頂戴映画でもなく、笑って泣いて純粋な気持ちになって生きる意味を深く考えさせられるキラキラ映画の皮を被った哲学的メッセージ映画だった。
3つの群像劇をリンクさせる構成や後半の展開と細やかな伏線回収の素晴らしさ、違和感なく実写に落とし込んだ配役とそれに応えた演技も見事。見終えた後にタイトルの意味に改めて涙し、自分の存在を認めてくれる人やいつもの日常があることの奇跡を再認識させてくれた。
【第10位】「海獣の子供」
傑作漫画である原作の難解さそのままに、言語化不可能な壮大かつ抽象的・幻想的な世界を圧倒的なアニメーション映像革命と立体音響を体験できるアニメ版「2001年宇宙の旅」。
命はどこからきてどこへ向かうのか?海と宇宙を組み合わせながら、その中で出会いと別れと少女の成長や家族の再生、生命の仕組みまでを一つの出来事で結びつけている脚本・構成力は見事。理解するより感じる作品なので一般受けはしないが、ネットやSNSの言語化世界の今こそ「言葉にならない」豊かな世界に触れることの大切さを観て感じて欲しい。
【第9位】「ホットギミック ガールミーツボーイ」
典型的なキャラとクサい喋り方や演劇的なセリフなど完全に原作の少女漫画世界を再現していてツッコミどころ満載だが、青春の汚さや脆くて壊れやすい思春期の心情をリアルに描いている。
何よりも独特な過剰演出での色彩感覚やカメラワーク、細かいカット割りやスピード感あふれる編集、常に背景で鳴り響く音楽など山戸監督ワールド全開で、映画界の伝統や文法・セオリーを軽々と飛び越えてくるスゴイ映像体験に終始圧倒されまくった。「今を生きる女の子を応援する」大林宣彦監督を引き継ぐ青春映画の新たな潮流を感じた。
【第8位】「新聞記者」
ノンフィクションの「i新聞記者ドキュメント」とセットで観るべきなので同順位。今の日本でこれだけ現政権の不正ネタをぶっこんだ映画を作って公開した覚悟と情熱は評価すべきで、何かのバイアスはあっても今年一番の意欲作で邦画に新しい風穴を開けた作品。
新聞メディアや新聞記者の存在価値も問いかけながら社会派サスペンスとしてもエンタメとしても面白く、「この国の民主主義は形だけでいいんだ」このセリフに官僚や政府の傲慢さ、国民側の意識の薄さの全てが集約されていてメディア自身への警告でもあり。「誰よりも自分を信じ疑え」何が真実なのか自分で考えることの大切さを感じた。
【第8位】「i新聞記者ドキュメント」
空気を読まない森監督が空気を読まない望月記者を撮っている面白さ、何にも臆せず突き進んでいく記者を通して浮かび上がる日本の政治とジャーナリズムが抱える黒い闇、社会の同調圧力や忖度の空気感、無関心で人任せな私たち。
普段見れない記者クラブや菅官房長官会見の裏側、籠池夫妻など強烈なキャラ、社内外で孤軍奮闘の望月記者のプロフェッショナルさなど見どころも多いが、新聞記者の使命どおりの仕事をすれば浮きまくり簡単に圧力がかかってしまう異常さとラストの視点の鋭さに(i)一人称で判断する大切さを感じた。
【第7位】「愛がなんだ」
人が人を想う時の心のすれ違い、片思いの相手に過剰なほどのめり込む主人公の姿を通して「愛とは何か」を問いかける、今泉監督らしい淡々とした会話劇で登場人物たちの心の距離感の描き方がリアルな今年を代表する地獄の純愛映画。
全員コミュニケーションに難ありダメダメなので感情移入は出来ても共感はできずきっと誰かにイライラするはず、3組のいびつな片思いを心地よく笑える展開で進めながら、最終的に「依存と搾取」の関係を深いところに着地させる恋愛からアイデンティティまで痛々しくて美しい人間賛歌だった。
【第6位】「蜜蜂と遠雷」
映像化困難と言われていた大長編のベストセラー小説を人物関係の描写を絞って音楽・演奏シーンに重点を置いて、音楽を通じた天才たちの対話や演奏技術や表現を丁寧に分かりやすく、全てを言葉で説明せず”音楽で物語を魅せる”圧巻の音楽青春映画。
4人の役者とそれぞれのキャラクター性に合わせたプロのピアニストの演奏も見事で、演奏に臨む過程や奏でる音楽から各人の背景や心情が伝わってくるのも素晴らしい。天才なりの苦悩やピアノを弾く純粋な喜びが本物のコンサート会場で一緒に体感しているような高揚感を味わえた。
【第5位】「プロメア」
あの斬新的な「スパイダーバース」に対抗できる圧倒的作画を飛び越えるスピード感と熱量、刺激的なキャラと色彩、ストーリーは粗いが熱すぎるセリフや音楽の合体に血肉沸き立ち完全に燃え尽きる「観るアドレナリン」。
とにかく最初から最後までクライマックスの連続の畳み掛け、異彩を放つ色味の火の三角と水の四角という抽象性やロボット変形の戦い、多彩なカメラワーク、「滅殺開墾ビーム」必殺技の解説と叫び、腐女子萌えのキャラなど作り手の情熱が観客を巻き込んで盛り上がり、興行面でもヒットしたのも最高だった。
【第4位】「デイアンドナイト」
藤井監督では「新聞記者」より今作の方が好み、ネットなどで勧善懲悪の絶対正義を振りかざす風潮に対し、現実での「善と悪」の狭間で揺れ動く人間の姿を「光と闇」のコントラストと二律背反で突き付ける重厚な人間ドラマ。
自分の大切な人、家族の為にその境界を越える心の強さや弱さを見事に表現した作品。緻密な画面構成とカット割り、昼と夜・光と影の色彩感の切り替えが次第に重なり曖昧になって、常識的には悪くても感情的には正しいグレーなこと・人それぞれ違う善悪の定義など見終わった後に深く考えさせられた。
【第3位】「よこがお」
冒頭から常に緊張感と不穏な空気が張り詰める中、人物の弱さや嫌らしさや心理の揺らぎを繊細にじっくり炙り出すように描き、ホラー映画より背筋が凍る見事な不条理サスペンス。
人の表と裏の二面性を描きながら二つの時間軸がオーバーラップする緻密な脚本、色の使い分けや携帯やカメラ音の使い方など視覚・聴覚に訴えかける不快感あふれる尖った演出は世界レベル。何よりもミューズである筒井真理子の圧倒的な七変化ぶりは表情や雰囲気を見事に演じ分けていて、慟哭のラスト含め様々なメタファーも深く考察したくなった。
【第2位】「岬の兄妹」
「自閉症の妹に売春をさせて生活費を稼ぐ障がい者の兄」と言う普通は見たがらない社会のタブーを、ユーモラスかつエゲつなくシビアに描き切った低予算自主製作ながら今年一番ヤバイ衝撃の問題作。
あのポン・ジュノ監督の助監督を務めただけに、圧倒的な貧困と社会的弱者の現実を生々しく描きながら人間の本質を炙り出し、痛烈なメッセージとブラックユーモアで突き付ける。自身の価値観や倫理観を試されながら、兄弟の生きていくことへの執念は動物的で貪欲で醜くて汚いけど、涙が出るほど美しくて強くて素晴らしかった。
【第1位】「宮本から君へ」
元から大好きな新井英樹の傑作漫画なのもあるが、今年一番熱く興奮と感動で涙した作品。原作の熱量そのままに映画ならではの役者と演出で、最初からエンドロールまで喜怒哀楽のジェットコースター、理屈や演出を超え叫ぶ怒る泣く笑う耐える暴れる色んな感情が全開マックスで迫ってきて、その衝撃を受け止めながら主人公二人と一体化していく。
圧倒的かつ理不尽な暴力、特に女性が見ていて辛い苦しいシーンも多いけど、それを上回る魂の駆け引きに愛の力と生き方の肯定力、池松壮亮と蒼井優の化け物級のむき出し演技に胸がいっぱいになり、見終わった後のカタルシスと勇気をもらえること間違いなし。人生どこかで必ず戦わなければならない時に向けて自分なりの覚悟が出来た。
【殿堂(特別枠)】「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」
年末ギリギリの公開で、2016年のベスト1でもあり2010年代を締めくくるベストでもあるので特別枠の殿堂扱いとした。
遊廓の女性リンの描写を中心に原作から新たに追加した40分により、恋愛映画の要素も加わって主人公すず個人の内面が深く掘り下げられ、”さらにいくつもの“片隅で生きる人々の物語が紡がれる。
すずの心情や行動の印象がガラリと変わり言葉の一つ一つがより重く響いて、今まであったシーンの“意味”が全く異なって見える「全く別の新しい映画」としてまた違った感動をもらった。前作同様に細かいリサーチと気が遠くなるような手書きの作画により3年かけて作り上げたスタッフの情熱も伝わってくる、前作と共に永久保存すべき国宝級の大傑作。
★【総括】
正直、11位以内(点数4.5以上)はどれも傑作でベストと言っていいレベルだが、スタッフ・役者含め圧倒的なパワーと情熱に打ちのめされた「宮本から君へ」を一位とした。
今年もアニメは傑作揃いで過去最高の4本がベスト入り、リアルな描写「天気の子」、3DCGのSF「ハロー・ワールド」、濃密度な映像空間「海獣の子供」、斬新な抽象表現「プロメア」と様々なアニメーション表現の可能性にワクワクさせられた(「空の青さを知る人よ」が観れなかったので観ていたらランクインしていたかも?)。
合わせて傑作漫画の映画化の成功例も多く「宮本から君へ」はじめ「ホットギミック」「海獣の子供」「殺さない彼」「町田くん」など原作からオリジナリティを加えた脚色が見事だった。
音楽をテーマにした青春映画が多かったのも印象的で「蜜蜂と遠雷」「さよならくちびる」「小さな恋のうた」、キラキラ映画へのカウンターとして恋愛映画の新しい潮流の「愛がなんだ」「ホットギミック」「殺さない彼」も良かった。
昨年の「カメ止め」に続き、低予算の自主製作映画も才能あふれる作品が多く「岬の兄妹」「リトルゾンビーズ」「メランコリック」「イエス様が嫌い」、作家性あふれる骨太な演出の「よこがお」「デイアンドナイト」「新聞記者」「凪待ち」「ひとよ」「半世界」も見応えがあった。
「新聞記者」や「i―新聞記者ドキュメント―」が一般公開されて話題を呼び、こういった社会派映画が注目されて今後も増えていくのは望ましいが、一方で「宮本から君へ」が文化庁から製作助成金を突然取り消されたのは由々しき事態だった。
表向きは出演したピエール瀧の事件が理由だが、前例がなく慌てて後出しの対応を見ても明らかに「新聞記者」をヒットさせた”狙い撃ち”での嫌がらせであり、権力側が曖昧な「公益性」という基準で恣意的に判断することは「検閲」でしかない。あいちトリエンナーレや映画「主戦場」の上映中止の忖度など表現の自由を委縮させることはあってはならない、映画は自由であって欲しいと願う。。
残念ながらベスト20から漏れた作品にも素晴らしいものが多かったので、以下に【次点】の5作品をあげておきます。
【次点】「メランコリック」
昨年の「カメ止め」に続く低予算の自主製作映画の最高峰。人を殺す場所」として貸し出している銭湯で繰り広げられる予測不能の展開は、サスペンスとしても青春ブラックコメディとしても非常に面白く、日常の中の非日常を当たり前のように絶妙なバランスで描いている。
脚本も撮り方もよく練られていて人物の心の機微に心地よい共感を重ねながら、全てが絶妙にズレた不器用に生きるしかない人たちの葛藤を描く人間ドラマとしても秀逸だった。
【次点】「僕はイエス様が嫌い」
初めて信仰に触れる子供の目線で宗教観を押しつけがましくなく日常の些細な会話や景色の中に盛り込んで、あらゆる作家が挑んできた「神の沈黙」という困難なテーマを22歳の新人監督が自主映画として描き切ったのは奇跡的。
神様の存在を身近に思わせながら過酷な現実を突きつける容赦のなさに胸を締め付けられたが、この世の不条理を少しずつ理解しながら成長していく子供の希望や未来を信じさせてくれて、子役の自然な演技も見事だった。
【次点】「小さな恋のうた」
MONGOL800の名曲をもとに高校生バンドの"出会い"と"別れ"、普遍的な日常生活の中にある沖縄の米軍基地問題をフラットに描きながら、高校生たちによる音楽への希望を唄った社会派青春音楽映画。
「あなたに届け」と役者自ら演奏する真っ直ぐな歌は、基地のフェンス(国境)や世代を超えて、複雑な葛藤が折り重なる沖縄の未来に対する希望とオーバーラップしてきて、改めて音楽から伝わる想い、音楽が人をつなぐ、音楽の力を実感させられた。
【次点】「半世界」
人生半ばに差し掛かった時、残りの人生をどう生きるか、諦めたり悟るには早すぎて焦ったり冒険するには遅すぎる39歳の中年3人組。田舎あるあるの狭く固定化したリアルな設定で、その葛藤と家族や友人との絆、新たな希望を豪華キャストの絶妙なアンサンブルで淡々と描いている。
自分が経験してきた幸せや苦労の範囲だけが自分の世界だと思うが、他人から見ればそれは世界の全てではない、自分の半世界を広げていくことの大切さを教えられた。
【次点】「洗骨」
洗骨という独特の風習をQ太郎(観客の目線)を通し、随所に自然な笑いを盛り込みながらバラバラだった家族が再生していく愛に溢れた物語。この世とあの世の境目は身近にあって行き来は簡単、洗骨とは自分の過去も含めいろいろと洗い流しながら再び歩き出すこと。
死んでいくもの、新しく生まれてくるもの、流れていく時間、素晴らしい沖縄の風景と共に壮大なテーマに挑戦した照屋年之監督(ガレッジセールのゴリ)の才能を感じさせられた。
※【2019年 邦画ベスト 一覧】
① 宮本から君へ 5.0
② 岬の兄妹 4.8
③ よこがお 4.7
④ デイアンドナイト 4.7
⑤ プロメア 4.7
⑥ 蜜蜂と遠雷 4.6
⑦ 愛がなんだ 4.6
⑧ i新聞記者ドキュメント 4.6
⑧ 新聞記者 4.5
⑨ ホットギミック ガールミーツボーイ 4.6
⑩ 海獣の子供 4.6
⑪ 殺さない彼と死なない彼女 4.5
⑫ さよならくちびる 4.4
⑬ 凪待ち 4.4
⑭ 長いお別れ 4.4
⑮ 町田くんの世界 4.4
⑯ HELLO WORLD 4.4
⑰ ひとよ 4.3
⑱ 天気の子 4.3
⑲ 火口のふたり 4.2
⑳ ウィー・アー・リトルゾンビーズ 4.2
(次点) 4.1以上
〇 メランコリック 4.2
〇 僕はイエス様が嫌い 4.2
〇 小さな恋のうた 4.2
〇 半世界 4.2
〇 洗骨 4.2
・ 嵐電 4.2
・ 盆歌 4.2
・ ワイルドツアー 4.2
・ チワワちゃん 4.1
・ 見えない目撃者 4.1
・ 旅のおわり世界のはじまり 4.1
【殿堂(特別枠)】
◎この世界の(さらにいくつもの)片隅に